B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

20160201sp_79ex02.jpg
 
たとえ自身が名プレーヤーだったとしても、自分がプレーすることと指導をすることは全く別のもの。新監督として、選手一人ひとりにどのような意識でいることを求めているのか。
 
 

各選手がしっかりと目標を持つべき

 
 選手らに求めるのは、球団やファンからの期待に応える力を身につけ、発揮してほしいということです。球団やファンは一人ひとりの選手に対して、「彼ならこのくらいできるだろう」「彼にはこういう活躍をしてもらいたい」という期待値があると思うんです。だから選手たちは、その期待にプレーで必ず応えなければならない。
 
 そのためには、一人ひとりが個人的な目標を持つことが非常に大事です。例えばスーパースターになりたいとか、スターティングメンバーに名を連ねて試合に出場し続けたいとか。明確な目標を持っている選手のほうが一生懸命になるものです。そして、個々の頑張りは自ずとチームを助けることになるはず。つまり、自分の力がチームに還元されるわけですね。私は監督の立場から、各選手がどういう目標を持っているのかを把握し、私の経験を踏まえたアドバイスをしたいと考えています。
 
 アドバイスをすると言っても、チームを指揮する立場として、選手全員が現役時代の私のようになることは、求めません。選手にはそれぞれ長所と短所がありますからね。プロ選手は誰もが光る個性を持っています。ですから、各選手の強みと弱点を見極めて、ピンポイントで無駄のないアドバイスをするのが指導者の役目。そして、指導が活かされているかどうか、練習や試合の後も選手としっかりとコミュニケーションを取って、よかった部分や新たな改善点を共に見つけていく。そういうアプローチの仕方をしていけば、自然といい選手が育つものです。
 
 
故郷のベネズエラで野球人生をスタートし、アメリカでメジャーリーグを経験。そして日本にやってきたラミレス監督。言葉も生活習慣も異なる国で実績を残すには、いかなる心構えが必要なのか。新しい環境で仕事をする機会は誰にでもあるはず。そこで、みんなに役立つラミレス流の環境適応術を聞いてみた。
 
 

郷に入れば郷に従え

 
 新しい環境で働くにあたって一番重要なのは、その場所の慣習や独自の文化と向き合い、理解しようと努めることでしょう。なぜなら、環境が自分のために変わってくれることはあり得ないからです。むしろ、自分自身が置かれた環境に合わせるべき。例えば私の場合は、日本の食習慣に合わせたこともそうだし、日本語を学習することもそうでした。
 
 私は日本を愛しています。この国の方々はお互いをリスペクトし合っているし、他者に対して敬意を払い、尊重する度量がある。私は来日以降、この国の文化や慣習だけでなく、日本人の優れた精神性も取り込むよう努めました。自分自身が、「私は日本人だ」と確信できるくらいに、環境に溶け込もうと意識していましたね。
 
 新しい環境に適応できない人たちは、「自分の故郷の常識や育ってきた環境とは違う」という考えを捨てきれない。でも、それではダメなんです。自分の置かれている環境は、これまでのスタイルが通用しない、全く別の場所なのだと認めること。そして敬意を払うことが、新天地で結果を出すための第一歩なんです。
 
 これからもメジャーリーグから日本のプロ野球チームに移籍してくる選手が数多くいると思います。そういう選手らに私が経験を踏まえて言えることがあるとすれば、自分が学ぶためではなく、「俺が日本に野球を教えにきてやったんだ」という態度では、この国で成功するのは難しいだろうということです。上から目線で、「俺が教えてやるんだ」なんて気持ちでいたら、大きな壁にぶつかって、何の実績も残せずに帰国せざるを得なくなってしまうでしょう。大事なのは学ぼうとする姿勢です。私はそのことを、身をもって体験してきました。これは外国人の野球選手に限らず、自分の立場に置き換えてみれば、誰にでも当てはまる話です。
 
 ということで、新天地に赴く方々が理解しておくべき、ことわざを教えましょう。それは「郷に入れば郷に従え」です。この言葉をリスペクトし受け入れることが、新しい環境で楽しみながら自分が成長できる近道なのです。
 
20160201sp_79ex03.jpg
 
 
 
 

スペシャルインタビュー ランキング