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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW


 
プロフィール 1969年生まれ、秋田県出身。高校時代にアマチュアレスリングと出合い、中央大学でレスリング部に入部。大学4年時に中退し、プロレスラーとしてUWFインターナショナルへ入門。1996年の団体解散後は1997年のキングダム旗揚げに加わり、タイトルを獲得する活躍を見せた。1998年に高田道場へと移籍。総合格闘技興業・PRIDEへの参戦を皮切りに、爆発的な人気を得る。世界屈指の強豪選手たちを相手にひけをとらず、創造性豊かな技を次々と繰り出しては相手を沈めていくことから「IQレスラー」という異名が定着。格闘技界で最強の名をほしいままにしていたグレイシー一族との戦いでは、4連戦を勝利で飾った。2006年にフリー転身後は、HERO’Sを経てDREAMに参戦。現在は自らの総合格闘技ジムを立ち上げるなど、現役選手として活躍しながら若手育成にも力を注いでいる。
 
 
 
桜庭和志。格闘技に通じた人で、この名を知らない人はいないだろう。それまでの常識を覆す発想で次々と変則的なテクニックを披露しては、格闘技の世界に新たな熱狂をもたらしてきた。また、格闘技王国・ブラジルの強豪選手を相手に一歩も引けをとらないファイティングスピリットは、多くの観衆に強い力を与えてきた。
だが、その格闘家人生は決して平坦な道のりではなかった。「誰も真似できないテクニックの持ち主」「類まれなカリスマ的人気」・・・・・・自分のあずかり知らないところでそんな形容がつく孤高の存在ゆえに、人知れず悩みぬいた時期もあった。格闘家としてのおのれの存在に疑問を抱くときもあったという。B-plusは、そんな桜庭選手にどうしても聞いてみたいことがあった。「その逆境をどうやって乗り越えてきたのか」――。
リング上の桜庭も、企業を経営する経営者も、おのれの力量一つで世と渡り合う存在であることは共通だ。ならば、格闘技がビジネスに教えてくれるものが、きっとあるはず――そして、桜庭から答えが返ってきた。
 
 

魅せるために動く

 
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「動きがある試合でないと、つまらないでしょう」 桜庭和志はそう語る。彼の試合は、とにかくおもしろい。見ている観客の側も “血” が湧きたち “肉” が躍る試合を、必ず披露してくれる。ダイナミックな技とパフォーマンス、そして観客の 「勝利への期待」 を余さずモノにしていくヒーロー性のゆえに? だが、勝利ではなく負けに終わる試合であっても、その負けっぷりにさえ観客は共感する。

「基本的にはやはり勝つことが大事だと考えているんです。ぼくらがアクロバティックに動くことや、わざと大げさに技をかけたりパフォーマンスをすることによって、相手にフェイントがかかればいいし、それプラスでお客さんが喜んでくれたら、言うことはないんですよ」

現在は総合格闘家として名を馳せる桜庭選手だが、そのベースになっているのはプロレスだ。大学を中退し、1992年にUWFインターナショナルに入団すると同時に、アマチュアレスリングの世界からプロへと進んだ。プロレスラーとしてのデビュー戦は、1993年8月13日。日本武道館という最高のステージだった。このとき彼は不思議と緊張感を感じなかったという。

「ぼくは新人のレスラーでしたから、どうやってお客さんを沸かせようかとだけ考えていました。新人の試合にはあまり興味をもってもらえないじゃないですか? だからお客さんの一人一人に印象付けていくにはどうしたらいいかを考えましたね」

そこで桜庭が出した答えが、「動くこと」 だったのだ。

「もし、お客さんがぼくらの試合を観て『面白くない』と思ったとしたら、もう来てくれなくなるわけですよね。つまりお客さんが減っていく。単純なことですけど、それじゃぼくらは給料がもらえなくなっちゃうわけじゃないですか。だから、レスラーとして勝利を意識しながらも、お客さんを惹きつけることができないといけないと思っていました。そのどちらが欠けてもいけない、と」
 
 

お客さんは何にお金を払っているのか

 
桜庭選手のパフォーマンスで有名なのは、やはりマスクをかぶっての入場シーンだろう。覆面レスラー用のマスクをかぶって入ってくる姿は、トリッキーなテクニシャンというキャラクターイメージも後押しして、相手を茶化しているようにすら見える。これは相手をけん制したり入場シーンを盛り上げたりするための演出と思っていた編集部は、彼の本音を聞いて少なからず驚いた。
 

「入場が恥ずかしかったんですよ、最初は。どうにも格闘技イベントの派手な演出が恥ずかしくて。で、どうやったら恥ずかしくないかを考えたんです。で、マスクをかぶるとぼくの表情が直接は見えないわけですから恥ずかしくないだろうなと思って。実際にやってみると、『これは恥ずかしくないぞ』 と気づいた。しかも、お客さんも盛り上がってくれている。一石二鳥だったわけです(笑)。 それまでは、少しでも早く入場シーンを終えたかったから、走って入場していたくらいですから」

ここでも観客が盛り上がっているかどうかを気にしていた桜庭選手。他にも、入場するときに場内に流す映像の演出をはじめ、格闘技イベント全体の流れにおいて、盛り上げることへのこだわりは強い。

 
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「ぼくは、DREAM にせよ Dynamite!!  にせよ K-1 にせよ、格闘技の大会というよりはイベントだと思っているフシがあって。イベントはお客さんがお金を払って見に来るわけです。歌手のコンサートって、お客さんを盛り上げるための “流れ” があるじゃないですか。最初は勢いよく始まって、静かな曲を続ける時間帯があって、最後は、ワーッとテンションが上がって終わるような。だから、ぼくの試合だけではなく、トータルで流れがそういうふうになればイベントとしては成功ですよね。
ときどきあるんです。前の試合で半分以上のお客さんが選手にスタンディングオベーションを贈ったぐらい、ドッカンと盛り上がったところで自分の番が来ることが。『今日の最高潮はここだな』 って感じるんですよ。そういう試合がメインに来て、大会を締めくくれれば最高ですけどね。だから、仮に試合に負けても 『これだけ盛り上がればOKだな』 と思うときもあります」 
 
 
 
 

 

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