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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

 
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インタビュアー 三浦淳寛(サッカー元日本代表)
三浦 金属加工を手がける日本スピン株式会社さん。濱中社長は3代目だそうですね。まず、歴史ある御社の歩みから教えていただけますか?
 
濱中 戦前に祖父が戦闘機のエンジン部品などの製造を手がけたのがルーツです。一度、会社をたたんだものの父が復興し、主に照明器具のシェードと呼ばれるかさの部分をつくっていました。その後、事業を拡大して現在はこちらの本社の他、千葉県と福岡県で計3つの工場を稼働しています。
 
三浦 戦闘機のエンジン部品を製造されていたなんて驚きです。ホームページを拝見したところ、現在はH-IIAロケットや航空機、タービンなどの燃焼器、精密医療機器などに利用される部品を加工しているそうですね。最先端のテクノロジーが必要な機械ばかりで、すごいですよ。僕はロケットの製造なんて、全て機械が行うものだと思っていました。
 
濱中 いえいえ、いずれも職人の技術が必要なんですよ。小型の物はロボット化できますが、ロケットの先端のような直径2m以上の大型になりますと、要求された精度に加工するには機械ではできないからなんです。
 
三浦 最近は様々な分野で自動化や機械化が進んでいます。それでも、人の手に頼らなければいけない分野も多く残されているんですね。具体的にはどのような加工方法を得意としているんですか?
 
濱中 “溶接”もできますが、弊社が最も得意としているのは、“しぼり”という加工技術です。しぼりとは、板状の材料と型を一緒に回転させながら、金属棒を型に押し当てて曲げていく加工方法です。腕利きの職人が長年かけて培ってきた感覚を駆使する、この職人技が我が社の生命線なんですよ。
 
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三浦 生命線と言い切るほど、卓越した技術を持つ職人さんがいるわけだ。格好いいなぁ! でも、技術の修得は難しそうですね。
 
濱中 一人前になるまでに、約10年はかかります。それほど繊細な技術です。弊社はその技術で、例えばフェアリングと呼ばれるロケットの機体の先端部を、試作段階から製作しています。フェアリングには人工衛星を搭載するので、それを守るためにもかなりの強度が必要です。しかもそれは、数ミリ単位の厚さの、まるで卵の殻のようなパーツなんですよ。