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スポーツ 上原浩治のTrust Pitch! vol.19 折り返し地点で自分を見つめ直す 上原浩治のTrust Pitch! ボストン・レッドソックス投手

スポーツ
 
 こんにちは、上原浩治です。
 夏まっさかりですね。夏バテをしてしまう人も出てくるかと思いますが、皆さんお仕事の調子はいかがですか? ぼくたちプロアスリートは、夏バテをしているヒマがありません。いつでも試合に臨めるようにしていないといつクビを切られるかわからない世界ですからね。ビジネスでも、うかうかしていると一気に評価が下がってしまうでしょうから、お互いにしっかりやっていきたいところですね。
 
 

シーズン前半を振り返って

 
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   各球団ともトレードが一段落して、さあこれから後半戦、というところです。その前に前半戦を振り返ると、折り返すまでに44試合に登板しました。これは去年と同じ数字。2試合に1回以上投げている計算になります。今のところ、個人的には悪くない状態を保てていると思います。でもチーム全体は波が激しかったなぁ。借金で折り返しているから「良かった」と言えるはずがないのですけどね。「かみ合わなかった」というのが一つの結論でしょう。ピッチャーが押さえても野手が打てない、野手が打てばピッチャーが打たれる。それで延長戦に入ったりすると、勝てば喜びもひとしおだけど、負けると疲れだって何倍にもなりますしね。

   もう一つは、打線の援護も、もう少し早い段階で点に結びつけば随分と展開が変わると思います。前半戦は6回以降に点を取ることが多かったし、追いつきそうで追いつけなかった試合も少なくなかった。

   でも、かみ合うかどうかというのは、人間がやっていることですから、簡単なことではないです。だからこそ、好不調の波に惑わされず、自分は何も変えずに、毎日ちゃんと準備しているかどうか。そういう基本的なことが重要になってくると思うんです。やるべきことをやるという、その繰り返しは変わらないです。
 
   昨年と違って今年はシーズンの最初からクローザー一本。中継ぎも非常に大事だけど、クローザーのプレッシャーは、また全然違います。この前も書いたけど、ぼくが投げるのはチームが勝っているか、接戦のシチュエーションが多いギリギリのところ。ましてや、昨年は結果を出せたので、今年も「いい調子でいて当たり前」と思われているし、バッターは「やってやろう」と戦意十分で挑んでくるしね。常に課題はあります。いつも問題解決と反省の日々ですよ。
 
 

オールスターはかなり疲れた?

 
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オールスターで履いたNIKEのスパイク
 そうそう、話は変わりますが、今年はオールスターも経験しました。実は最初の発表の時に選ばれてなかったのですが、出場する可能性が高いことは知っていました。2日前まで投げていた先発ピッチャーは投げない決まりがあるので、「その代りに入る可能性があるんだろうな」と予想していました。
 
 開幕戦では見られなかったジェット機の演出にも興奮したし、派手なホームランダービーなどはお客さんも盛り上がります。ただ、雨で遅れたこともあって、やっているほうとしては「早く終わってほしい」という気持ちもちょっとはありました(笑)。やはり試合となると真剣勝負だから、シーズンと変わらず、ガツガツいくんですよ、誰もが。試合当日は記者会見やパレードもあるので、実は選手は分刻みのスケジュールで動いてる。そりゃ疲れるっちゅうねん(笑)。でも、経験しないことには何も語れませんからね。本当にいい経験をさせてもらいました。
 
 

勝ちに飢えて負けに慣れるな!

 
 まあ、そんなオールスター裏話がありながらも、後半戦に向けて意識を切り替えていかないと。いいスタートを切ったのだけれど、今一歩、乗りきれていないところがある。ブルペンにも疲れのムードが漂い始めてるし、今年はチームそのものが研究されまくっているから難易度は高いけれども、負けに慣れるとどうしても、人って気持ち的に楽なほうへ流されてしまいますからね。それじゃ結果は絶対についてこないので、そうはしたくない。勝者のメンタリティを確実なものにしたい。
 
 会社もそうじゃないかな。サボっていたら、その時は楽かもしれないけど、「こいつはこんなもんか」という評価で終わってしまうし、最終的には全ての行動が、自分に返ってきます。辛いときでも頑張っていれば、ちゃんと見てくれる人は見てくれてますよ。勝ちに飢えて、負けに慣れるな!
 
 

やるべきことをやり、言うべきことを言う

 
 たとえばその日その日の、社内の空気ってあると思うんです。明るい時もあれば、沈んだ空気の時もある。なんとなく、気まずい雰囲気になってしまうから無言を貫くなんてことはしないほうがいいですよ。日本語が通じるのであればなおさら。それは年上相手でも年下相手でも同じこと。実績を残しているなら、やはり言うべきことは言ったほうがいい。言うためには実績を作り出さなきゃいけないから、それがひいては自分のため、会社全体のためになるからね。
 
 ぼくはコミュニケーションを大事にしていて、特に、初めて一緒に仕事をする人に対しては、最初に自分がどうしたいかを伝えます。ピッチャーという立場で話すと、「ぼくは落ちる球とまっすぐの2種類で勝負している。それをやっていきたい」「不利なカウントでも、スプリットは遠慮なく要求してくれ」とかね。それをわかってもらえてもキャッチャーのリードに納得できなければ、首を横に振ればいい。すると相手もわかってくれるんですよ。最初に自分の性格をお互いが伝えておけばいい。
 
 チームはもうひと踏ん張りというところですが、そんな中でも楽しみにしていることもあります。6月にニューヨークに遠征した時には、巨人時代の先輩でもある松井秀喜さんと食事をご一緒させていただきました。ピッチャーとバッターですから、何か相談したりすることはないですが、打者の心理を聞くことはあるかもしれない。そんな時も松井さんは、とても真摯に答えてくれます。ただ、試合で対峙するような張りつめた感じではないので、のんびりゆっくり野球談議を愉しめる。ぼくにとって信頼している先輩との時間は非常に大事だし、毎回すごく楽しみなんです。そんな切り替えをしつつ、後半戦に臨みたいと思っています。
 
 シーズンも残すところあと2ヶ月。ぼくは自分のやるべきことをやる。それだけです。でも皆さんは、せっかくの夏ですから、ビヤガーデンで乾杯しながら暑い夏を乗り切る! そんな時間を持ってもいいんじゃないですか? ではまた次回!

 執筆者プロフィール 

上原浩治 Koji Uehara

ボルチモア・オリオールズ投手

 経 歴 

大阪府出身(出生は鹿児島県)。東海大学付属仰星高校から大阪体育大学に進学し、大学3年時に日本代表に選出。1997年に出場したインターコンチネンタルカップ決勝では、当時国際大会151連勝中だったキューバから先発勝利をあげ、注目された。ドラフトで読売ジャイアンツに1位指名(逆指名)を受け、1999年に入団。ルーキーイヤーに20勝投手となり、最多勝利、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の4冠を獲得し、新人王と沢村賞も受賞。翌2000年は肉離れのため登録抹消となるなど、ケガに苦しむシーズンを送るも、2002年に再び17勝をあげ、優秀選手賞を受賞。2004年にはアテネオリンピック野球日本代表に選出され、銅メダル獲得に貢献。2006年のワールド・ベースボール・クラシックでも日本代表のエースとしてチームを優勝に導いた。2009年にボルチモア・オリオールズに入団。ベテラン投手の一人としてチームを牽引している。

 
 
 
 

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