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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

異業種や現実の世界にも ゲームシナリオの活用を
合同会社東京物語工芸社 代表  加藤進幸

 
プロフィール (かとう のぶゆき)東京都出身。IT業界に就職し、SEとして活躍する一方、ゲーム業界でも働き始め、ゲームシナリオの設計を担うシナリオディレクターの経験を積む。創業メンバーとして現在も所属しているゲームデザイン企業、(有)ラムダ・プランニングへ勤務するかたわら2018年8月に(同)東京物語工芸社を設立。シナリオ作家チーム「インクブルー」のコーディネートから異業種へのシナリオの活用まで、幅広い事業を展開している。【ホームページ



ゲームに魅力的な世界観を設定し、登場キャラクターたちの複雑に入り組んだ関係や謎めいた過去を描くなど、プレーヤーの心をつかんで離さないゲームシナリオ。シナリオディレクター・加藤進幸代表率いる合同会社東京物語工芸社は、幾多のシナリオ作家チームを率いてきた経験を土台に新作ゲームや異業種へのゲーミフィケーションに意欲を燃やしている。バンタンゲームアカデミーの講師でもある、加藤代表にゲームシナリオの本質と可能性などを語ってもらった。
 
 
 

ゲーム脚本はプレーヤーを導くツアーガイド

 
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インタビュアー 水野裕子(タレント)
水野 東京物語工芸社ってユニークな社名ですね。ゲームシナリオの企画・制作が事業内容とうかがっています。文字どおり“物語”をつくられるのでしょうね。
 
加藤 はい。私はもともと一般のIT業界に就職し、システムエンジニアとして社会人のスタートを切りました。ただ、学生時代からゲーム業界とご縁があって、ネットワークゲームなどの設計やシナリオを書く仕事もやってきたんです。2019年現在、ゲームプランナーとして企業で働き続けるかたわら、ゲームシナリオに携わるスタッフの活躍の場を広げる目的で、東京物語工芸社を立ち上げました。私は企画に応じてシナリオを設計・進行・実装・運営する役、つまりシナリオディレクターとして関わっています。
 
水野 私もゲームをプレーするのは好きなので興味が湧きますね。ゲームのシナリオというのは、ゲーム自体とどのような関係にあるんですか?
 
加藤 デジタルゲームを例にお話しすると、まず、シナリオはゲームと乖離したものであってはいけません。あくまでそのゲームを遊んでもらうための導線であり、物語にワクワクしながらプレーするうちに自然と操作を覚えるもの。そして、操作が上達することによって、小説などのような“読むだけの物語”だったものが、ゲームという“自分の意志で自由に冒険できる世界”に変わる──そういう相乗効果が出るのが理想です。それが“デジタルゲームというサービス”の強みですからね。
 
水野 なるほど。物語単独でおもしろければ良いというものではないんだ。
 
加藤 幕間劇だけがおもしろくて「ゲームの部分はいらなかった」と言われたら、サービスとしては本末転倒です。ゲームシナリオはツアーガイドに似ているとよく言われます。その土地の見どころやおいしいものが順番に紹介されていって、それを体験することで初めての旅行者でも“旅の醍醐味”が味わえる。それはゲームも同じです。単に操作マニュアルを読んだだけでは、そのゲームの楽しさはわかりません。物語という疑似体験を通じてそのゲームの楽しさをビビッドに伝えることが、ゲームシナリオの使命と考えています。