B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW


 
プロフィール 1970年生まれ。栃木県佐野市出身。県立足利工業高校で夏の甲子園に出場した。1988年に横浜大洋ホエールズ (当時) に入団。投手として初勝利を記録する。1992年、自ら志願して内野手に転向。1998年には不動の遊撃手としてチーム38年ぶりのリーグ優勝と日本一に貢献した。ゴールデングラブ賞4回、盗塁王4回、ベストナイン5回、最多安打2回、オールスター出場6回、日本シリーズ優秀選手賞1回と、球界を代表する内野手として活躍。2006年には史上34人目となる2000本安打を達成し、名球会入りを果たしている。2009年、広島東洋カープへ移籍。その後、多くのファンに愛され、惜しまれながら2012年シーズンに現役を引退した。現在は広島の一軍内野守備・走塁コーチを勤めている。
 
 
 
プロ野球界を代表する内野手として、数々の実績を残してきた石井琢朗氏。現役引退後は、広島東洋カープの一軍内野守備・走塁コーチとして新たな野球人生を踏み出している。コーチとしてチームに貢献するだけでなく、被災地支援などのチャリティー活動にも積極的に取り組む石井氏。培ってきた経験や自身の持つ影響力を、チームだけでなく社会に還元していこうとするその背景には、どのような心境の移り変わりがあったのだろうか。
 
 

コーチとして新たな挑戦

 
20130401sp_46ex01.jpg
 少し古い話になりますが、私は2013年の書初めに 「挑」 という字を選びました。「いどむ」 です。個人としては、内野守備・走塁コーチという立場で挑戦していくこと。そしてチームとして優勝へ向かって挑戦していく。そんな意味を込めました。現役時代から追い求めてきた、「広島東洋カープで優勝したい」 という目標を実現できるように、自分のできることに力を尽くしています。
 新たな気持ちで臨む毎日ですが、アドバイスをする立場として、自分の経験からくる考えや技術論を、選手らには押し付けないように心がけています。なぜなら、能力やプレーに対する見解は、選手それぞれで違うからです。アドバイスをする場合、私自身が現役生活で培ってきたプレーに対する考え方や、正しいと思う持論を伝えはします。ですが、その言葉を受け取った選手が各々どう判断するかは、各人に委ねています。いいと思ったところは取り入れてもらえばいいし、別の意見があるのならばそれでいいと思うんです。
 私自身が経験してきたからわかるのですが、プレーに対してアドバイスをもらったことで、バッティングフォームなり守備技術なりがすぐ改善できるかと言えば、そういうものではないんですよね。日々の練習が大事なわけで、一朝一夕で身に付くものではないですから。だから、コーチとしても粘り強くアドバイスしなければならないですし、選手も各々が意識的に、目的を持って練習に取り組む。その積み重ねによって、個人の能力は上がっていくものだと思います。
 ただし、野球はチームプレーのスポーツですから、チームの一員として試合中に遂行しなくてはならないプレーがあるのも確かです。チームに必要な決まり事を自分の判断で破ってしまうようではダメで、その点はきちんと守ってもらわなければなりません。
 とにかく、野球はミスをしてしまうことが多いスポーツ。その中で結果を出すには、能力も当然必要ですが、メンタルの部分が大きく左右します。では、そのメンタルをどのようにいい状態に保ち続けるか――。それこそ、選手個人の考えや取り組み次第でどのようにも変わってきます。これだ! という方法を一言で言うのは難しいものです。やはり、多くの経験を積む中で独自の方法を培うことが大切だと思います。私自身、コーチの職務を全うするために覚えるべきことがたくさんありますし、高い意識で取り組まなくてはならない。楽ではありませんが、野球が楽しいスポーツであることは、コーチになってからも変わりませんね。
 
 
 
 

スペシャルインタビュー ランキング