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月刊ブックレビュー vol.56 『領土消失 規制なき外国人の土地買収』 「抑制の利いた、どこにも煽情的要素がない文章で、空恐ろしい事実とその背景への分析が、つづられていく本。」――と、わざとvol.38と同じ書き出しにしてみます。この本も、あのとき取り上げた『人口減少時代の土地問題 「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ』と同じ問題意識で読むことができるからです。ご面倒でなければ、今回の評はvol.38と一緒にお読みいただければと思います。そして、あの本と同じようにこの本も、本気で、心底お勧めします。
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月刊ブックレビュー vol.55『機会損失 「見えない」リスクと可能性』 いきなりこんな解説をすると著者と版元に怒られそうですが、“読み解く”という意味では、本書は
・「はじめに」
・第Ⅰ部第2章第二節あたりまで
・第Ⅲ部末のミニコラム「ノート2 私の個人的な経験」
の3つを読めば、エッセンスはつかめると思います。目次的な構成はともかくメタレベルの構成としてはこの3つが幹であり根であり、大部分のその他は枝葉です。核の部分だけ読みたい人、とにかく時間がないから極力短く済ませたい人は、この3つを押さえればたぶん大丈夫。求めるものは得られます。 -
月刊ブックレビュー vol.54『東大院生が開発!頭のいい説明は型で決まる』 久しぶりに実用書をと思い、取り上げた一冊。著者でビジネスセミナー講師の犬塚壮志氏は元駿台予備校の化学科講師です。ちなみに駿台予備校は講師に採用されるのが業界で最も難しいそうで、そこで著者は当時最年少の25歳で採用されて教壇に立ち、同校の講義用テキスト、模試の執筆、カリキュラム作成にも携わったとか。経歴からは、現在テレビで活躍中の林修氏が思い浮かびますね。
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月刊ブックレビュー vol.53『外国人が見た日本 「誤解」と「再発見」の観光150年史』 まず「はじめに」からエッセンスを引用。長くならないよう適宜中略します。
「自分たちの魅力は、本人自身では分かりにくい。外国人旅行者のほうでも見たいものがいろいろあり、時代とともに変わってきたもの、変わらないもの様々である。日本人には観光地として思いもよらなかった場所で、外国人によって「発見」された日本の魅力も数多い。歴史を俯瞰することにより、訪日外国人の今後、日本の本当の魅力が見えてくる一助に必ずなるはずである。」 -
月刊ブックレビュー vol.52『意識の川をゆく 脳神経科医が探る「心」の起源』 解説付きの書籍を取り上げるのは久しぶりでしょうか。もしかして、新しいシリーズになってからは初めてかもしれません。本書は2015年夏に82歳で亡くなったイギリス人の脳神経科医オリヴァー・サックス氏の、医学/科学エッセイを集めた最後の本。「はじめに」によれば、全10章の大半は老舗文芸誌『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』に寄稿されたもので、それらを著者が自らセレクトし、亡くなる2週間前にアシスタントたちに出版を託して生まれた一冊といいますから、普段の本と違う緊張感を感じます。
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月刊ブックレビュー vol.51『人口減少時代の都市 成熟型のまちづくりへ』 今月の書評の本は何にしようか、と本屋の棚を見上げていて、中公新書のコーナーで、『人口減少時代の土地問題』と『人口減少時代の都市』という、音の響き的にはほとんど同じタイトルの本が並んではさまっているのを見つけました。去年7月発行の中公新書№2446と、今年2月発行の2473。両脇には間の2450、60番代の中公新書がいくらでもあるのにこの2冊が隣同士に並べられていたのは、書店員のはからいか、はたまた心ある客のいたずらか。
そんな妄想をしてしまったのは、先に読んだ『人口減少時代の土地問題』がそれくらいいい本だったから(vol.38参照)。本書も『人口減少時代の都市問題』としてもよかったのにと思いつつ、中身との整合性からは、ベストは『人口減少時代の都市経営』だったでしょうか。つまり「都市経営」が本書のテーマです。 -
月刊ブックレビュー vol.50『ブラックボランティア』 今年7月23日、東京都内の最高気温が40℃を超えました。再来年の東京オリンピックは7月24日から8月9日が開催日。それを踏まえつつ、第5章の引用から書評を始めます。
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月刊ブックレビュー vol.49『「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明』 まず「イノベーターのジレンマ」とは、革新的な製品や生産工程を生み出して勝ち組になったイノベーター企業は(だからこそ)新世代の競争で後塵を拝しがちになる、という現象のこと。本書はこの現象を「だからこそ」というトートロジー(同義反復)で済まさず、理論と実証で経済学的に解明した一冊です。
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月刊ブックレビュー vol.48『リサイクルと世界経済 貿易と環境保護は両立できるか』 評者のとぼしい映画体験からは、2001年の『少林サッカー』(監督:周星馳)はあの時代の中国の社会の雰囲気を活写した、私的映画史上5本指に入る傑作です。ほんの数年前まで現金収入は自給自足に毛が生えたぐらいの暮らしぶりだった中国が、改革・解放路線で「経済の発展」という現代的な“魔”を知り、それによって市井の人々が自己像を描く際の感覚が目覚めさせられ、いっぽうで社会には旧来の感覚が残っている。だから人々は頓珍漢なこともするし、出来事は頓珍漢にもなるし、でも双方が純度100%のキラキラだから、全部ひっくるめて愛するしかない――。つまり一言でいえば「国としての思春期」が、見事に定着された映画だと思うのです。
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月刊ブックレビュー vol.47『リーダーが育つ55の智慧』 家具販売のニトリといえば「お、ねだん以上。ニトリ」のCMがすぐ思い浮かびます。本書はそのニトリの創業者・似鳥昭雄氏の最新刊。通読して若干タイトルとのずれを感じたので「はじめに」を読み直してみると、終わり間際にこうありました。
この本の中には、ニトリが試行錯誤を繰り返しながら実際にやってきたことが満載されています。いわば、私とニトリの全社員たちの集大成のようなものです。/より多くの人たちにこれを読んで自分自身のロマンを見つけ出し、それを果たすためのビジョンを掲げて日々に前向きに取り組んでいただけたら幸いです。