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第4回 オーストラリアでニーズのある業種・サービス 後編

 
 
 今年も早いものでもう7月。1年の折り返し地点を過ぎてしまいました。オーストラリアでビジネスを考える方や、何らかのアクションを起こそうと思案されている方々にとっては、7月はとても重要な月と言えます。
 オーストラリアは6月が決算で、この時期に企業に対し何らかの商談を行ったとしても、それどころではない、1年の予算を使い果たしてしまった、など、芳しい回答は得られないでしょう。日本であればお役所などは予算を使い切らず、余らせてしまうと来年度の予算が減らされる恐れがあるので、ここぞとばかりに、公共事業などに大盤振る舞いすることがありますが、オーストラリアではまずその可能性がありません。理由は簡単、オーストラリア人は江戸っ子と似ているところがあり、「宵越しの金は持たねえ~」 とばかりに使いまくり、6月の時点で足らないことはあっても、余ることはまずないからです。
 その反動からか、新規予算が降りる7月には商談、求人など、全ての分野で一気に動きが活発化します。この月を逃すと10月頃までは季節同様に(オーストラリアは冬です)動きが鈍くなります。「オーストラリアとビジネスを考えるのであれば7月に!!」 つまり今月に行動を起こすのが最良と断言できます。
 
 
 

技術分野で健在な“Made in Japan”のブランド力

 
 前回は海外に向けて日本が誇れる食関係のビジネスについて、日本は世界的に見ても質が高く、安全な食物を提供しており、この点に関しては我々日本人が考えているよりも海外の方が正当な評価を下していることを解説しました。
 
 ところで、日本には食と並び評される、世界的に高評価でニーズがある業種、サービスがまだまだあります。
 その一つが日本の技術力。中国、韓国などの新興国が、日本に追い付け追い越せと頑張っています。すでに技術力の優位は以前ほど差がなく、コストパフォーマンスなどの面から、日本の製品が消費者のニーズに沿わず、残念ながら国際的なシェアを奪われている分野が年々増えているのは事実です。ただ、トータル的なブランド力の評価から考えれば日本は、まだまだ負けていません。消費者には懐具合があるので、毎回毎回高価な商品ばかり購入できません。ただ商品を売ればそれで終了ではなく、壊れずに長期間、購入時と同様の性能を維持する。アフターケアーなどのカスタマーサービスが充実している。これらのトータルな優位性が企業の信頼度を高め、ブランド力に直結すると言えます。事実、日本ではお目に掛からないかもしれませんが、オーストラリアでは日本企業名を一字変更にした類似ブランドや、企業マークをまねたりした電化製品を、大手量販店でごくごく普通に見かけます。これは彼等自身が、「日本製品のブランド力にはまだまだ敵わない」と認めた結果だと判断できます。
 “Made in Japan” のブランド力と、先人たちが長年培ってきた信頼性を武器に技術関係の商品をオーストラリアに輸出しても、十分勝算があります。
 
 
 

「水回り修理の技術職」に勝機あり

 
 商品を輸出するには、ある程度会社としての体力や、実績、特殊技術がないとできない可能性があります。でも技術関連の商品を売り出すのが、全てではありません。身に着けた技術一つで勝負できる分野もあります。
 知人のレストランで、使用している食器洗浄機が壊れた時がありました。こじんまりとしたレストランではなく、席数の多い大型店舗だったので、洗浄機が壊れると、業務にかなり影響が出てしまい、早急に修理のお願いをしたところ、業者からその日は多忙で明日にしてくれと言われてしまったそうです。仕方がないのでその日は手洗いで何とかしのぎ、翌日の約束時間を待っていたが、待てども暮らせども、修理には現れず、たまりかねて再度連絡を入れたその返事が、約束を入れておきながらも、「今日は忙しいので向かえない」でした。これまた仕方がないので、さらに翌日に約束時間を変更し、修理を待ちました。・・・そして翌日、今度は修理に来てくれましたが、時間通りではなく、一時間遅れ。一切の連絡がないままで、約束日時をすっぽかしたり、遅刻したり。これだけでも十分、日本ではありえない話ですが、問題はこれだけで済みません。やっと洗浄機の修理に入り、小一時間ほどで作業が終了し、「ありがとう。助かったよ」と・・・判断するのはまだ早い。ここはオーストラリアです。きちんと直ったかの確認をする必要があります。まず洗浄機の周りを見渡すと、それまで洗浄機に使われていた2,3個の部品が転がっているではないですか!! 知人がそれを指摘すると、業者はその部品は必要ないものだと言い切り、完全に直ったから安心しろと断言しました。後から不都合が出てもとぼけられるのがオチなので、知人がその場で一度試運転をしたところ・・・ スイッチを入れたとたんに水が、噴水のように吹き出してしまった。そんなことがあったそうです。
 こちらでは水回りの修理をする職業はプラマーと呼ばれ、技術職扱いなので、かなりの高給を約束されています。もちろん正式なプラマーになるのにはオーストラリアの国家資格が必要になり、通学の必要が考えられますが、その苦労を差し引いても、需要は確実にあると断言できる業種ですので、挑戦する価値は十分あります。
 
 
 

「自動車修理・メンテナンス」に勝機あり

 
 また、オーストラリアは日本の国土の20倍もの広大な面接を誇る国で、その反面、鉄道のインフラがあまり整っていません。飛行機を利用した長距離移動も大切な交通手段ですが、自動車も、国民の生活を支えるうえで必要不可欠の交通手段です。ただ、膨大な需要に比べ、そのメンテナンスに関しては、お粗末な限りと言わざるを得ません。
 オーストラリアの車検は毎年行う必要があります。ただこの車検が厄介で、毎年税金を国に払うのも面倒ですが、車のメンテナンスをきちんとしてくれる整備士を探すのは、さらに厄介です。私はこの国に17年滞在していますが、一度たりとも、この人は素晴らしい、すべて任せられる整備士だと思える人と出会ったことがありません。たいていは上記の洗浄機と一緒で、一つを直せば二つ三つ壊して返してくれる整備士ばかりです。オーストラリアには、各主要都市に数ヵ所、日系の整備会社が存在しますが、技術力が現地会社とどっこい、どっこいであったり、同じ商圏に競合が少ない状況に胡坐をかいて、横柄な態度なので、残念ながらこちらも二度と利用したいと思える会社は存在しません。日本的な緻密な整備と、謙虚な対応をすれば、一気にシェアを奪える可能性が大だと言えます。
 
 日本の技術的な商品の販売の他にも、日本国内で当たり前のように対応しているアフターメンテナンス系の技術的なサービスなども、オーストラリアではまだまだ遅れているので、我々が参入できるチャンスが多いと言えます。実はこの他にも、「これはオーストラリアで勝算がある」 と考えられるビジネスがまだまだあります。興味がある方はお気軽にお問い合わせください。
 
 
 
近年はIT、インターネット関連のインフラが整わないと、満足にビジネスもできない状態です。次回はオーストラリアのIT事情と、ビジネスチャンスを交えたテーマについてご説明します。 
 
 
 
 
  南半球でビジネスを考える ~オーストラリア在住・日本人経営コンサルタント奮闘記~
第4回 オーストラリアでニーズのある業種・サービス 後編

 執筆者プロフィール 

永井政光 Masamitsu Nagai

NM AUSTRALIA PTY TLD代表 / 経営コンサルタント

 経 歴 

高校卒業と同時に渡米、その後オランダに滞在し、現在はオーストラリア在住。永住権を取得し、2002年にNM AUSTRALIA PTY TLDとして独立。海外進出企業への支援、経営及び人材コンサルティングを中心に活動中。定期的に日本にも訪れ、各地で中小企業向けの海外進出セミナーなどを行っている。

 オフィシャルホームページ 

http://www.nmaust.com/

 ブログ 

http://ameblo.jp/nm-australia/

 
 
 
 

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