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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

探求心が育てた有機野菜
都市農業の生き方伝える

 

有名シェフの高評価で飲食から引き合い殺到

 
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亀山 経営者としてのお父さまはどんな方でしたか?
 
池上 祖父と違って父は商売に精を出すより、野菜をつくることに力を注ぐとともに、地域の非農家の皆さんとの交流も大切にしていましたね。この姿勢も、私が野菜づくり以外で父から学んだことの一つです。また、父の代にはトマトを大量につくっていた時代もありました。私が引き継いだ頃は軟弱野菜、中でもこまつなの大量生産をしていましたが、私たちが有機栽培――オーガニックを導入することにもすぐに賛同してくれ、応援してくれたんですよ。
 
亀山 オーガニックですか! あらためて、現在の池上農園さんでとれる野菜を、いくつかご紹介いただけますか?
 
池上 ここにあるのが、昨日収穫した、かぼちゃの一種であるバターナッツです。これから出荷が本格化するビーツやオクラ、ケール、空心菜の名前で知られるエンサイ、こまつなもありますよ。そして、これが新しく栽培を始めたフェンネルで、ほかにもツルムラサキや水菜、モロヘイヤなどもありますね。
 
亀山 こんなにたくさん! これらの野菜は夏が旬ですか?
 
池上 そうとも限らなくて、水菜やこまつななどは、本当は夏場の栽培は向いていません。とはいえ、旬の時季にどこの農家でも栽培している野菜をつくっているだけでは、専業農家ではやっていけないというのも父の教えなんです。
 
亀山 なるほど、戦略として旬を外すこともあるのか。メインの出荷先はどんなところでしょう?
 
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池上農園のオーガニック野菜はプロの料理人からも好評
池上 JAさんとは付き合いが長いものの、有機栽培ゆえの難しさにも直面してきました。そんな中、最近では飲食店さんに直接卸すことも増えています。初めはグルメサイト経由でお声がけをいただき、次第に「もっとオーガニックを増やしてください」とリクエストをいただくようになり、こういう世界もあったのかと、目から鱗でしたね。
 
亀山 料理人さんからしたら、これだけバラエティ豊富な野菜があって、しかもオーガニックなんてありがたいでしょう。素材本来の味にこだわる料理にはうってつけですよね。
 
池上 心斎橋にあるフランス料理店のミシュランシェフの方が、そのグルメサイトでいち早くうちの野菜を高く評価してくださったのがきっかけで、販路が広がりました。オーガニックには今も同業者の間では厳しい声もある一方で、消費者からはこれだけの反響もあるから不思議なものですね。