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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

グレートカンパニーへ舵を切った
小山流21世紀型コンサルティング

 
 
 
会社を変えると一口に言っても、会社には拠って立ってきた方針や指針がある。船井総研といえば、カリスマ指導者・船井幸雄の方法論が長らく疑われずに浸透してきたコンサルティング会社だ。それゆえの信用もある。小山氏は、信用と伝統の上に何を築いたのだろうか。
 
 

「偉大な企業」という新機軸

 
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 端的に言えば、「会社の未来を示す方向性が乏しい」。そう感じたのです。私の代になって、つまり今後の経済社会の中で、船井総研という会社がどういう道筋をたどっていくべきなのか。それを最初に打ち上げる必要がありました。
 当時の経営背景は、トヨタが12兆円の売上を出していたのに対し、船井総研は60億くらいでした。目標として掲げた「2倍化」を達したとしても120億円程度。60億だった会社が急に12兆円企業になる方法などあるはずがない。私としては、そういった 「規模」 を追及するよりも、船井総研のあり方に沿った未来図を示さなくてはいけませんでした。だから、「ビッグカンパニー」「ラージェストカンパニー」 を目指す心意気が大事というのは分かるが、最初から、トヨタのような大企業とは違う軸を狙ったわけです。
 その考えをはっきり示したのが 「グレートカンパニー」 というキーワードです。当社の名刺にもこの言葉を入れました。グレートとは、すなわち 「偉大」 という意味ですよね。「ビッグ=巨大」 ではないし、「ラージェスト=最大」 でもない。それらと違う軸で、「船井総研はすごい会社ですね。当社も見習って、御社のようになりたいです」 と他の企業から目標にされるようなアイデンティティを会社にもたらしたかった。問題は、それをどうやって社員に伝えて、モチベーションを上げて、彼らの目的にさせていくかです。
 
 
 
売上至上主義の考えでよいのであれば、単純に売上を伸ばし、数字を社員の目に触れさせてやればわかりやすい。しかし、世の中には年に12兆円も売り上げる 「ラージェストカンパニー」 がある。船井総研が独自の 「グレートカンパニー」 への道を歩むためにはどうすべきなのか。小山氏は、まず企業の概念を因数分解することから始めた。
 
 

企業を「因数分解」する

 
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東京本社エントランスの壁には実績を残した歴代の上席コンサルタントの
パネルが並ぶ。中でも小山氏は突出した業績をあげている (写真左上)。

 初めに、船井総研という会社を 「因数分解」 しました。すなわち 「グレートカンパニーを目指す会社がやるべきことは何か」 ということです。私は大学の数学科の卒業だから、どうも発想が数学的になってしまう(笑)。
 まず、船井総研が売上以外のどういう部分で 「グレート」 なのか。「グレート」 になれるのか。社員が楽しく仕事ができる、会社への帰属性がある、しつけ・マナーがよくできている、不況でも潰れない会社になっている・・・・・・ 目標として掲げられることがいっぱい出てきました。それを、先に話した6年の任期で創り上げることに決めて、目標の70%が達成されたら初めて 「グレートカンパニー」 を名乗ろうと考えたわけです。
 
 船井総研は不況下でもおかげさまで業績が伸びています。株価もリーマンショックの影響はあれど、前社長時代に比べて3.5倍くらいの水準で保てている。5億円程度の利益しか出ていなかった会社が、売上対営業利益率で23%。これは個人的にはいい数字だと思っているんですよ。幸いに、今は49億円の資金を活用できる状態にありますから、実質90億円くらいのお金の流れを改善できていることになります。うちの企業規模と業態で49億円の余剰資金があれば、大抵のことは怖くない。
 この経営背景をふまえたとき、先の 「因数分解」 で出た要素の何が上位に来るべきか。私はそれを見極めて、その年の社員研修会で全社員に宣言しました。
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 「リーマンショック後、これから3年間はとてつもない不景気になる可能性がある。しかし社員の給料は1銭も下げない!最悪の場合は数億円単位で補填してでも、社員に払うべきものはきっちり払う。だから今の49億円のうち、10億円から20億円は、皆さんの給料を払うために、使わないでとっておく」 と。
 なぜそんな宣言をしたか。会社にとって最も大事な財産は優秀な人材です。社員が世の景気に不安を持っていても、自分へ入ってくるお金の動きが明るければ、不安は払拭できます。これは、彼らが会社を辞めない大きな要因になります。
 もちろん業績が下がれば、ボーナスはそれなりに下げます。それがボーナスですから。でも、下げることだけ考えるわけじゃない。当初5億円だった利益予算を7億円にして、うまく8億円利益が出たとしましょう。すると余剰分の1億円はすっぱりと社員へのボーナスにあててやる。資本金5億円の会社が12億円の利益を予算設定して、達成したとしましょう。企業としては、資本金の倍以上の利益をあげたら、もうその上を欲張る必然はないんです。論理的に考えれば。さらに次の年に12億円から15億円まで行ったら、余剰利益分の3億円は内部保留せず、余計にボーナスを払って社員に還元してあげる。そうすれば社員は、自分たちの努力が実ったと思ってくれると思うのです。
 
 
 

 

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