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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
現在の仕事を自身の天職だと語るアン ミカさん。天職に対する考え方も、若い頃とは違いが出てきたと言う。
 
 

挫折によって得るものがあった

 
昔は、好きな仕事で人に求められたら天職だと考えていました。でも今は、そういった主観的な考えにプラスアルファして、周囲の方々がどれだけ幸せになれるのかを考えるようになったんです。ほかの人が石を投げるより、私が石を投げたほうが響いたり、私がやることでより喜んでもらえたりする仕事。それが天職だと思うんです。
 
周囲の方々の笑顔が、私の仕事のやりがいです。そう気付けたのは、30歳のときに一度仕事が全然なくなったことがきっかけですね。私は29歳のときに、自分のルーツ探しのために韓国に留学したんです。それまでは、パリやニューヨークでモデルの仕事をしていたので、流行の最先端にいました。それが、ファッションとはまったく関わりのないところで暮らしたので、日本に帰国したときはまるで浦島太郎のような気分になりましたよ(笑)。
 
それまで私が関わっていたファッションショーは、プロの小売業の方に服を見せるものでした。それが、帰国するとモデルが一般の方々に手を振りながら歩いているんです。「関西コレクション」や「神戸コレクション」など、次世代のファッションイベントができていて本当に驚きましたし、「出遅れた」と感じましたね。自分のルーツを探すために、韓国への留学は絶対に必要なことでした。でも、ファッションの仕事をするうえでは、自分が流行から遅れてしまったことがとてもショックで打ちひしがれましたよ。
 
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その後、1年間はなかなか仕事がなくて苦労しましたね。ちょうどその時期に、NHKで人間国宝の方々をお招きする『4時です 上方倶楽部』という番組のアシスタントキャスターのオーディションに受かったんです。韓流ドラマの『冬のソナタ』が日本で初めて放送された時期で、私に韓国のバックボーンがあることに注目していただけたんです。
 
始めのうちはミスの連発で、とても苦痛に感じていました。でも、あるとき番組の観覧に来てくださっているおじいちゃんが、涙を流しているのを目にしまして。『4時です 上方倶楽部』はとても楽しい番組なので、どうして泣いているのか不思議だったんです。お話を聞いてみると、その方は私と同じく韓国にバックボーンを持つ方でした。「NHKの番組に、韓国の本名でキャスターをやる人が出てきて嬉しい」と言ってくださったんですよ。
 
そのおじいちゃんは毎日のように観覧に来てくれました。また、当時観覧に来てくださっていた高齢の方々は、私を応援したいとさまざまな講演会やイベントに来てくれるようになったんです。若い人に向けたファッションのイベントでも、おじいちゃんやおばあちゃんたちが最前列に陣取っているんです(笑)。私は両親を早くに亡くしたこともあり、本当に嬉しかったですね。
 
そうした経験から、私を選んでくださる、お仕事をさせてもらえるというのは奇跡だなと感じるようになりました。まさに、「やるべきことを好きになることが幸福」です。これは一度仕事がなくなり、挫折をしたからこそ得られた価値観だと思っています。
 
 
挫折を経験したからこそ得られるものがあったというアン ミカさん。「芸能界の仕事をするうえで、失敗や挫折は絶対に必要」だと語ってくれた。
 
 

一度立ち止まって思い巡らせる

 
モデルの仕事もテレビの仕事も、満足することってないんですよ。満足してしまうと、そこから成長できないんです。悔しい思いをしたのなら、そこから学びを得る。学びや発見があったのなら、“失敗”ではないんですよ。何がダメだったのか発見して学ぶ。そうして次に活かせるように自身をアップデートするんです。
 
両親からも、「世の中に失敗はない」「失敗を恐れてやらないと言い訳するのはやめなさい」と教わってきました。私は今後も自分の仕事に満足することはないでしょう。でもそれは、「もっとできる」というポジティブな考えなんですよ。
 
ただ、常に上に向かって登り続けることが良いかというと、そうではないと思います。ときには立ち止まったり、違う道を考えてみたりすることも大事だと思うんです。突き進み過ぎると、視野が狭くなりますからね。
 
私の好きな言葉に、「思い巡らせる」というものがあります。私は意図的に立ち止まりながら、自分の環境を思い巡らせるようにしているんです。常に上がっていくのではなく、一度思い巡らせる。その結果、より良い選択ができることもあるんですよ。
 
 
 
 
 

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