「野球自体は面白いし楽しいが、仕事となると責任が生じるので、楽しくやろうぜ、ではやっていけない」と話してくれた宮本さん。その中でのモチベーションは、チームの優勝や、自身の掲げた目標をクリアしていくことだという。
日本のプロ野球のために
チームの優勝は常に意識していました。ただ、1年目の時は、一軍に残ることが目標で、正直なところ優勝は自分にとって最優先ではなかったんですよね。一軍に定着できたら、次の目標はレギュラーです。レギュラーで3~4年経った頃に、ようやくチームのことを第一に考えて行動ができるんですよ。自分に余裕がないと、なかなかチームのためだけを考えることはできません。
後輩と話す時も、まずは自分のために練習していきなさいと伝えています。結果を出して評価してもらうには、どういう練習が良いのか考えていくんです。そうして実力をつけて一軍に入る、レギュラーになるということ自体が、実はチームのためになっていますからね。
自身で掲げた目標を達成していくことが、モチベーションになっていました。何より、野球は面白いですからね。ピッチャーの投げる球も、僕が現役の頃より10kmくらい速くなっていますし、それを打ち返すバッターにも迫力がある。見ていてとても楽しいでしょう。また、多くの球技は、ボールがゴールに入って、点を獲得しますよね。野球の場合、入っていくのは“人”なんですよ。それが難しさであり、面白さだと思っています。
さらに、野球は団体競技でありながら、バッターボックスに立ったバッターと、ピッチャーマウンドにいるピッチャーの一対一の勝負であることも魅力の一つです。例えばサッカーだと、一対一になるのはPKくらいですよね。試合が止まっている状態の一対一ではなく、動きの中でその勝負があることが面白いと思っています。
日本において、野球は人気競技の一つです。ただ、過渡期を迎えていると思っています。今は、高校生の頃からアメリカに渡る選手もいますよね。間違いなくドラフト1位で指名されるような選手が、アメリカの大学に編入することもありました。今の若い選手たちは、日本のプロ野球に入ることを見据えていない人も多いんですよ。
だから、プロ野球の組織の仕組みから変えていかないと、若くて優秀な選手たちが最初から手の届かないところに行ってしまいます。例えば、ポスティングやフリーエージェントなどのルールを明確にして、選手たちに不安を与えないようにしないといけません。僕は、ポスティングをなしにして、フリーエージェントのみにしても良いと思っています。
契約金も日本とアメリカでは大きく違うようです。それであれば、たとえ失敗してしまうとしても、アメリカで挑戦した経験を持つほうが強いと考える選手は多いと思いますよ。失敗したと言っても、必ず得るものはあるはずですからね。だから、今の日本野球の状況に、組織の方々は危機感を持ってほしいです。
学生たちの競技人口も、かつての人数ほどではなくなったと聞いています。バレーボールやバスケットボールも人気になっていますからね。そんな中で、今、日本の野球界は変わっていくべきです。昔の良いところは残しつつ、より良いものは取り入れていく。そういったことのお手伝いができれば、嬉しいですね。
(インタビュー・文 中野夢菜/写真 Nori)
宮本慎也(みやもと しんや)
1970年生まれ 大阪府出身
大学を卒業後、プリンスホテルに入社し社会人野球を経験する。1995年、ドラフト指名でヤクルトスワローズに入団。特に守備が高く評価され、1997年にはゴールデングラブ賞を受賞した。2004年のアテネオリンピック、2008年の北京オリンピックでは日本代表のキャプテンを務めるなど数々の実績を残した。2013年に引退を表明。野球評論家としての活動をスタートした。2018年~2019年には東京ヤクルトスワローズの一軍ヘッドコーチを務めるなど指導者としての経験も積む。現在は学生野球のコーチなども務め、野球の普及に尽力している。
(取材:2026年2月)