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ビジネス 企業が取り組むべき新型インフルエンザ対策とは vol.1 BCPにおける位置づけ 企業が取り組むべき新型インフルエンザ対策とは ジャーナリスト

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第1回 新型インフルエンザ対策は
BCP(事業継続計画)の中に位置づけよ

  

新型インフルエンザ対策はBCPの中に位置づける

 
 とはいえ、新型インフルエンザはこれまで誰も経験したことのないリスクなので、企業トップも、重大なリスクと理解しつつも、どこから手をつけ、どこまでやったらいいかわからない状態にあるのではないだろうか。新型インフルエンザ対策を考える際、単なる対策ではなく、企業の事業継続計画(BCP=Business Continuity Plan)の中にしっかり位置づけて考えることが重要である。
 地震、台風、水害などの自然災害や、火災、爆発など事故災害、さらに情報システム障害など、企業のまわりには事業の継続を脅かすさまざまなリスクが潜んでいる。新型インフルエンザもその一つである。リスクへの対応を怠って事業停止を招いてしまえば、利益損失だけでなく、取引先や顧客を失って企業の存続そのものが危ぶまれる事態に陥ってしまう。そのような背景から、ここ数年、大企業を中心にBCPが注目を浴びているのである。
 事業がストップすることで国民生活に重大な影響を及ぼす業種の企業(電力会社など生活インフラ関連企業)は、新型インフルエンザに関係なく以前からBCP策定に取り組んできた。そうでない業種の企業、中堅・中小企業でBCPの策定がどこまで進んでいるのかというと、これがかなりお寒い状況なのである。
 中堅のBCPコンサルティング会社のトップA氏は次のように語る。
「上場企業においては、策定ずみ、もしくは現在策定中というところが3割。残りのほとんどは、株主総会にマニュアルだけ間に合わせたい、BS25999関連の文書だけそろえたい、IT部門だけ取り組みたいといった状況で、十分に機能するBCPになっていません。模擬訓練を滞りなく行えるのは100社に満たない。新興企業やベンチャー企業もほとんど手がつけられておらず、中堅・中小企業レベルとなると、言葉は知っているがどこから手をつけていいか分からない、どこまでやればいいか分からないというのが現状。現時点では、経営者の今後数年間のロードマップの中に入っていないのが実情です」
 
 
 
 

中堅・中小企業も、まずはBCPの策定を

 
 中小企業にBCP策定をすすめようと、国や自治体などからさまざまなガイドラインが出されている。例えば、経済産業省の「事業継続計計画策定ガイドブック」、内閣府の「事業継続計画ガイドライン」、中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」「中小企業BCPガイド」など。特定営利活動法人・事業継続推進機構(BCAO)からは「企業を守る災害対策・事業継続のすすめ」というガイドラインが出されている。東京都をはじめ地方自治体も、地域にBCPを普及させるためのガイドラインを出している。
 これらの中でもっとも実践に役立ちそうに思えたのが、昨年3月に愛知県が出した「あいちBCPモデル」だった。使いやすいものにすることに重点を置き、規模が大きな会社向けの「標準版」と、小規模の会社向けに最低限のものを入れ込んだ「コンパクト版」がある。従来のものはマニュアルとテンプレート主体が多いのに対し、愛知県印刷工業組合や地元の商店街の意見をモデルに反映させたり、BCP策定に参考となる事例を記載した「BCP取り組み事例集」など、初めてBCPに接する人にもわかりやすくまとめられている。
 では、こうしたガイドラインを参考にして、自社で使えるBCPを策定できるのだろうか。前述のA氏は、「とりあえずBCPを作りたいというなら、これらのガイドラインを参考にして自社で作ることもできる。ただ、最低限のことしか盛り込まれていないので、『使えるBCP』にするには改善、充実、訓練が必要となる」と指摘している。
 
 
 

 

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