市場原理主義に踊らされず
真の価値観を見つけるために
一人ひとりが真の価値観を取り戻せ

皆がおとなしくなってしまったのは、簡単に言えば、政治や企業が人の心を制御している「統制社会」となってしまったからです。原発の反対運動で、15万人もの人が国会周辺に集まり、沖縄じゃ10万人がオスプレイ配備反対に集まったというのに、何も起きない。60年代の安保闘争の時代から、人々の間ではしっかりムーブメントは起こっていたんです。しかし、マスコミはその動きを黙殺し、リジェクト、です。改新だ維新だと口先で言ってる政治屋たちも独裁と断行をやらかすだけで、まったく信用ならない。企業や政治家たちは、今あるもの、権益と自惚れプライドを壊されたくないから、そういった人々のエネルギーを追い出し拒否し、統制する。先ほどから「市場原理主義」を連呼していますが、原理主義者というのは、絶対的にその原理にかじりついて離れないという意味です。
では、こんな世の中で、どのように生きていくべきかという話になりますが、大きく世の中を変えることはできないかもしれないけれど、個人レベルで良いから価値を見極めることです。新しいモノだけが優れているわけではなく、決して仕分けをしろと言っているわけでもありません。伝統的に残っているものには間違いなく価値があるし、それをないがしろにする必要はない。そして、新しく生まれるモノを監視する目利きをしてくれます。そもそも、日本の産業が空洞化し、アジア諸国にそのステイタスさえ脅かされているのも、この市場原理が働いた結果でしょう。モノづくり産業も利益も外に流れ出ていってしまった。決して感傷的なナショナリズムを掲げるつもりはないですが、僕はメイド・イン・ジャパンのパソコンを、値段が高くても購入してます。全く壊れないんだから(笑)。要するに市場原理を追うしかない新資本主義などというマヤカシから脱却し、自分の物差しで判断すべきだということです。
社会の嘘を見抜くことも必要です。たとえば、企業が掲げるCSRも無理だらけだと思います。なぜなら市場原理主義と社会貢献の両方を同時に実行できるわけがないからです。環境を配慮したエコ製品を製造する工場では、大量のCo2を排出しているし、相当量の電力を使用する。そうなればまた原発も稼働させる。そんな矛盾が生ずるものを、単純に信用すべきではないし、人権の擁護も地域貢献も同じです。どれだけリストラしたら気が済むのかと思います。それは一人ひとりの価値観が変わっていけば、少しずつだけど、消費者の要望と動向に向き合い直せば、企業も変わっていく。そして、世の中が少しずつ変わっていくかもしれません。
市井の徒の本質がしっかり描かれた作品

この作品は今から20年前に描かれたものですが、残念ながら、最近ではこれほど骨のある作品を書く作家らしい作家がいないと感じてます。80年代以降、まったくリアリティが感じられず、辻褄の合わない小説ばかりが世の中にあふれ始めたころに、高村薫さんが登場し、鮮烈な印象を受けました。この原作の胸を借り、素晴らしい役者たちと共に心臓が高鳴る仕上がりになったことに感謝しつつ、この孤高の無頼漢たちの大奮闘ぶりにつき合って貰えたら嬉しいですね。和製フィルムノワール(暗黒映画)ってところですか。
「黄金を抱いて翔べ」
(c)2012「黄金を抱いて翔べ」製作委員会
11月3日(土)全国ロードショー
原作 髙村薫『黄金を抱いて翔べ』 (新潮文庫刊)
監督 井筒和幸
脚本 吉田康弘、井筒和幸
主題歌 安室奈美恵「Damage」(avex trax)
出演 妻夫木聡、浅野忠信、桐谷健太、溝端淳平、チャンミン(東方神起)、西田敏行
製作 エイベックス・エンタテインメントほか
配給 松竹
公式サイト http://www.ougon-movie.jp/
