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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

サッカーで東北を牽引する
有言実行の改革者

 
 
手倉森氏は、「地域を力強く牽引し、東北を発展させるための原動力としてベガルタ仙台を機能させたい」 という気概を持って仕事に取り組んでいる。監督の仕事は、とてつもないプレッシャーにさらされることは想像に難くないのだが、そこまでスケールの大きい思いを持って仕事に臨む、その原動力は何なのか。
 
 

謙虚に。しかし、反骨心を持って

 
 監督の仕事はやりがいの塊ですよ。だって、たくさんの方々の人生を背負わせてもらっているじゃないですか。たとえばサポーターの皆さんの中には、自分が稼いでいる給料の大半を費やして応援してくれているような方もいます。彼らにとっては、ベガルタ仙台が生活、そして人生の一部になっているんです。すると、私の仕事は彼らの人生を背負っているとも言えるわけですよね。そして、選手たち。私の判断で試合に出られない選手もいるでしょう? 彼らだって当然試合に出たいし、出られないと次の契約更新にも響いてくる。コーチもそう。私が解任されれば、彼らも辞めざるを得なくなるかもしれない。そうやって多くの人生を背負っているからこそ手は抜けないし、全力で立ち向かう力が湧いてくるんですよ。その重みこそが、この仕事のやりがいであり、前進していく力になっているんでしょうね。
 私はね、人生には謙虚さと反骨心を持つことが大事だと思っています。選手にも言うんですよ。「こうしてサッカーができることに感謝する謙虚さを持ちなさい」 とね。少しずつチームは成長していますけど、「自分たちは強いんだ」 なんて勘違いしたらそこで終わりです。スポーツには神がかり的になる瞬間がありますからね。その瞬間を呼び寄せるのは、選手の頑張りを後押ししてくれる、サポーターの力があってこそ。自分たちだけの力でできることではないんです。後押ししてくれるサポーターの思いで勝たせてもらっているんです。でも、「ベガルタ仙台なんて負けてしまえ」 なんて思っている人たちには 「なにくそ!」 と心の中に闘志を燃やせとも言っています。表向きは謙虚に。野次にはクールに対応して、胸の中だけ熱くしておけばいいんですよ。
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 何でこんなことを言うのかって、選手時代の私は反骨心ばかりで、謙虚さが足りない人間だったからです。だから、今こうして監督を務めているのは、当時の浅はかな自分に対する償いなんですよ(笑)。私はJリーグが開幕する前年まで鹿島アントラーズに在籍していました。若い頃から、「俺はプロになれて当たり前」 と思っていたから、チームに所属してからは、「なんで俺を試合で使わないんだ」 と不満に思うことが多くありました。手倉森ではなく、“天狗ら森” だったんです(笑)。しかも、契約を解除されて、その鼻っ柱をへし折られちゃってね。その時は、自分が悪いのにも関わらず、サッカーが嫌いになりました。そもそも、自分が悪いことにも気付けなかった。でも、結局はサッカーしかできない私を、救ってくれたのもサッカーでした。当時地域リーグで戦っていたNEC山形 (現モンテディオ山形) が東北出身のプロ経験者ということで声をかけてくれたんです。
 鹿島に対しては反発心もありましたけど、鹿島での経験があったからこそ、山形に拾ってもらい、現役引退した後に指導者になる道も開けたんですよね。それで、指導者になると決めた時は、「自分が現役時代に言われて嫌だなと思ったことは、絶対に言わない人間になろう」 と誓いました。あと、私のような独りよがりな選手をつくらない指導者になろうと。
 
 
 
「自分自身の勘違いで人生を壊しかけたことがある」 と語る手倉森氏。しかし、後ろめたい過去の話でありながらも、その語り口は明るく、とても開けっ広げである。そんな前向きで熱い魂を持つ男は、日本サッカーの未来をどのように見据えているのだろうか。
 
 
日本サッカーのレベルを上げるために
 
 暗かろうがなんだろうが、自分の過去は消せないですからね。隠すことなく話して、選手らにも伝わればいいなと思っているんです。何かのタイミングで気付くことさえできれば、自分を変えることなんて、いくらでもできるんですよ。天狗になり過ぎて失敗した経験がある社会人の方は、私みたいな人間がいることを知れば、少しは希望が持てるんじゃないですか(笑)。
 私はこれからも、べガルタ仙台を強くすることで日本サッカーのレベルをさらに上げていきたいと思っています。サッカーの世界では、クラブ規模の大小だけが勝ち負けを左右するわけではありません。もちろん、試合で勝つのが一番ですけど、チームとしての強さだけでなく、「クラブとしての強さ」 とでも言える独自性や特色があったほうがおもしろい。なんで私が 「東北人として、東北のチームとして」 って言い続けるかというと、他の土地のクラブの人やサポーターの皆さんに、「東北? ベガルタ? この野郎!」と思われたいんです。「ベガルタ仙台が強豪チーム? ACLに出場する? 他のチームが出たほうが勝ち抜けるよ」 と異論を出すような人がもっと増えてほしい。
 そんなふうに、サッカーが日常生活の話題にされるような国になるといいですよね。私はそうしたいと本気で思って仕事に取り組んでいるので、一緒に仕事をする人にも、同じ気持ちでいてほしい。「絶対無理だよ」 なんて投げてしまっていたら、何も変わらないじゃないですか。みんなで同じ方向を見て力を合わせれば、ベガルタ仙台でもACLに出られるんだから(笑)、大概のことは成し遂げられますよ。みんなにそう思ってほしいです。「ベガルタがやれるんだから、俺らも何かできんじゃないか」 ってね。そう思ってくれればしめたもの。こちらの反骨心にも火がつきますから、それがさらなる推進力になる。ただし、決して驕らず、謙虚でいることが前提ですけどね。 
 
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(インタビュー・文 佐藤学 / 写真 Nori)
 
 
 
 

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