職人の仕事を独り占め
手間隙かけた鮨を賞味
◆鮨を美味しく味わうため
計算されたコースに心が躍る
メニューは、お造り三種・豆腐・焼物・酒肴・にぎり8種からなるおまかせのコース(7000円)のみ。「鮨店だからといって、生ものばかりでは飽きてしまい、鮨を美味しく食べられない方もいると思い、構成を考えました。料理にはすべてひと手間かけ、鮨で奇をてらわないぶん、他では冒険をすることもありますね」 という通り、コースは驚きと感動が満載です。
まずは、お造り三種で旬の味を堪能。たとえば秋から冬の時期は、甘味の増したシマエビや、脂ののったブリが舌を喜ばせてくれるでしょう。さらに、花弁のように美しく盛られたカワハギは、まろやかな特製の肝ポン酢で賞味。ひとしきり新鮮な魚介の旨みを楽しんだところで登場するのは定番の豆腐。こちらも出来合いのものでなく、鈴木氏の手作りであることは言うまでもありません。濃度10%以上の豆乳を使い、にがりだけで固めた豆腐は、大豆本来の甘味が濃厚。そのままでもデザートのようですが、好みでアンデスの岩塩を添えれば、また違った味わいを楽しめます。続く焼物は、メバチマグロの炙りが定番となっています。刺身で味わえる鮮度の切り身を、あえてサッと軽く炙ることで脂が溶け、とろけるような舌触りに。炙りに添えられるのは、丁寧に裏ごししたマスタードと醤油を合わせたタレ。和食のイメージとはミスマッチのようにも感じられるマスタードの風味や酸味が、脂の甘味と相性抜群! 口の中で、じっくりと余韻を楽しめる逸品です。
実は、鮨店を構える以前は日本料理店でも長年修業を積んだという鈴木氏。その技術と感性が遺憾なく発揮され、メインの鮨への期待感を煽るメニュー展開となっています。
◆一品ごとに仕事を施した
珠玉の握りにファン多数
酒肴を挟むと、いよいよメインの握りが登場です。季節や市場の状況によってラインアップは様々ですが、ネタ一つひとつを見極め、丁寧に手を加えてくれます。
定番の一つである本マグロの赤身は、ヅケで。しっかりとした味わいのある赤身ですが、ヅケにすることで、旨みがより濃厚に感じられ、深みのある一貫に仕上がっています。また、鮨職人の力量が問われるコハダも、丁寧に仕込みをしたことがわかる味わい。美しく編みこまれた細工は、視覚的にも楽しませてくれることでしょう。その他、飾り切りを施したイカや赤貝などにも、適量の煮切り醤油をひと塗り。握りとは少し趣向を変えたイクラは、軍艦ではなく丼のスタイルで。イクラもその日ぶんだけ仕込むので、保存用の醤油漬けとはまったく違います。塩分を控えたマイルドな味わいに、驚く人も多いはず。
その他、すべてのネタの味を引き立てる、やや黄味がかったシャリも特長。一般的に寿司酢には砂糖が使われていますが、驚くことに、使っているのは、塩と3年熟成の赤酢のみだとか。赤酢を使うことで、酸味もまろやかで柔らかく、コクのある独特のシャリが完成するのです。鮨に欠かせないワサビも、すりおろして10分以上経つと香りや辛味が変化してしまうので、直前に使うぶんだけおろすという徹底ぶり。
空間、料理、すべての隅々まで鈴木氏のこだわりに溢れた 「すし処 まさ」 は、唯一無二の鮨店として、今日も食ツウをうならせています。現在、予約は2015年までいっぱいという状況ですが、それでも一度訪れた人は、帰り際に次回の予約をしていくそうです。2年待ってでも、足を運ぶ価値のある鮨店。特別な日に、彩りを添えてくれる特別な一軒になることでしょう。
すし処 まさ 東京都港区新橋2-21-1新橋駅前ビル2号館B1 TEL 080-5442-9866 定休日:日曜・祝日 営業時間:18:00~、20:30~ |
(この情報は2012年11月現在のものです)