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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

消防用設備業界の発展へ
プロ意識を磨いて挑む

 

いなくなってわかった父の偉大さ

 
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鈴木 優れた知識や技術を教えた相手が必ず変わるかと言えば、そうとも言い切れませんよ。相手が変わる瞬間にはいくつか要素があって、伝え方やコミュニケーションのとり方や、ちょっとした一言で変わります。コーチングや指導は理論ありきではなく、人ありき、相手ありきで行うべきだと思っています。理論ありきだと研究者になってしまいますからね(笑)。
 
松田 勉強になるなぁ。実は私は阪神ファンなので・・・巨人であまり良い選手を育て過ぎないでくださいね(笑)。
 
鈴木 代走一辺倒でやっていたときと違い、コーチは広い視野を持たなければなりません。一筋縄ではいかないと思います。
 
松田 視野を広く持つことは私も心がけています。消防法はたびたび改正があり、一般の人であれば見過ごすような改正でも、プロとしては確実に押さえておかねばなりません。そのため、業務が忙しくても同業者の組合には顔を出して情報収集するようにしているんです。同業者はライバルであり、同志でもありますから、業界全体で盛り上がっていきたいと思っています。
 
鈴木 他業種では、大手企業の独占が問題視されている業界もありますね。
 
松田 はい。どのような仕事であっても、お客様があってこそ成り立ちます。どこかの企業が一人勝ちすると利益主義に走り、サービスの質が低下してお客様に迷惑がかかるんです。逆に同業者間で切磋琢磨していればおのずとサービスの質も上がり、お客様の利益になります。私の父は組合の役員や理事、協会の会長などを長く務めており、その根底には業界全体を盛り上げたいという思いがあったのでしょう。父のそうした活動は業界内外に認められ、生前には黄綬褒章や旭日章をいただきました。
 
鈴木 黄綬褒章に旭日章! よほどの功績があったのですね。
 
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松田 その父が数ヶ月前に他界しました。これまで私は、父のことをライバル視していましたが、いなくなって父の偉大さに気付いたんです。先ほど申し上げたように、私は父の反対を押しきって、会社の業態を拡げてきました。その結果、売り上げも上がり、自分のしてきたことに自信を持っていたんです。でもそれは、父という後ろ盾があってこそできたこと。結局のところ、父に守られていたんだと今になって思います。
 
鈴木 僕も同じような経験があります。父は昔も今も、僕を褒めることや叱ることがありません。単に無関心なんだと思っていましたが、現役時代、故障で苦しんでいたときに、僕を叱咤激励する手紙をくれたんです。僕が助けを求めずとも、父は僕の苦しみを理解してくれているとわかって、一生父を超えられないなと思いました。