B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

チームと地元に対する愛が
育む“継続するチカラ”

 
 
ゴールキーパーは、求められるスキルも練習メニューも、他のメンバーとは大きく異なるポジジョンだ。チームの失点は全ての選手に責任があるとはいえ、最後の砦を守る役割であるがゆえに、批判の矢面に立たされてしまうこともある。こうしたことに、歯がゆさを感じることもあるのではないだろうか。
 
 

キーパーとして大切なこと

 
20130301sp_45ex02.jpg
 私自身、どちらかというと短気な性格なので、若い頃にはチームメイトが決定的なチャンスに得点できなかったり、味方のミスで失点してしまったりした時などは、イライラすることがありました。また、その気持ちを抑えることができずに、思い切り態度や表情に出したこともあります。時には地面を叩いて怒りを露わにすることもありました。
 しかし、感情的になって苛立ちをそのままにしていると、プレーに必要な冷静さをなくしてしまう。そんな時に相手から攻められたら、判断を誤って失点につながるプレーをしてしまうかもしれません。感情的になることは間違いなく、プレーに悪影響を及ぼすのです。だから、とにかく味方のミスを気にしないよう、自分がミスを犯してしまった時も冷静でいるように自分に言い聞かせていました。 
 そのように、試合経験を数多く積みながら、自分のメンタル的な弱点を克服しようと努めてきた結果、徐々に自分をコントロールできるようになったのです。自分が冷静でさえいれば、ゴール前から見渡す味方選手がそれぞれどのようなメンタルでプレーしているのか、一目でわかります。たとえば目の前の味方ディフェンダーがイライラして熱くなっている時には、「落ち着け!」 と声をかけたり、ミスをしてしまい堂々としたプレーができなくなっている若手選手がいたら 「俺が後ろでカバーするからミスを恐れず思い切って行け!」 と勇気付けたりできるようになりました。
 こうした一言はとても大事だと思います。選手が試合中のミスをずっと引きずっているのはチームにとってもマイナス。一声かけることで、試合中に気持ちを切り替えてもらえるのであれば、いくらだって励ましますよね。それがチームの勝利につながるんですから。
 ゴールキーパーは単にゴールを守るだけではなく、ピッチ全体を見渡して、後方からチームをコントロールすることも役割の一つなんです。もちろんチームには、小笠原満男選手というキャプテンがいます。でも、チームをまとめるのは彼だけの仕事ではありません。彼を中心に、私と同世代の経験豊富な選手たちがそれぞれの役割分担というか、キャラクターを生かしながら若手選手へ助言をしたり、チーム全体がうまくまとまっていくような意識付けをしたりしています。私は後輩に対しては厳しく指導をするタイプかもしれません。でも、私の他に優しく諭してくれる選手がいますから、バランスは良いと思います。誰がどんな役割を果たすかを話し合っていなくとも、それぞれが自分の立場とやるべきことを自覚しています。もちろん、私が言うことの全てが後輩のためになるとは限りません。それでも私なりに、相手にとってプラスになればとの思いで的確な言葉を選び、話をしているつもりです。そしていざ試合になれば、ピッチ上の誰よりも冷静に的確な判断をすること。それがゴールキーパーにとって最も重要なことだと思います。とにかく、平常心です。
 
 
 
曽ヶ端選手は圧倒的な試合出場数を誇りながら、通算防御率は毎年常に上位をマークしている。こうした鉄人ぶりを発揮するには、怪我をしないための日々のコンディション調整、つまり徹底した自己管理が重要だ。毎試合100%の力を発揮するためのメンタルコントロールも欠かせない。妥協を許さず、常に一流の仕事をするための準備を “継続する力”。そして、試合中にベストパフォーマンスを披露するための “集中力”。この二つの力はどのような背景から生まれるのか。
 
 

“継続力”と“集中力”が生まれる背景

 
20130301sp_45ex03.jpg
 シーズンがスタートする前のこの時期は、まずチームとして1つでも多くのタイトルを取ろうと目標を掲げます。そして個人としては全試合フル出場を果たすことを心に誓い、目標とします。一年を通して出場をし続けるとなれば、もっとも注意すべきなのは怪我の問題です。だから、当然ですけれど身体のケアは気にかけていますね。私は痛みに強いほうなので、これまでも多少の怪我であれば試合に出場してきました。でも、チームに迷惑をかけることはNGです。もちろん、私が出場できるかどうかを判断するのは監督やコーチですから、自分の状態を正確に把握しながら伝えていくことも大切です。
 全試合フル出場という目標を全うするため、日頃からあまり無理はしないようにしています。身体に多少の違和感を覚えたならば、早めに練習を切り上げますしね。私生活においてもそう。休みの日だからといって遊び歩いたりはせずに、家でゆっくり身体を休めるようにしています。もしかすると、私の妻や子供は不満かもしれません(笑)。でも、私がベストの状態で試合に臨むためのサポートをしてくれるので、助かっています。特に妻には、食事の面でも気を遣ってもらっていますからね。チームと自分の目標、それを達成するために、自分のコンディションをきちんと把握し、そのうえでやるべきことに取り組む。このチームで達成したいことがまだまだ沢山ありますから、全く苦にはなりませんよ。
 また、キーパーは集中力が求められるポジションです。試合展開によっては、相手チームがほとんど自陣に攻めてこないこともあります。しかし、ボールが近づいた時だけ集中すれば良いというものではありません。では、どのように集中力を維持するのかといえば、先ほど話した味方選手への声がけもその一つです。試合の流れをつかみ、状況に応じて適切な声がけをすることは、チームメイトのためだけでなく、自分の集中力を切らさないための行為にもなるわけです。
 また、試合前にする工夫もあります。たとえば私は、試合直前にいきなりボルテージを最大にするようなことはしません。テンションが上がりすぎてもよくないからです。スタジアムに足を踏み入れ、ウォーミングアップをし、ミーティングへと続く一連の時間の中で、徐々に気持ちを高めていきます。ゴールキーパーにはどこまでも冷静さが求められますので、試合に必要なメンタルをつくり出すため、特別なことはせずに淡々と行動し、自然とベストの状態に持っていくよう心がけているんです。
 
 
 
 

スペシャルインタビュー ランキング

バックナンバー

最新記事

話題の記事