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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

住みよい空間作りを
大切にする設計事務所

 
 

住みよい空間づくりを
続けていきたい

 
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五十嵐 並木所長は、家づくりにどのようなこだわりを持っていらっしゃるのでしょうか。
 
並木 住みよい空間づくりをしていきたいですね。
 20代で設計事務所に勤めていた当時は、デザイン重視の家づくりをしていました。しかし30歳で独立した頃、有名な建築家が設計した家を見て回り、実際に住んでいる人たちの話を聞いてみたのです。すると、ほとんどの人が 「実は住みづらい」 と言うのです。芸術家なら自分の好きなデザインで作ればいいと思いますが、建築家にはクライアントがいるのだから、自分の我儘で作っていていいのかどうか、考えてしまいました。
 
五十嵐 いくらカッコよくても、住みにくい家だと困りますよね。
 
並木 はい。クライアントが 「この建築家に好きなように作ってもらいたい」 というのならそれでもいいですが、ほとんどの方はそうじゃないわけです。実際に住む人に 「こういう家が欲しい」 という夢がある以上、我々建築士が 「これのほうがいいです」 と押しつけてお金をいただくというのには、疑問を感じます。
 
五十嵐 家はデザインよりも住み心地が大切。確かにその通りだと思います。
 
並木 シンプルで何もなくても住みよい空間、心地良い空間というものが作れるといいですね。最近は、若手の建築家の中にもそういう考えを追求している人が、たくさん出てきていますよ。
 
 

理想は1年に1棟ペース
こだわりぬいた家を設計したい

 
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五十嵐 並木所長の、仕事に取り組むスタンスを教えてください。
 
並木 時間をかけて1年に1棟のペースで設計できれば理想ですが、なかなか理想通りにはいかないですよね(笑)。中には1棟に3年かける家もありますが、施主さんがそんなに長い時間待てるかを考えると、かなり特殊な例です。
 しかも、大手住宅メーカーの家なら、パターン化されているので図面が数枚で済むところを、私が設計すると50枚から100枚も図面が必要になる場合もあります。当然、コストが上がってしまうので、どうやってコストを下げるか施主さんと十分に話し合う必要もあります。
 そうやって長い時間をかけて家を造っても、私の仕事量を時給換算すると、コンビニでアルバイトをしたほうがよほどいい、ということもあり得ます。仕事としてそんなスタンスでいいのかどうか、我ながらよく分からないです(笑)。
 
五十嵐 そこまで家づくりに情熱を注ぐ並木所長にとって、"仕事を楽しむ"コツというのは何でしょうか。
 
並木 建築士って、私も含めて、趣味をそのまま仕事にした感じの人が多いんですよね。根を詰める仕事だから、そうでないと続けていかれない面もある。ですから一番いいのは別の仕事で生活費を稼いで、設計は趣味にすることです。まあ、なかなかそうはいかないですが(笑)。
 有名な建築家ならともかく、名前の通っていない建築家が好きな仕事だけしていたら食べていけません。だから皆いろいろな仕事をやっています。それが普通なので、それでいいとか悪いとかいうことではないと思います。私の場合、もし宝くじが当たったら、ピンと来ない仕事は全部やめて、好きな設計だけ夢中になってやっていると思いますよ(笑)。