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リクルートの在宅勤務から

 
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上海・蘇州・北京を回った出張中、現地にて
皆さんこんにちは。佐藤勝人です。前回は勝人流・移民受け入れ論から展開して、「日本ならではのクリエイティブが生まれるんじゃないか」という話をしました。クリエイティブに収束する意味ではこれも同じ流れかもしれない。というわけで、今回は「リクルート社が全社員を対象に10月から在宅勤務を導入」という、あのニュースから。
 
報道によると、対象人数は2000人だそうです。2000だよ!? 3人や4人じゃないよ!? また、リクルートさんがやるというのが象徴的です。成功するか失敗するかはともかく、今回の試みは「労働」に対する日本人のこれまでの考え方が変わるきっかけになるんじゃないか。
 
従来の日本企業の労働管理は、私が言うところの「メーカー型」でした。社員を毎日同じ時刻に、同じ場所に集まらせて、何時間働いたかで評価・管理していた。これも確かに一面では正解だったんです。経営者はとにかく人の生産性を上げたいわけだ。大手は人件費がかさむから特にそう。するとどうするか。遊んでる社員をなくす方向に発想するんだね。有能な社員の割合を増やすよりもね。だから業務をできるだけ標準化して、どんな社員でも決まった時間勤務すれば平均的な成果が出る仕組みにして、「人数×会社に来てる時間」で管理してきた。投入資本あたりの生産性が正確に計算できると事業戦略上有利です。従来型の日本企業の強みはそこにあったわけです。
 
いっぽうで今回の在宅勤務。ニュースから私が連想したのは、吉本興業の「住みます芸人」でした。大阪や東京でパッとしない芸人を地元に帰らせて、ようは在宅勤務をさせて、仕事も自分で、地元で取れっていう趣旨のプロジェクト。栃木にも住みます芸人がいたから話を聞いたのよ。そうしたら、やっぱりキツイってね(笑)。すごく自分が試されるって。そりゃそうだよ。情報発信も売り込みも全部自分でやるんだから。でも、そうやって自分発で動くうちに、感覚が変わってきたそうです。「東京でバイトしながら続けてた頃は、芸人での成功は宝くじにあたるかどうかみたいな感覚だった。でも今は、真面目にやってたら官公庁とも繋がりができてくるし、自分で努力したぶん社会での居場所を広げられる」ってね。なるほどな~って思いました。
 
やっぱり日本人の働き方とか「労働」の考え方は、これから全体的にセルフマネジメント寄りになるんだと思います。雇う側は「あなたの働きは正味こうだから、報酬はこうです」。雇われる側も「自分の働きは正味こうだから、給料はこうだな」。お互いが労働の対価を正味で考えるようになる。少なくとも知識労働は確実にそうなる。リクルートさんは以前から雇用や労務管理の面で先進的な企業だから、全部見越して仕掛けてる気がしますね。たぶん今後、社内でフリーランス的な雇用形態になる人が増えますよ。在宅で短時間で業務を終わらせて他社の仕事も請ける人や、業務を早く終えて浮かせた時間をスキルアップの勉強にあてる人が出てくるだろうから。
 
いずれにしても、成長意欲旺盛で優秀な社員とそうでない社員が、結果的にふるい分けられてくるでしょう。愛社精神とか会社への忠誠心とかも変わってくると思います。そういえば今年7月にリクルートさんでセミナーをやった時に、幹部の方が言ってました。「佐藤さん、リクルートは社員に『会社のために働くな』と教育するんです」って。なぜって私が聞いたら、「社員の隠ぺいとか不祥事は会社のために働くから起きるんです。会社に良かれと思ってやるんです」って。それよりは、会社で働くリスクもメリットも自分本位で考えるぐらい優秀な人間に来てほしいんだって。シビレますよね。
 
 
五輪エンブレム問題」に学ぶ
 
リクエストに応じてこの話題にも触れておこう。すでに各分野の識者や先生方から様々な意見が出ていますが、一商業者の目で言うとしたら、確か今回、公募主つまりクライアントである東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が採用作へ出した対価は、賞金・制作料・著作権譲渡料として100万円だ。これは単純に、安すぎなかったか???
 
もちろん、今後の仕事全般に“東京五輪のエンブレムをデザインした”という箔がつくことは、そのクリエイターにとって大きなメリットだろう。それを見越してかどうか、委員会はクライアントとして100万円を提示した。門外漢であることは承知のうえで、キリがいいという以外に、この額にした理由が想像できない。そして実際その通りだったら、事業者をあまりにもナメた話だ。
 
個人事業主にせよ法人企業にせよ、自社の商品やサービスを出すにあたっては適正価格を見積もる。逆に言えば、価格があらかじめ固定されて動かなければ額に応じた仕事を納めるのが普通だ。採用不採用はクライアントが判断すること。選んだのは主催者であり、何で選ばれたほうがぐちゃぐちゃ言われなきゃならないのか。今回の件が盗用にあたるのか、あたるとして当人にその意識があったのか、あってもなくても全体として対応がどうかといったことを論じる立場に私はないし、採用が白紙撤回された今となってはなおさら、クリエイター当人について言うことは何もない。だが、組織委員会が案件の価値を正しく評価・価格設定できていたかについては、一商業者として疑問を感じざるを得ない。もっと高額を提示して世界中から優れた作品を募っていれば、状況は違っていたのではないか?
 
「名誉料込みでこの額でどうでしょう」――そんな仕事をしていても発展はない。もうそんな時代ではないのだ。我々はそのことを学ぶべきだ。
 
 
 
佐藤勝人の 儲けてみっぺ
vol.5 セルフマネジメントの行方

 著者プロフィール  

佐藤 勝人 Katsuhito Sato

サトーカメラ株式会社・代表取締役専務/佐藤商貿(上海)有限公司・総経理/日本販売促進研究所・経営コンサルタント/作新学院大学・客員教授

 経 歴  

1964年栃木県宇都宮市生まれ。1988年、兄弟とともに家業のカメラ店をカメラ専門チェーン店に業態転換させ、商圏をあえて栃木県内に絞ることにより、大手に負けない経営の差別化を図った。以来、「想い出をキレイに一生残すために」というコンセプトを追求し続けて県内に18店舗を展開。同時におちこぼれ社員たちを再生させる手腕にも評価が高まり、全国から経営者や幹部リーダーたちが同社を視察に訪れている。2015年からはキャノン中国とコンサルティング契約を結び、現場の人材育成の指導にあたる。主な著書に『売れない時代はチラシで売れ』『エキサイティングに売れ』(以上同文館出版)『日本でいちばん楽しそうな社員たち』(アスコム)『一点集中で中小店は必ず勝てる』(商業界)など。

 オフィシャルサイト 

http://satokatsuhito.com/

 オフィシャルフェイスブック 

https://www.facebook.com/katsuhito.sato.3?fref=ts

 サトーカメラオフィシャルサイト 

http://satocame.com/

 
(2015.9.9)
 
 
 
 

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