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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

補聴器を通じ生活を支え
人生をより楽しいものに

 

“聞こえ”の改善が生きる力を取り戻す

 
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川上 鶴田社長は、どのような経緯で補聴器業界に関わるようになったんでしょうか? ぜひその歩みを教えてください。
 
鶴田 もともと私は珈琲専門店で働いていました。その傍ら、プライベートで手話を学んでいたんです。それで、聴覚障害者の方と交流ができ、補聴器に関心を持つようになったんですよ。その後、補聴器販売会社や補聴器メーカーに勤務して経験を積み、知識を得ました。そして、2018年に独立し、起業。弊社を設立するとともに、当店をオープンしたんです。
 
川上 もともと手話を勉強なさっていらしたんですね。それでは、その頃から交流のある聴覚障害者の方もいらっしゃるんですか?
 
鶴田 そうですね。遠方から頼って来てくださる方もいます。先ほど申し上げたように、補聴器は調整が大切ですから、手話ができる私は都合がよいわけですね。
 
川上 なるほど。手話もできて、補聴器にも精通していらっしゃるとなれば、これ以上頼りになる方はいませんね!
 
鶴田 そう言っていただけるとありがたいですね。補聴器は、耳がまったく聞こえない人にとっては不要なものです。しかし、だんだん聞こえづらくなってきている人、あるいは、病気などの理由によって聴力を失ったものの、その後の治療で少しずつ聴力が回復している人などには大きな助力となります。私がこれまで知り合った人の中には、突然聞こえなくなったことで自殺まで考えたという人もいました。そのような方々が補聴器で生きる力を取り戻す姿を見ていると、私としても嬉しいですよ。
 
川上 それは素晴らしいですね。私の父のような、高齢者のニーズも増えているんでしょうか?
 
鶴田 そうですね。ご高齢者のお客様の中でもお仕事や老人会の役員などをなさっている方ですと、例えば会議の声が聞こえないとか、お客様の会話が聞き取れないなど、補聴器の必要性を強く認識してご来店されます。しかし、何も活動をされていないご高齢者の場合ですと、それほどご本人様は困っていないことが多いんですよ。というのも、大声で話してもらえば聞こえるし、絶対に聞き漏らしてはいけない会話などは、日常生活においてはほとんどありませんからね。でも、毎日コミュニケーションを取らなければならないご家族は大変ですよね。
 
川上 ええ。何度も聞き返されると、さすがに疲れて話す気がなくなってくるし、大声で話すと気も立ってきます。私も会話が成り立たないことで家族内に不和が生まれそうになっていたので、一時は筆談で会話をしていたんですよ。
 
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鶴田 確かに筆談なら聞き漏らすことも、聞き間違えることもないですね。
 
川上 でも、毎回筆談するのもわずらわしいし、まったくストレスがないわけではないですからね。だから、父に補聴器の購入を勧めたんです。
 
鶴田 川上さんのお父様のように、最初から補聴器を「欲しい!」と考えてご来店される方よりも、ご家族に勧められてしぶしぶご来店される方のほうが多くいらっしゃいます。しかし、実際に装着してみれば、確実に聞きやすくなりますし、そして今より楽しい生活が送れるようになると思います。ですから私は、お客様には丁寧に補聴器装用の大切さをご説明しているんです。それに、ご高齢者の難聴は認知症の大きな危険因子なんです。
 
川上 えっ、そうなんですか! 初めて知りました!
 
鶴田 厚生労働省が公表している認知症施策推進総合戦略、通称「新オレンジプラン」には、難聴も認知症の原因の1つとなりうることが記されているんです。