オタク目線の発想で、そのニーズに応える商品やサービス提供企業を取り上げる本連載。第3回は、100円ショップ「Seria」を運営する株式会社セリアに着目しました。誰もが知る大手100円ショップチェーンとオタクに、どんな関係性が？　そう思った人も少なくないでしょう。
 
実は最近、Seriaが「私たちの心をわかりすぎている！」とオタク界隈をザワつかせているのです。実際、「Seria　オタク」で検索すると「オタクの味方」「オタクは行くしかない」といった声が次々とヒット。それもそのはず、二次元オタクやアイドルオタクの必携品とされる写真系グッズをピッタリ収納できるケースをはじめ、そのケースをデコレーションするための専用ステッカー、缶バッジ専用カバー、推しの写真を使ったキーホルダーの自作キットなどなど･･･最早オタク専門店といっても過言ではないほど、推し活に役立つ商品が目白押しなのだとか。大事な推しグッズを便利に保管できるものから、独自の推し活アイテムをつくれるものまでわずか100円で手に入るとあって、オタクの心を鷲掴みにしているSeria。しかしなぜ、100円ショップチェーンが推し活商品の販売を？　同社の担当バイヤーの方に、話を聞いてみました！

同社が推し活向けというカテゴリで商品販売を始めたのは2019年頃。きっかけは、一般向けに展開していた文房具やクラフト手芸用商品を駆使して推し活グッズを自作したり、DIY用商品を使ってグッズやCDなどを飾る「推し部屋」をつくったりするオタクが増えたことにあるといいます。特段オタクのためではなかったのに、彼らのアイデアであらゆる商品が“推し活向け”と化す様子を目の当たりにし、「それなら推し活向けのカテゴリに挑戦してみてもいいのでは」と、オタク市場へ乗り込むことになったのだそう。

気になる商品企画開発については、メーカー側がオタク間の流行やニーズを調べ、大枠の商品概要を同社へ提案する場合のほか、オタクからの「こんな商品が欲しい」という問い合わせを受け、100円で販売できる仕様に収められるよう同社がメーカーとすり合わせを行うことも。さらにバイヤーがこれまでの販売実績やノウハウを活かし、一から企画開発に携わることも少なくありません。「オタク間の流行は移り変わりが激しい」という実情を考慮し、売り場には月平均約10～20点と早いペースで新商品を陳列。日々アップデートされるオタク界のトレンドを取りこぼさないよう、「ある商品に対してどの程度購入があったかを明確にし、なぜ売れたのか考え、それをもとに次にどんなアプローチができるか考えている」といいます。

ただ、今回取材に答えてくれたバイヤーの方は「アニメや漫画を見ることはあっても弊社で取り扱っているような推し活商品を使うほどではない」とのこと。どちらかといえば非オタのバイヤーにとっては、オタクの心を掴む商品を考案するのは苦労も多いはず。それでも｢消費者様の気持ちを考える｣ことでアイデアが湧き出てくるといいます。「この仕事が成り立つのは購入してくださる消費者の方がいるからこそ。ターゲット層に合わせてどんなものをつくれば喜んでいただけるのか、その勉強の積み重ねが大事だと思います」。
 
そんな同社のバイヤーによるその商品づくりの極意は、「オタク全員が負担なく推し活を楽しめるものをつくる」こと。代表的な商品の一つに、「推し活貯金箱」があります。日々怒涛のグッズ供給に追われ、推しのためにCDやDVDを山ほど“積む”オタクの懐は、当然余裕があるとはいえません。「それならお金を貯めたくなるものをつくろう」と生まれたのが、この推し活貯金箱。透明なボックスにB8サイズの硬質カードケースが入れられる仕様で、推しの写真をながめながらお金が貯められるようになっています。まさに「推しの顔を見ていると貢ぎたくなる」というオタクの性を逆手に取った、画期的なアイテム！　同じくオタク界隈を賑わせているのが、「オリジナルボールペン」。流行りの推し活グッズづくりに挑戦したいし、大切な推しを彩るあれこれは自分自身で手がけたいもの。でも、材料をそろえるのは大変だしそもそも材料費がかさむと手が出ない･･･。そんなオタクのためにお金を費やしすぎずに自作を楽しめる商品はつくれないかと、考案されたそうです。台紙に沿って巻き付けたい素材を切るだけと簡単なのも、手作業に自信のないオタクには嬉しい！ 商品の企画開発に留まらず、国外に活動拠点を置く推しを応援するオタクのために、既存の収納系商品を海外製グッズに合わせた寸法に改良したり、海外市場にしか出回っていなかったトレカスリーブなどのリサーチを行ったりと、全オタクのニーズを叶えるべくさまざまなアプローチを行っている同社バイヤーの皆さん。今回話を聞いたバイヤーの方は、100点を超える商品に携わってきたといいます。Seriaが「オタクが行くしかない」場所と称されているほどの品ぞろえを誇っているのは、同社バイヤーの「お客様のことを知ろうとする努力」の賜物なのです。

何でもそろう100円ショップだから選ぶ楽しさを提供できる

（取材：2022年4月） 株式会社セリア
https://www.seria-group.com
 
本社
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〒503-0934
岐阜県大垣市外渕2丁目38番地