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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

 
プロフィール 東京都八王子市出身。大工の棟梁の家に生まれ、職人たちの雰囲気に包まれて育つ。高校からは陸上競技に打ちこみ、大学卒業時にはホノルルマラソンにも参加した。大学での専攻は建築学。24歳で二級建築士資格を取得。建築事務所に勤め、一級建築士となり30歳で独立。以来、居住性とデザイン性の高度なバランスを実現する住宅を設計し、施主をはじめ工務店や建設会社から高い評価を得ている。
 
 
 
東京・八王子の設計事務所、有限会社エヌプランシステム代表取締役の並木靖典氏は、CADによる設計が当たり前となった今でも手描きの図面にこだわる建築士だ。デザインに偏重せず、あくまでもシンプルで住みよい空間作りを目指す並木氏の設計は、住む人に喜んでほしいという顧客重視の姿勢から来ている。1軒の家のために100枚もの図面を描き、自分の利益を犠牲にすることもいとわない。そんな並木氏の、仕事にかける情熱に迫った。
 
 
 

手描きの図面が名刺代わり

 
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インタビュアー 五十嵐めぐみ(女優)

五十嵐 本日はよろしくお願いします。並木所長の一級建築士事務所「エヌプランシステム」には、スタッフは何名いらっしゃるのですか。
 
並木 外で手伝ってくれるスタッフは何人かいるのですが、社員は置かずに私一人で身軽にやっています。
 社員がいると、給料を払うためにたくさん仕事をしなければいけなくなりますよね。そうしないと会社として回っていかないのですが、本当にやりがいのある面白い仕事って、そんなに多くはないんですよ。5年くらい前までは社員がいたのですが、忘年会の席で 「今年は何を設計したのかな」 と話してみたら、ロクなものを作ってないことに気づいて、「これからは自分のやりたいことをやろう」 と体制を一度清算しました。忙しいときには、外のスタッフにCADの作業だけ手伝ってもらいます。私の図面は手描きなので。
 
五十嵐 手描きですか! 今では珍しいのではないですか?
 
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並木 そうですね。ビルの図面などは設備や耐震構造の関係もあり、CADで設計しなければ無理ですが、住宅の場合は全部手描きでもできるのです。
 私はもともと、CADをかなり早い時期に導入した一級建築士で、当時は同業者がたくさん見学に来たものです。でも、そのCADを早いうちにやめてしまったのも私なんですよ(笑)。工務店や建設会社さんでも、たまにCADで描いた図面を持って行くと、「並木さんの図面は手描きじゃないと。手描きでくださいよ」 とリクエストされることもあります。今では、手描きであることが私の何よりの特長になっていますね。