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スポーツ 上原浩治のTrust Pitch! vol.16 次の目標へ挑むためのオフ 上原浩治のTrust Pitch! ボストン・レッドソックス投手

スポーツ
 
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優勝パレードの様子。ボストンの街中が一緒に喜んだ
 こんにちは、上原浩治です。
 
 先月下旬に帰国しました。ワールドシリーズ優勝から早1ヶ月・・・、このコラムを書いています。あっという間の1ヶ月でした。帰国後はテレビなどにも出演して、シーズンを振り返っていますが、ただ、ぼくの中ではもうあの優勝の歓喜は終わったこと。過去のことになってます。そう話すと、「あんなに劇的な活躍だったのに?」 と言われたりもしますが、物思いにふけっていても、次のシーズンは直ぐにやってくるわけだし。そのへんは、さっぱりすっきり切り替えています。
 
 優勝の翌日、日本でも報道されてたみたいだけど、市内観光に使われている水陸両用車 「ダックボート」 に乗り込んで、フェンウェイパークからチャールズ川まで優勝パレードに参加してきました。たくさんのファンの方に沿道から声をかけてもらってね。にしても、3時間半はちょっと長かった(笑)。もちろん優勝が嬉しくないわけじゃない。世界一ってね、色でたとえると、明るい色。でも天狗になっていたらすぐに黒く染まってしまう。自分次第で何色にでも染まるなら、来年も明るい色にしたいわけです。
 
 

初・初・初のシリーズを終えて

 
 初といえば、記録的な面で今回は初モノづくしだったみたいですね。ア・リーグがワールドシリーズを勝ったのは、ヤンキースで松井さんがMVPをとった2009年以来ですから、それも誉れであることは間違いないです。でも 「初」 は過去に誰もいなかったことを成し遂げたがために付く文字ですから、何より嬉しいですよ。皆さんがいるビジネスの世界でも、やはり 「初」 となる記録を立てられると嬉しいものじゃないですか? そういう高みに挑む集団ってね、野球のチームでも会社でも、同じような雰囲気があると思うんです。自分のことを必要としてくれて、「この会社のために」 という雰囲気が生まれること。そしてその気持ちが切れないこと。レッドソックスは年間を通じてそれがあったんですが、最初にチーム貢献の意識を持たせてくれたのは、やはり大きかったですね。
 
 年間を振り返って思うことなのですが、今年のチームにはすごく頼もしい柱となる選手がいました。デビッド・オルティーズやダスティン・ペドロイアみたいな生え抜きが中心となってチームを引っ張ったのでなおさら。会社でもそういうところがないですか? 
 生え抜きがベテランになり、会社の中核になり、背中で物事を教えてくれる。背中で引っ張ってくれる。練習一つとっても他の誰よりも練習している。一流であればあるほど、一流という態度はとらず 「自分は下手だからね(笑)」 と謙遜して、黙々と練習を続ける。ペドロイアなんかは特にそういう意識は強いんじゃないかな。
 監督にしても、ファレルは偉ぶったり壁をつくらない人ですからね。気軽に声をかけてくれて、社員のぼくとしても話しやすい。誰とでも一緒に喜び、一緒に悔しがるところがあった。今のレッドソックスは、人材が適材適所にいて、その誰もが同じ方向に向かって行けたということ。それが躍進の要因だったと思いますね。
 
 

目標は数多く、できるレベルで

 
 一つひとつ結果を重ねていき、自信をつかんでいった。個人が自信をつかみ、また結果を出し、チームが流れに乗る。ビジネスとすごく似ているなと感じますよね。
 個人として結果を出すために、ぼくがこだわっているのは目標ですね。目標の立て方。皆さん、目標を立てる時、どんな立て方をしていますか? ぼくは、ある程度の目標を立てるんです。そしてその全てを達成できるものだと疑わずに立てる。
 たとえばキャンプだと 「ケガをせずに過ごす」 ということを目標にしたり、明日一日のことであれば、「こういうピッチングをしよう」 と絞り込んで目標を立てたりする。大事なのは、達成できるような内容にすること。目標が高いのは悪いことではないけど、身の丈に合った目標でないと、達成しているという実感がわかないし、達成できなかった時の失望感が大きい。それは自信にはなりません。達成感を感じることで、また次へと向かっていける。
 
 これは野球でもビジネスでも同じことですよね。達成できる目標ならば、日ごろから意識を持って取り組むことができます。ぼくならば、「試合で0点に抑える」 という目標を立てると(当然、その意識でないと仕事になりませんけども)、練習からそのイメージを持って高い集中力で取り組むことができる。失敗したら失敗したでそれは仕方がない。過去を追いかけないで、明日を追いかければいいだけの話です。切り替えですね。
 
 

まだまだ感じる伸びしろを信じて

 
 もし何かコンプレックスがあり、貢献意識を持ったり、目標を立てたりすることがしにくいという人もいるかもしれません。でも、シンプルに考えればいいんです。できないことをやろうとしなければいい。野球で言えば、練習してできるようになるのであれば練習すればいい。練習や努力は決して嘘をつきません。1日2日ですぐにできるようになるものでもないし、でも経験したことは必ず財産になりますから。すぐに結果が出ないかもしれないけど、折れずに一つひとつ目標を立てればいいんです。
 だからぼくは、既に来シーズンの目標を立てていますし、日々のトレーニングでも細かい目標を立てています。1日3時間ほどのトレーニングで、ウエイトトレーニングやランニングなどが主体ですが、自分が少し努力してできる範囲の目標にしています。そして当面の目標の集大成は、キャンプにいい状態で入ること。キャンプまでは3ヶ月切ったので、あっという間です。でも自分を見つめ直すと、まだまだ伸びしろはあると思っているので、目標を達成するのが楽しくて仕方がないですよ。
 
 オフはオフで充実したものにしたいですね。練習が第一ですし、投球フォームなどの技術も、今までの自分とこれからの自分を照らし合わせて、どうすればもっと上に行けるかを考える期間にしたい。もちろんメディアにも出て、刺激を受けたいと思っています。ということで、日本の皆さん、これからも上原浩治をよろしくお願いします!

 執筆者プロフィール 

上原浩治 Koji Uehara

ボルチモア・オリオールズ投手

 経 歴 

大阪府出身(出生は鹿児島県)。東海大学付属仰星高校から大阪体育大学に進学し、大学3年時に日本代表に選出。1997年に出場したインターコンチネンタルカップ決勝では、当時国際大会151連勝中だったキューバから先発勝利をあげ、注目された。ドラフトで読売ジャイアンツに1位指名(逆指名)を受け、1999年に入団。ルーキーイヤーに20勝投手となり、最多勝利、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の4冠を獲得し、新人王と沢村賞も受賞。翌2000年は肉離れのため登録抹消となるなど、ケガに苦しむシーズンを送るも、2002年に再び17勝をあげ、優秀選手賞を受賞。2004年にはアテネオリンピック野球日本代表に選出され、銅メダル獲得に貢献。2006年のワールド・ベースボール・クラシックでも日本代表のエースとしてチームを優勝に導いた。2009年にボルチモア・オリオールズに入団。ベテラン投手の一人としてチームを牽引している。

 
 
 
 

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