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ノウハウ 木村尚義の「実践! ラテラルシンキング塾」 第11回 1を聞いて10を知る「抽象化能力」を高める練習方法 木村尚義の「実践! ラテラルシンキング塾」 創客営業研究所代表・企業研修コンサルタント

ノウハウ

第11回 1を聞いて10を知る「抽象化能力」を高める練習方法

 
こんにちは。木村尚義です。ロジカルシンキングと対になるラテラルシンキング。今回も前回同様、実際に私が企業研修で使っている練習法をご紹介します。この練習で鍛えられるのは、連載第7回でラテラルシンキングを日常に応用するコツの2として紹介した「抽象化」の能力です。
 
さて、いつものように最初はクイズです。
 
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メニューがないのに客が困らないレストラン。どういうこと?
問題その11【メニューがないのに客が迷わない料理店】
あるレストランにはメニューがありません。食品見本があるわけでもないのに、お客様は特に迷わず、食事を平らげると満足して帰ります。どうやって注文するのでしょう。
 
 



抽象化能力を鍛える基本練習“大量に発想する”

 
1を聞いて1しかわからないという人と、たちどころに10を知る人とがいます。何が違うかというと、抽象化能力の差です。抽象化とは具体的な事例をいったん、どこにでも当てはまるような形にすることです。決して抽象的にするわけではありません。別の言い方をすれば物事の本質を見つけること。抽象化は「本質」を抽出して、あなたがやろうとしていることに当てはめるのです。
 
抽象化能力を高めるには大量に発想する練習が役立ちます。理由は2つあります。
 
まず、1つ目の理由。量は質を生みます。発想が多ければ多いほど、それらの組み合わせは指数的に増えます。10個発想するうち1つ使える確率なら、100個発想すれば10×10で、発想同士を組合わせれば使える発想が100通りも生まれる計算になります。
 
2つ目の理由。発想の細部を意識できます。大量に発想すると、同じようなものがいくつも出てきます。すると、どう違うのかを意識するようになります。たくさんの違いを比べるうちに見えないものが見えてきます。例えるなら、解像度の違いとでもいいましょうか。解像度が高ければ細部がよく見えます。たくさん発想の違いを意識しているうち、アナログTVが地デジに変わったときに感じたほど、解像度がアップするのです。
 
1を聞いて10を知る力とは、物事の本質を別の事例に当てはめる力なのです(詳しくは第7回を参照)。それができるようになるには「大量に発想する練習」が、まず第一です。そのうえで、次の5つの練習方法が効果的です。
 
練習方法その1 >>NHK
本質を抜き出す練習です。御存じの通り、NHKは公共放送という性格上、メーカーの宣伝にならないように固有の商品名を言いません。別の言葉に置き換えています。
 
そこで私たちも、NHKになったつもりで、対象物の固有名を言わないで、新語を考えます。例えば、ホチキスなら「紙つづり針」とでも言いましょうか。もちろん横文字で「ペーパークリッパー」もかまいません。エレベーターなら「動く昇降階段」という具合です。上手に本質を抜き出して言葉に当てはめましょう。
 
練習方法その2>>30通りの用途
オーソドックスな練習です。やみくもに、たくさん出すというよりも、30という目標を掲げることに意味があります。プロのクリエイターとなると500から1000個を発想するといいます。それに比べれば、たったの30でよいと思えば、なんとか頑張れるでしょう。実際、最初の数分で普通の人でも6個、発想が得意な人なら10個ほど出てきます。
 
一瞬楽勝と思いますね。が、ここまでは発想というよりも思い出しです。11個目あたりからは、考えなければ出てこなくなります。そこで、最初に出てきた何個かを組み合わせます。それでも15個を超えるあたりからは、発想のブレイクスルーがなければ思いつきません。たとえば、新聞紙なら「汚れたものを包む」と、逆に「キレイなものを包んで汚れから守る」と発想するようなことです。
 
練習方法その3>>電車広告むりやりストーリー
この練習では、電車の広告をつなげて物語を想像します。満員電車で身動きできない時は格好の練習時間です。広告は好き勝手に選ぶのではなくて、隣り合っている広告を順番に物語化するという制限があります。例えば、ホテルバイキング、旅行、予備校、女性専門大きめ靴とあります。バイキングで偶然に友人と出会った。意気投合して旅行に行きたくなったから、予備校時代の同級生も誘う話になった。そういえば彼女は足が大きいから・・・という具合につなげてあらすじをつくります。 
 
練習方法その4 >>当てっこ動物
これはグループワークです。動物の特徴を上手く抽象化して可能性を絞ります。あらかじめ数十枚の動物カードをつくっておきます。それから2チームに分かれてお互い1枚ずつカードを引き、それぞれ出た動物について相手チームに質問させ、当てさせます。
 
先攻後攻を決めたら先攻側のチームから質問します。解答する側はYESかNOのみで答えます。
 
先攻が「木に登りますか?」「YES」。後攻が「走るのは得意ですか?」「NO」と絞っていき、最後に「ナマケモノですか?」「当たり!」という具合に、先に動物を当てたチームが勝ちです。質問によってはこちらのカードのヒントを与えることになるので、いかにカードを隠して質問するかがカギです。ゲームが終了したら、どの質問が有効だったか、どの質問で失敗したかをディスカッションします。
 
練習方法その5 >>なぞ解き
「○○とかけて××と解く」という、一昔前にWコロンのねづっちさんの芸で一世風靡したお馴染みの芸の練習です。関係性が遠いものから上手に共通点を抽出できるようになります。私は古書店の本棚でランダムに置かれているタイトルを結びつけて練習しています。
 
例えば『朝ごはんレシピ』と『美坊主』の2冊から、いろんな解き方がありますが、「朝ご飯とかけて坊主と解く」になったとします。そのココロは?
 
コツはそれぞれの特徴を頭の中で取り出すことです。この時点でものすごく頭を使います。
特徴が見つかるまで根気よく続けると・・・。ハイ、ととのいました!
 
「どちらもケサの出来事です」。お粗末さまでした。
 
 
【メニューがないのに客が迷わない料理店】答え
練習方法をよく読めばヒントがありましたね。そう、「バイキング」形式のレストランなのでメニューはありません。

 
次回はいよいよ最終回。どこにでもあるトランプで発想を磨く練習ができる「フラッシュブレイン」をご紹介します。
 
 
木村尚義の「実践! ラテラルシンキング塾」
第11回 1を聞いて10を知る「抽象化能力」を高める練習方法

 執筆者プロフィール  

木村尚義(Kimura Naoyoshi)

創客営業研究所代表・企業研修コンサルタント

 経 歴  

日本一ラテラルシンキング(水平思考)関連書を執筆している著者。1962年生まれ。流通経済大学卒業後、ソフトハウスを経てOA機器販社に入社。不採算店舗の再建を任され、逆転の発想を駆使して売り上げを5倍に改善する。その後、IT教育会社に転職、研修講師としてのスキルを磨く。自身が30年以上研究している、既成概念にとらわれずにアイデアを発想する思考法を企業に提供し好評を得ている。また、銀行、商社、通信会社、保険会社、自治体などに「発想法研修」を提供している。遊ぶだけで頭がよくなる強制発想ゲーム「フラッシュ@ブレイン」の考案者。著書に、『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』(あさ出版)、『ひらめく人の思考術 物語で身につくラテラル・シンキング』(早川書房)など多数。

 オフィシャルホームページ 

   http://www.soeiken.net/
 
 
(2017.03.22)
 
 
 
 

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