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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

自らの資質に根ざした経営展開
Freshness Burger の先鋭の発想

 
 
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渋谷区富ヶ谷の第一号店

 ちょうどそんなときでした、フレッシュネスバーガーの1店舗目になる物件と出会ったのは。物件は渋谷区富ヶ谷の家の近くにありましたから、「ああ、あそこにボロの小屋があったな」と知ってはいたんです。それで不動産業者に「栗原さん、ここで何かできないですか?」と改めて薦められて物件を見たとき、私の中に何かが降りてきちゃったんですよ(笑)。 物件を見た瞬間に「ここでハンバーガーをやりたい!」と。何の根拠もなく、ハンバーガーショップの経験もなく、全くのインスピレーションでした。そのまま会社に戻らずに家に帰って、いきなり図面を描いて、メニューを考えて、その日のうちに形を作ってしまった。
 当時のハンバーガー業界はマクドナルドとロッテリアが “サンパチ戦争” という380円の価格帯をめぐる競争をしていました。メニュー構成も、高校生を購買層にできるまで購買者の年齢層を下げられていたんですね。でも私は、「どこに本当の価格があるんだ?」と疑問に思っていましたから、自分は “バーガーカフェ” をテーマにして大人のハンバーガーショップを作ろうと決めました。
 
 
――完全にインスピレーション先行で始まったハンバーガー事業で、栗原氏が最初にたどり着いたのは価格の問題だった。それだけではない。そもそもの資金、レシピ、パンやパティの仕入れの問題など、問題は山積していた。それをどうクリアしていくか。ここで、栗原氏のほっかほっか亭時代の冴えが蘇ってくる。
 
 

“四格の割り振り” を考えて嗜好分散に対応
 

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アメリカ本国のマクドナルドを視察。独自の店作りへの自信を深めた。

 どんなお客さんに来てもらって、従業員はどんな人たちで、どんなサービスをするか―― そのイメージは店舗を見た瞬間に頭の中に浮かんでいました。それを具体的に描き出して一晩で仕上げて、翌日は持っていたゴルフ会員権を全部売り払って資金を作りました。それからすぐに、ほっかほっか亭時代に懇意になった大工に話を持ち込んで、2~3週間、自分も一緒になって店を作りました。次は商品開発です。ジャガイモをごろごろ転がしておいて、生のポテトをその場で揚げる。パンは発注ロットの関係でどこも作ってくれませんでしたから自分で焼いて、パティも自分で作って・・・。マクドナルドもモスバーガーも最初の1店舗目はあったわけで、そこでは似たような手づくり体制でスタートしたはずです。 だったら、自分にできないわけがない。
 マックやモスが何を出しているかは、あえて意識しないようにしました。よそはよそ、うちはうち。それよりもお客さんが何を欲しているか、店でどんな行動をしているか、どうすれば喜んでもらえるかが発想の原点でした。最初は原価率100%でもよかった。店を増やせば原価は下がるのは経験して分かっていましたから、自分が努力して収益になれば、いずれ事業は軌道に乗ると思っていましたからね。
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 あとは “四格のバランス” をいかに構成するかを重視しました。四格とは、品格、人格、価格、店格という、商品と店舗の総合的なイメージを決める要素のことです。私はフレッシュネスの事業を始めてから、この四格のバランスの構成が、店舗を拡大していくにあたって非常に重要だということに気付いたのです。
 特に今は、消費者の嗜好が分散している時代でしょう? そうすると四格の構成が大きな鍵を握ります。「品格が高く・店格が低い」商品を求める人もいれば、「店格が高く・価格が低い」商品を求める人もいる。品格・人格・価格・店格のそれぞれが均等に適切に分けられているマス消費型の商品では全てのフランチャイズが成功するわけではないのは、そういった理由からだと私は考えています。
 ですから、冒頭で仮説を立てたとおり、同じ1000店舗を展開するのでも、200店舗を最大値として5つの異なる業態でブランドバンクとして展開したほうが、顧客の嗜好分散には適切に対応できるのです。
 
 だいいち、自分の資質を振り返っても、これは私の経営哲学に欠かせない発想なんです。子どもの頃からいろんな嗜好を持ち、だからこそ、それぞれ夢中になって打ち込んできた。その繰り返しが今日の私を形作ったのですからね。

 
(インタビュー 高橋正通 / 文 新田哲嗣 / 写真 田中正清) 
 
 
 
 
 会社概要 
株式会社 フレッシュネス
 本社所在地 
〒107-0062 東京都港区南青山2-13-10 青山ラピュタアネックスビル 5F
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