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ビジネス 南半球でビジネスを考える vol.5 オーストラリアのIT環境 南半球でビジネスを考える 経営コンサルタント

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第5回 オーストラリアのIT環境

 
 

お役所体質とグローバリズムの歪み

 
 ビジネスにおいて、インターネットは必要不可欠なツールで、同時にそのインフラの確保も、ビジネスを滞りなく運営するためのライフラインと言えるでしょう。
 ただ非常に残念なことに、オーストラリアはインターネット関連のインフラが十分ではなく、日本人の我々から見れば、その脆弱さは驚く限りです。日本ではちょっとしたカフェでも入れば、フリーのワイファイが拾えますが、オーストラリアでは非常に場所が限定され、実質的には皆無に等しいです。
 
 また、日本では、時間制限なし・無制限ダウンロードの光回線が世間の常識ですが、こちらは光回線などそれこそ大企業中の大企業が、目が飛び出るくらいの料金を支払って細々と利用しているだけです。大半はADSL,ADLS2+で、それもすべてのエリアや家庭に回線が供給できておらず、非常に不安定なワイヤレスを使用している人も多いです。また驚くなかれ、未だに電話線を引き抜いて、コネクトを入れなおしている、ダイヤルアップ!!を使用している家庭もあります。実際に私も、自宅ではほとんどインターネットを使用しないので、つい最近まではダイヤルアップを使用していました。ダウンロード量の上限が決まっているプランも多く、動画をちょっと長めに見たり、容量の多いメールなどを数回受け取れば、すぐに容量オーバーで追加料金が請求されます。
 
 なぜこんなにもオーストラリアはインターネット回線の制限が多いのか。理由は簡単で、一社がほぼ市場を押さえており、競争の原理が働いていないからです。最近は数社が、頑張ってこの独占市場の牙城を切り崩そうとしていますが、依然高い壁として立ちはだかっています。
 この会社はテルストラという会社で、もともとは国営企業。世の中の流れに沿って民営化しましたが、未だにお役所気分が抜け切らず、オーストラリアでもその悪名振りは有名です。数年前のリサーチでは、テレストラのCEOがオーストラリアのワースト経営者として、栄誉!?を受賞したくらいです。市場をほぼ独占して利益を十分出しているにも関わらず、コスト削減をスローガンに、カスタマーサービス対応の窓口は全て閉鎖し、電話のみの対応に変更。それだけでは不十分とばかり、国内に設置し、対応していたカスタマーサービスを、部署ごと国外に移動しました。ついでに、単純な会計業務も人件費の安い国外に。コスト削減の波はどの企業にも押し寄せていますが、何でもかんでもコストの安い国に持っていけば良いというものではありません。しかも段取りが悪いオーストラリア企業がこんなことをしたら・・・。悪い予感はその後すぐに当たりました。私にも、直接しわ寄せが来ました。
 
 

ケース1:ネット開通までの長い道のり

 
 会社のオフィスを引っ越した際のことです。引越し予定日にインターネット回線を引く手続きをしても、絶対に予定日よりも1~2週間は遅れるだろうと、覚悟は決めていました。その間会社を休業できないので、一時的にワイヤレスを契約しました。案の定、移転日にインターネットはつながらず、抗議の電話を掛けたところ、新しいオフィスにはADSL回線がコネクトしておらず、まずはその工事が先と言われました。
 
 移転は事前に知らせていたのに、なぜ工事ができていないのだと問いただすと、「インターネットの移転は聞いていたが、大元である回線の工事は依頼を受けていない」 と、子供のようなお粗末な対応。工事の担当者は珍しく時間通りに到着し、回線をつなげインターネットが使用できるようになったのはちょうど4週間後。臨時でワイヤレスを契約していなかったらと思うと、ぞっとしました。あまりのお粗末な対応に、ワイヤレスの別途料金をテルストラに請求したいくらいです。
 
 

ケース2:いい加減な事務処理

 
 この話にはさらに続きがあります。工事の後、2つの異なる料金の請求書が郵送されてきました。ここまでは予想の範疇です。料金は高いが、雑な仕事で有名なテルストラ。1回で移転手続きが完了できるとは思っていませんでした。どうなっているのだと、いやいやながら問い合わせると、驚くべき回答が・・・ なんとテルストラのオンライン上に、私の会社が登録されていなかったのです!! 各企業に与えられている顧客番号を伝えても、一切データーが見当たらない。私も怒りを通り越して呆れ果てしまいました。
 私だけが運が悪かったのではなく、オーストラリア人の大半が多かれ少なかれ、テルストラのいい加減な処理に振り回されています。特に、移転先インドのカスタマーサービス担当者は英語の訛りが強く、ネイティブスピーカーでも何をしゃべっているのか皆目見当がつかない、と評判は散々です。
 問題の元凶は海外に組織の大半を移転したことに始まります。そもそも、日本では当たり前の事務処理ですら四苦八苦しているオーストラリアの企業が、海外に重要な部署を置いて、遠隔操作ができるはずはありません。不思議なことに請求書の発行は国内。会計関係のデーター入力は国外。同じ会計業務なのに、2つに分ける意味が理解できません。なぜ分けたのかと一度テルストラのCEOに話を聞いてみたいです。
 ともあれこのときは、電話のたらい回し&やっと出た担当者との2時間近くの格闘の末、何とか請求書を一つにまとめることに成功しました。なぜこのようなトラブルが起きたのか、理由の説明はありませんでしたが、恐らく海外に部署を移転する際に、会社のデーターを紛失したか、入れ忘れたのでしょう。コスト削減を目的としながら、結局は、苦労の割に削減の幅が小さく、その上、評判まで落としてしまった。まさに踏んだり蹴ったりの結果です。現在はスパッと契約を打ち切ったので、ストレスが無くなり、晴れ晴れしています。
 
 

結論:「ITカスタマーサービスに勝機あり!」

 
 ここまで極端ではないにしても、海外に部署を移転したオーストラリア企業の多くは、同様の問題を抱えています。特に大手ソフトウェアー関連の企業は、コスト削減のため、カスタマーサービスを人件費の安い海外に置いている企業がほとんどです。でもITのスペシャリストならともかく、一般ユーザーや企業が、電話だけの対応で問題を全て解決できるはずがありません。電話で済むのなら、出張は渡航費が掛かるだけの無用の長物で、コスト削減の対象。でも実際には、回数は減っても、直接顔が見える出張がなくなることはありません。誰かオーストラリア国内で、痒いところに手が届くようなサービスをしてくれないか。やっぱり出てきました。オーストラリア人経営ではなく、アメリカ人経営のベンチャー企業ですが、それまで製造元が行っていたカスタマーサービスを代行したことにより業績が飛躍的に向上。10人程度で起業した会社が、今ではこちらの経済誌で急成長した企業として紹介されるまでになりました。
 
 IT用語は世界共通の言語、英語が使われているので、多少語学力に自信がない日本のITサポート企業でも、技術が確かならば、十分勝算があります。それに日本的な親切、丁寧のカスタマーサポートを行えば、一気に市場を独占できる可能性があります。
 
 
 
 
 海外に出た人の中には、ビジネスや、起業だけではなく、就労を目的とされる人も多くいます。次回は少し趣向を変えて、オーストラリアでの就職活動について書いていきます。
 
 
 
 
  南半球でビジネスを考える ~オーストラリア在住・日本人経営コンサルタント奮闘記~
第5回 オーストラリアのIT環境

 執筆者プロフィール 

永井政光 Masamitsu Nagai

NM AUSTRALIA PTY TLD代表 / 経営コンサルタント

 経 歴 

高校卒業と同時に渡米、その後オランダに滞在し、現在はオーストラリア在住。永住権を取得し、2002年にNM AUSTRALIA PTY TLDとして独立。海外進出企業への支援、経営及び人材コンサルティングを中心に活動中。定期的に日本にも訪れ、各地で中小企業向けの海外進出セミナーなどを行っている。

 オフィシャルホームページ 

http://www.nmaust.com/

 ブログ 

http://ameblo.jp/nm-australia/

 
 
 
 

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