
インタビュアー 石黒彩 (元モーニング娘。)
渡邉 はい。植木生産で起業した父に導かれ、気付いたら地下足袋を履いていました(笑)。
石黒 なるべくして、庭師になられたのですね。個人宅での仕事が多いのですか?
渡邉 そうですね。過去に販売した木には、定期的な手入れが必要です。下手な手入れをしてしまうと、前と同じ形に戻すことが難しくなるんですよ。
石黒 そうなんですか! 植物だから切っても伸びるし、元の形に戻ると思っていました。
渡邉 そう思われる方は多いですね。葉に日が当たるように枝を切ることで、風通しが良くなって虫が少なくなると言う方もいます。しかし、本来必要な光合成ができるように、長い枝を短くし、小枝は抜かないことが大事です。小枝を切ってしまうと、そこからは細かい枝が出なくなってしまうので、私たちが切るのは太い枝なんですよ。ルールと順番があり、それを守ることで技術力が上がります。
石黒 初めて知りました! 整えればいいと思っていましたよ。とても奥が深いんですね。こうした技術力のある職人さんは少ないのでしょうか。
渡邉 少なくなってきていると思います。個人のお客様のお庭の木は観賞用で、実や花を楽しみたいというのが主な目的です。でも、公園や街路樹は安全性が大事になります。現代の職人は画一的な街に合わせた緑化工事の仕事が多いので、結実しやすくする、枯れにくくするといった、木の成長に良い手入れの基本が身につきにくいんです。
石黒 緑化工事が多いと、そのような手入れをする機会がなく、できる職人さんも少ないのですね。

石黒 その向上心が素晴らしいです! 今後の展望はありますか?
渡邉 庭を大事にするお客様に、正しい木の手入れ方法を直接広められる庭木塾をやっていきたいと思っています。植木屋に頼らなくても、自分で正しく手入れができたらいいですよね。
石黒 お話を聞いて、木を見るときのポイントが変わり、興味が湧いてきました。今後もその卓越した技術力で、美しい庭がある風景を増やしていってくださいね!
「仕事を楽しむ」とは‥
もともと木の仕立てをするのが好きなんです。伸びて大きくなってしまった木を切りながら形をつくっていく。そうして、うまくできた時はとても嬉しいんです。
(渡邉俊之)