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 これまで2回にわたり、新型インフルエンザ対策を企業の事業継続計画 (BCP=Business Continuity Plan)の中に位置づけることの大切さ、企業がどのように対応したか、会社トップがとるべき対策、などについて述べてきた。
 今回は、新型インフルエンザ対策を実際にBCPの中にどう位置づけ、何から手をつけ、どこまでやったらいいかについて述べてみたい。 
 
 
 

とりあえず業務やサービスの停止は免れたが・・・・

 
 まず、春先からここまでの新型インフルエンザ騒動を振り返ってみる。
 当初、政府や自治体、企業は強毒性の鳥インフルエンザ(H5N1型)への対応を考えていたが、弱毒性だったため、WHOがフェーズ6のパンデミック宣言をしても、具体的な対策を発動しづらいなどのとまどいがあった。BCPを策定するときのリスクシナリオはすべてのケースを想定して考えるわけではなく、具体的なイメージをもって作るものである。想定したことが起きなければ、リスクシナリオ自体が崩れてしまう。想定したものよりひどい状態なのか、あるいは軽いのかを判断した上で、対策はそのままでいいか、もう少し違う対応をするのかをその場で考えなければならなかった。
 BCPを策定済みの大手銀行などでは、新型インフルエンザが発症した時点で迅速に社内ルールを決め、弱毒性とわかった時点で季節性のインフルエンザと同じ扱いにすると意志決定した。そのようなBCP先進企業の流れを見て、いろいろな企業が初期初動対応をどうするかを決めていったようだ。
 当初、対応が混乱したのは、想定していたほど毒性が強くなかったにもかかわらず、自宅待機などの措置をとってしまった企業が出たためだ。会社としては、一度振り上げた手をすぐには下ろせない。しかも、日々状況が変わるので、昨日出したばかりの通達を今日変更しなければならないという事態も見られた。政府や自治体の発表を、自社の判断材料として使うにも隔たりが大きすぎた。1億人を守ろうとする政府と1企業とでは、新型インフルエンザに対する対応は異なったものになるからだ。
 同じ部署の中で、子どもが感染したために社員が何人も休んで抜けてしまい、対応に苦しんだというケースも見られた。しかし、自宅待機、在宅勤務といっても、実際に通信インフラや自宅で仕事ができるネット環境が整っているところは多くなく、自宅にいたとしてもほとんど何もすることができなかったのではないか。
 
 
 

厚労省は季節性インフルエンザにシフトダウン?

 
 最近の新型インフルエンザに関する報道を見ると、ワクチンの接種回数や副作用などについての情報が主となっている。当初の接種案は鳥インフルエンザを想定していたので、接種の目的は健康被害の防止と社会・経済機能の破綻を防ぐことだった。危機管理の観点からも、医療従事者や警官、介護職員などがワクチンの優先接種対象者にあげられていた。ところが、感染状況を見て政府が2009年9月に出した接種計画(厚生労働省の「都道府県・市町村によるワクチン接種に関する相談窓口及びホームページURL」)によると、接種目的の項目から「社会機能の維持」が外れ、患者の重症化や死亡の防止が目的となった。インフルエンザの治療に直接携わる医療従事者以外の職種は優先接種の対象から外れてしまったのだ。つまり、厚労省は季節性のインフルエンザと同等の扱いにしているのである。
 
 
 
 

企業が取り組むべき新型インフルエンザ対策とは 古俣愼吾 

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