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西友のペラ袋が消える?

 
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hirost / PIXTA
あと約一ヶ月後、7月1日から全国で一斉にレジ袋が有料化される。「スーパーのレジ袋が」とつい言いそうになるがそうではない。業態がスーパーであれ何であれ、商品を持って帰る用に店がくれるプラスチック製の袋全般が対象だからだ。より厳密には、経産省と環境省が定めた「プラスチック製買物袋有料化実施ガイドライン」では、「購入した商品を持ち運ぶために用いる、持ち手のついたプラスチック製の買い物袋」となっている(例外規定あり)。
 
同語反復みたいな説明をあえてするのは、客が持って帰るものは商品とは限らないからだ。たとえばクリーニング店で仕上がったワイシャツを袋に入れてもらって持ち帰る、あれは店が提供する「役務」を入れているのであって、「商品」が入っているのではないから有料化の義務はない。店は無償で客にあげてよい。
 
富山県をはじめ、自治体レベルでは国に先駆けて全面有料化している地域もあるが、今回の有料化の「義務化」は平成6年施行の「環境基本法」に基づく国の「循環型社会形成推進基本計画」からの、「プラスチック資源循環戦略」によるものだ。各省の省令が根拠だから、うっかり客にタダで袋をあげると店は省令違反になる。西友でレジに並ぶとセルフで、無料でもらえるペラペラの袋が吊ってあるが、あれはなくなるものと心得よう。
 
また、コンビニの袋も有料になる。日本フランチャイズチェーン協会の統計調査月報*1によると、今年2月度の来店客数は業界全体で13億3348万人。紙幅の都合上途中の計算は省略するが、7月はコロナも落ち着いて客足が戻る想定で仮に一枚3円でレジ袋を売ると概算で9億3000万円ちょっとの利益が出る。うち4割がセブン、2割5分がファミマ、2割がローソンだ。
 
月々のそのボーナスが、まるっとそれぞれの店に入るなら地域の利用客も納得するだろうが、本部はロイヤリティぶんは当然取るだろう。世知辛い話だが、コンビニ各社のレジ袋代の設定も気になるところではある。
 
 

券売機の行方とエコポイント

 
とはいえ本稿はレジ袋商売のシミュレーションをしたいのではない。レジ袋有料化が義務になることで店や企業はどんな対応を迫られるのか。運用の実際を知りたいのだ。
 
先述の「有料化実施ガイドライン」を見ると、例えば「3.有料化のあり方について」には、「袋を提供しないことと引き替えに商品価格を値引くことや、ポイントを付与すること、その他の利益供与を行うことはここでいう有料化に含まない」とある。
 
飲食店が料理をテイクアウトで売るときはレジ袋の値段を明示し、かつ、ほとんどの店は袋代込みで――料理と袋が一体となった商品という前提で――商品価格を提示しているだろうから、客が袋をいらないと言えばそのぶんは値引きしないといけなくなる。800円で生姜焼き弁当を売っていて袋を辞退されたら798円で会計し直すというようなことだ。
 
飲食店のレジ袋に関しては他にも、1974年から続く外食産業の団体である「日本フードサービス協会」が、環境省による「レジ袋有料化検討小委員会」第2回で意見書*2を提出し、食券制の店は発券が10円単位だから袋代が10円になってしまって消費者の理解が得られない、と悩みを吐露した。
 
法の制度だから細かいところで現実と合わない部分が出るのは当然といえば当然だが、いずれも面妖な問題だ。いっぽうで、スーパーやドラッグストアで会計するときに袋を辞退すると付いてくるエコポイントに関しては、辞退した袋の価格は購入商品と一体ではないから7月からも残るようで、世知辛い中でホッとする話である。
 
 

資源循環の本丸はどこか

 
資源ないし環境問題で「脱プラ」を論じる際、レジ袋はやり玉に上がりやすい。今回の有料化に関していえば、経産省の担当者いわく、「生活に直結し、エコバッグで代替でき、第一歩の取り組みとしてふさわしいと考えたから」*3義務化したとのことで、スケープゴートとまでは言わないが、いわば象徴的な意味合いのようだ。
 
いっぽうで「資源循環」という大元の狙いに照らすなら、レジ袋利用量の削減(Reduce)よりも、いわゆる3Rのあと二つ、「Reuse」と「Recycle」のほうがより重要だ。小欄は昨年5月にも「「脱プラ論」の周辺 ~国の産業戦略の視点から~」という記事でこの点について取り上げた。鼻に詰まったストローを抜いてもらうウミガメの動画とともに「海洋プラごみ」の問題が世界中で注目された時期だった。
 
海洋プラごみに限らず、プラスチックの環境流出を減らし、資源として循環させることが正しいことは間違いない。日本のプラスチック容器包装のリサイクル率は2007年時点で約50%だ*4。一般的なリサイクルと混同するからという理由で批難されるサーマルリサイクル(熱回収)を含めても、半分がまだリサイクルされていない。これを100%に持って行くことが当面の課題であるだろう。
 
そしてその際は、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルに注力してはどうだろう。マテリアルリサイクルに関しては、回収率91.5%、リサイクル率84.6%という我が国のPETボトルリサイクルの実績*5からして、「分別収集の精緻化→高度選別→高品質な再生材」という理想の流れは、実現できなくはないと思う。
 
ケミカルリサイクルに関しては、現在リサイクル率は4%にとどまり、それも高炉原料化とコークス炉化学原料化が大半を占めている。世界では混合プラスチックを再資源化できるガス化および油化技術へと開発競争の舞台が移っており、それらでリードすることが国際戦略上も有効なようだ*6
 
またサーマルリサイクルに関しては、廃プラスチックの処理システムが未整備なアジア諸国に向けて、社会インフラを整備するための知見とセットで輸出すれば、きっと喜ばれるに違いない。
 
 

お店の「ニューノーマル」に共感を

 
ともあれレジ袋有料化問題である。筆者の個人的な意見としては、飲食店、特に個店は、有料化義務を免除してあげてはどうかと思う。店主はただでさえ不本意な気持ちでテイクアウトへの転換を強いられ、客を店内に迎え入れることができない寂しさを感じているのに、来てくれた常連客に向けて「レジ袋代頂戴します」と示させるのはいかがなものか。
 
7月には飲食店もだいぶ再開しているだろうが、以前ほど席を詰められないことを考えると、テイクアウトを続けて売り上げを補填しようとする店は多いだろう。いわばこれもafterコロナの「ニューノーマル」なわけで、であればこそ、国の制度もそれらの店に共感を寄せつつ、現場感覚に即した柔軟な運用を許してあげてほしい。
 
今回新たにテイクアウトやデリバリーを始めた飲食店には自治体からも助成金が出ている*7。販促費、配達車両代、レジ袋など備品代、etc・・・。「全部これで買っちゃって!」と、一納税者としても言ってあげたい。
 
 
 
*1 「2020年2月度 コンビニエンスストア統計調査月報
*2 「プラスチック製買物袋 有料化義務化についての意見
*3 『流通ニュース』(2020年5月4日)
*4 日本容器包装リサイクル協会「平成19年度 欧州のプラスチック製容器包装リサイクル
*5 PETボトルリサイクル推進協議会「日米欧のリサイクル状況比較」
*6 日本政策投資銀行「我が国におけるプラスチック資源循環ビジネスのフロンティア」
*7 例;東京都中小企業振興公社「業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)事業」
 
(ライター 筒井秀礼)
 
(2020.6.3)
 
 

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