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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

追随を許さぬ匠の研磨で
金属に息吹をもたらす

 

外食産業で経営者の素地を培う

 
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磨いていない内側(上)と研磨した外側(下)の違いは歴然
 例えばこのスプーンだと、柄の部分は棒状、匙の部分は球状になっています。そうした形状の変化にも機械は対応できるんでしょうか。
 
今野 確かに機械を使って、と言いましたが全自動ではなく、職人が一つひとつ、手で磨き、耳で磨いていくんですよ。
 
 えっ、耳で磨く!? それはいったいどういうことでしょう?
 
今野 研磨される音を判断し、機械のスピードを変えたり、押し当てる力を加減したり、五感を研ぎ澄ませて研磨していくのです。仕様にもよりますが、仕上げまでに6工程くらい踏んでおり、最初は粗く、徐々にきめを細かくしていきます。粗すぎても細かすぎても理想の光沢が出ませんので、技術を習得するには最低でも数年の修業期間が必要ですね。
 
 まさに匠の世界ですね。こういうものを目にすると、日本がものづくり大国であることを改めて認識します。やはり、今野社長は学校を出てすぐに修業をスタートされたのでしょうね。
 
今野 いえ、中学生の時に「後を継ぐ」と宣言はしたのですが、父の勧めで、高校卒業後は他社で働くことにしたんです。
 
 なるほど、よその釜の飯を食ってこい、というわけですか。
 
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今野 はい。それで日本ケンタッキー・フライドチキンに入社しました。それまでアルバイトでも接客業に就いたことがなかったものですから苦労しましたが、大卒の同期に負けたくないとの思いから必死で努力しましてね。2年後には他の大卒者に混じってセカンドアシスタントへ昇格しました。
 
 ケンタッキーともなれば社員・アルバイト合わせて相当な数のスタッフがいるでしょう? たった2年で昇格されるなんてすごいですよ!
 
今野 最も苦労したのは、人の管理ですね。ケンタッキーではパートナーと呼びますが、1店舗でだいたい40~60人、店によっては100人くらいのスタッフが在籍しているんです。実にいろいろなタイプの人がいますから、仕事を円滑に進めていくための接し方に頭を悩ませたものです。実は、当時の忘れられないエピソードがありましてね。入社から4年経ち、いよいよ家業を継ぐために退職を決めた直後のクリスマスでした。