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こんにちは。ツアープロコーチの内藤雄士です。日本ゴルフツアー開幕戦を間近に控え、国内のプロゴルファーたちはトレーニングに励む毎日。さて今回は、そんなプロに対するコーチングではなく、ジュニア育成についてお話ししたいと思います。
 

ゴルフの裾野を広げたい

 
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先月半ば、アメリカPGAツアーが年末年始の休みを終えて再開し、松山英樹プロ、石川遼プロの活躍が連日報じられています。彼らのように活躍する選手が増えてきてほしいものです。
 
では、松山プロ、石川プロに続く若手を輩出するにはどうすればいいか。ずばり、ジュニア育成に力を入れること。多くの子どもにクラブを握る機会を与えて才能ある選手を発掘し、英才教育を施す。これに尽きると思います。
 
そのうえで僕個人としては、英才教育以上に「競技者の裾野を広げる」ことが大切だととらえています。誤解を恐れずに言うと、間違った指導さえしなければ、強くなる選手は勝手に強くなります。また、強くなるために自分から海外へ武者修業に出る若者も現れるようになりました。しかし、彼らだって、そもそもゴルフに触れるきっかけがなければ、才能を自覚することもありません。
 
日本ではゴルフというと「上流階級のスポーツ」というイメージを持っている方が多いと思います。では、アメリカはどうかというと、野球やバスケットボールと変わらない「誰もが気軽に楽しめるスポーツ」という認識です。
 
その要因は、パブリック(公営)コースが全国にあるからでしょう。そう、10ドル前後の料金を払えば誰でも芝生の上でプレーできるのです。道具もレンタル可能。アメリカの小学校ではパブリックコースでの課外授業もあります。
 
コースに出るからといって本格的な練習なんてしません。とりあえず、クラブを振る、スコアを競う。ほら、我々も、原っぱや校庭で草野球をしましたよね。あれと同じです。最初は見よう見まねでボールを投げる、バットを振る。上級生は下級生にルールを教え、時には技術指導もする・・・。そんな「友達との遊び」の中で自分の才能に気付いた人がプロを志すのです。
 
 

ゴルフは「楽しいゲーム」

 
アメリカでは、日本で市営公園の中に野球グラウンドやサッカーグラウンドがある感覚でパブリックコースがありますが、日本では国土が狭い関係もあり、それほど多くないのが現状です。だからやっぱり、日本で「最初にゴルフに親しめる場所」として機能できるのは、ゴルフ練習場かもしれません。
 
僕が運営するハイランドセンターでは、幼稚園児から高校生まで、レベルに合わせた「ジュニアレッスン」を展開しています。一番気を配るのが、幼稚園年長からの初心者クラス。初めてゴルフに触れる子どもたちが「おもしろい!」「楽しい!」と感じるか、「つまらない」と思うか・・・。ここがポイントです。レッスンに当たるインストラクターには、細心の配慮をもって現場に立つようにと言っています。
 
そこで、ゲーム形式のレッスンを多く取り入れています。例えばパター競争。細かい技術指導はせず、グリーンの端から何打でカップインできるか競わせます。子どもたちは、勝てばものすごく喜びますし、負ければ、泣いて悔しがる子もいます。微笑ましいほど素直です(笑)。
 
で、この後でフォローすべきは、負けた子にも「もっとやりたい!」と思わせること。つまり、ゴルフを「楽しい遊び」として記憶に残させなきゃいけないんですね。
 
「好きこそ物の上手なれ」とはよく言ったもので、楽しければ「次こそは勝とう!」と思うから、自分で工夫して自然に上達していきます。その中で「プレーそのものがもっと上手になりたい」というモチベーションが育ってきたらしめたもの。これがジュニア育成の極意です。
 
 

長所を自覚させ、伸ばさせる

 
僕は日頃のジュニアレッスンは専任のインストラクターに任せていますが、僕が直接レッスンする時もあります。その時はグリップや姿勢などの基本的なことを必ず指導したうえで、それ以外は、細かい点を直させるよりも、そのジュニア選手の良いところを積極的に見つけて伝えるようにしています。なぜそうするのか。彼らに自身の長所―Strong Point―を自覚してほしいからです。
 
アラ探しなら簡単です。スイングを数回見れば、インストラクターなら10個やそこらはすぐ挙げられます。でも、若いうちは弱点に手を入れるよりも、強みを徹底して伸ばすほうを優先すべきなんです。長所は磨けば磨くほど、いざという時の「武器」になりますから。
 
例えば、丸山茂樹プロのアプローチショット。世界でも指折りでしょう。彼はこのストロングポイントを子どもの頃から自分でわかっていて、何をさておいてもショートゲームの練習を繰り返していました。その結果、アメリカのタフなコースでもこの武器を駆使して、3回も優勝できました。
 
ビジネスの世界も同じではないでしょうか。交渉力のある人はそれを伸ばし、難しい商談をまとめあげる。発想力のある人は、ユニークな視点を徹底して磨き、ヒット商品を開発する。自分の強みを活かしている人ほど結果を残しているし、何より、いい表情で仕事をしていますよね。
 
冬のピークが過ぎ、寒さの中に春の兆しを感じます。ゴルフ界にも若いタレントがデビューする季節です。「彼らを明るい未来へ導けたらいいな」――プロコーチとして、そんな希望を抱いています。
 
 
 
 
内藤雄士の 「コーチは愉し」
vol.4 ストロングポイントを伸ばす 

 著者プロフィール  

内藤雄士 Yuji Naito

ゴルフツアープロコーチ

 経 歴  

1969年9月生まれ。日本大学ゴルフ部在籍中にアメリカにゴルフ留学し、最新ゴルフ理論を学ぶ。帰国後、ゴルフ練習場ハイランドセンターにラーニングゴルフクラブ(LGC)を設立し、レッスン活動を開始。1998年、ツアープロコーチとしての活動を始め、2001年には、マスターズ、全米オープン、全米プロのメジャー大会の舞台を日本人初のツアープロコーチという立場で経験。丸山茂樹プロのPGAツアー3勝をはじめ、契約プロゴルファーの多数のツアー優勝をサポートした。主なレッスン著書のうち、500円シリーズ (学研)はシリーズ合計130万部を超え、今も売れ続けるベストセラー。現在は、ツアープロコーチとしての活動やジュニアゴルファーの育成に力を入れる傍ら、ゴルフ専門チャンネル「ゴルフネットワーク」にて「あすゴル」にレギュラー出演し、PGA TOURの解説を担当している。また中日スポーツ・東京中日スポーツにて毎週木曜日「内藤雄士の必ず上達するこれが最新スイング」を連載中。

 オフィシャルホームページ 

http://www.naitoyuji.com

http;//www.golf-highland.co.jp (ハイランドセンター)

(2015.2.11)
 
 
 
 

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