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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

大工技術の粋を集めて 
歴史的建造物を守る

 

建造物と共に技術も守る

 
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矢部 日本木工さんに実績と信用があるからこそ、許可されるのでしょうね。しかし、300年も前のものだと、朽ちてしまっている部分もあるでしょう。
 
染谷 はい。修復にあたっては、使える部材はできるだけ残し、また、手間暇がかかっても、つくられた当時の建築方法をそのまま再現しています。
 
矢部 えっ、ごっそりと新しいものにつくり替えるのではないのですか?
 
染谷 それをすると、“歴史的建造物”ではなくなってしまいますからね。部材の一つひとつ、その全てが歴史的建造物なんです。だから、どうしても使えない部分以外は残すんですよ。工法にしても、現代の技術でつくり替えたほうが品質や作業効率の点で良い場合もあります。しかし、そういった方法で修復すると、創建当時の技術が失われ、もはや別の建造物になってしまいますよね。
 
矢部 なるほど・・・。建物だけでなく技術も守り、後世に伝えておられるのですね。そう言えば最近、歴史的建造物に油のような液体をかけて汚す人がいると耳にしました。罰当たりな人もいるものですね。
 
染谷 弊社も、都内の現場で改修工事に携わっているときに被害に遭いました。通行に支障を来す恐れがあることから、一部の柱をむき出しにしていたのですが、そこを狙われましてね。幸い修復できましたが、心ない人もいるものです。木造建築や歴史的建造物が大好きでこの仕事に就いている弊社の社員からすれば、考えられない。残念な気持ちでいっぱいですし、悲しくなります。
 
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矢部 全くです。染谷社長も、建築が好きでこの仕事に就かれたのですか。
 
染谷 はい。父が注文住宅の大工をしていまして、最初は父の働く姿に影響を受けました。ただ、私は住宅よりも、お寺の本堂のような大きな建造物をつくりたいと思うようになりまして。寺社建築を手がける工務店に弟子入りしたんです。
 
矢部 寺社建築に携わると伝えたときのお父様の反応が気になりますね。
 
染谷 猛反対されました。寺社建築に反対したのではなく、自分が経験してきたような下積み時代の苦労を息子にさせたくなかったのでしょうね。何度も何度もケンカしましたが、最終的には認めてもらいました。