B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

ノウハウ 株式会社One & Only 代表取締役 森島真弓 Womenomicsの経営論 vol.1 性別による住み分けから性差を尊重する社会へ 株式会社One & Only

ノウハウ
 
 1986年に男女雇用機会均等法が施行されてから25年あまり・・・ 組織の中で働き続け、管理職や責任のあるポジションを得る女性もどんどん増えています。しかしながら民間企業で働く女性管理職の割合は非常に低く、その理由としては、女性が働き続けるうえでの障害が多いことがあるでしょう。特に、出産や育児の負担が女性に偏っているということが大きな理由となっています。
 次世代の企業は子育て支援が大きなキーワードになっています。女性が働きやすい会社を作ることこそが、企業の発展に大きく寄与します。現実として経営も難しい時代に育児を支援するコストが取れるはずがないという意見もありますが、産後の女性が働きやすい環境を作ることは企業においても多くの利点があります。
 
 

日本企業の旧体制が生んだ出生率低下

 
 以前、企業で働く約3000人の女性(平均年齢36歳)にアンケートをとったところ、「今の会社に勤めた理由」のトップは「長期で勤められるから」というものでした。ただし、そこでの「昇進・昇格を望んでいるか」という質問にYESは半数もありませんでした。
 「お茶くみ」や「寿退社」 は昔の話にはなりますが、やはり残業ありきの職場で評価をされるためには長く働く必要があります。そして、昇進や昇格をしてしまえばなおのこと、自分の時間が持てずに、たとえ結婚できても子供がいないという現実は、働く女性が出産と仕事の狭間で決断ができない現れではないでしょうか?
 ある保険会社に勤める女性とお話しをした時にショックを受けました。50歳近くの営業ウーマンですが、結婚・出産経験が一度もありません。自らの経験をもとに託児所の設置を上司にお願いしてほしいということでした。彼女は入社してから営業トップの成績をずっと維持するために、結婚もせずにいました。結婚すれば子供を産みたいと思い、それは仕事を辞めることを意味することになるから結局仕事を選んでしまったのですが、それを定年前にして、とても後悔されているという内容でした。会社を辞めてしまったら、会社一筋で生きてきた彼女には何もなくなってしまうのです。もちろん、子供がいても巣立って行ってしまう年頃ですが、なによりも家族がいない寂しさに若い頃は気付かなかったという実感から、託児所の設置を強く希望されていました。
 もしも企業内託児所があれば、結婚・出産の道を選んだことは間違いないと思っておられて、後輩たちのためにもお願いしたいという切実な気持ちがよく分かりました。結婚・出産は自由意志ですから会社に過失はないとしても、経営者としては、何十年も会社のために身を捧げてくれた社員に寂しい気持ちを感じさせながら晩年を過ごさせてしまうことはできれば避けたいと考えます。この女性は特別ではないと思います。日本の企業が女性の働く環境をないがしろにしてきた体制が、「結婚するなら辞める」「子供を産むなら働けない」 という状況を作り出してしまい、結果として出生率の低下につながったと考えられます。 
 
 

出産はビジネスチャンス

 
 産後の女性は忙しいです。日に夜を継いでの子供の世話、夜中の授乳などで、精神的にもかなり疲れています。そのような状況では、「今まで働いていた職場のほうがよっぽど自分の意思を尊重できる素晴らしい場所だった」 と思い直すことが多いそうです。復帰できる際には、心から生き甲斐を感じて仕事に臨む人が多いという統計もあります。仕事の時間は多少短くなりますが、子供を持つことによって効率良く仕事をこなすことも上手になったという人が7割になります。さらに言えば、育児の大変さが生みだす人格的成長、「対応力・忍耐力」などの人間力アップから、顧客へのクレーム対応や営業に深みが出ます。そして最後には、産後という悪条件の自分を雇用している経営者に対して感謝の気持ちと忠誠心が芽生えます。
 年月により産みだされる信頼はとても貴重ですし、このような気持ちの社員を一から募集することは難しいという一点を考えただけでも、この戦力を持ってして仕事に臨んでもらえることが企業にとってどれだけ貴重で、大切なビジネスチャンスであるかと、考えずにはいられません。
 
 

様々な育児支援の方法

 
 コストがかかり、維持が大変な事業所内託児所を設置することだけが、企業における育児支援ではありません。育児休業や、労働時間の柔軟化・・・等。補助金や税制優遇なども含めた金銭的援助はもちろんのこと、勤務体系の選択肢を増やし、なおかつそれらを活用できるような環境づくりに配慮することが大切です。
 ただ、新生児や乳児については、待機児童の多さから預かる場所が少ないことが現実としてあります。また、新生児については授乳のタイミングもあるので、社内に託児所があるという安心感は一番です。以前は企業の宣伝も含めた意味合いの豪華な託児所が話題になりましたが、最近では小さくても快適な環境の託児所を簡易に設置する会社も増えています。私どもも、できる限り低コストで託児所を実現できるプランを各企業のニーズに合わせてご提案しています。女性社員のみならず男性社員から利用者が増える場合もあります。夫の会社に託児所があると、家庭内にも会社に対する感謝が深まるという効果もあります。社内託児所は男性社員の利用率が高いという統計も出ています。
 少しでも安心して育児ができる環境を整えることにより、出生率を上げていく一歩になると思われます。子供は世界の宝です。経営者としては会社の存続が一番の課題ですが、子供が生まれないことには明るい将来が考えられないのですから、育児支援は企業にとって最重要課題であると思われます。私も育児支援を応援する会社として、より利用者と企業において双方に良い方法を模索していき、多くの命の誕生を心から願います。
 
 
 
 
 Womenomics(ウーマノミクス)の経営論 ~子育て事業からの提言~
 第6回 企業から見た託児所の意味と役割

 執筆者プロフィール 

森島真弓 Mayumi Morishima

株式会社One & Only代表取締役

 経 歴 

大学在学中に派遣会社を起業し、順調に推移させた後、大学を卒業して広告代理店に就職。結婚、出産を経て退社し、フリーのコンサルタントとして活動した期間をはさんで渡米。アメリカで見つけた子供服に魅せられ、2003年に子供服輸入販売業として(株)MRK. INTERNTIONAL(現・One & Only)を起業。2008年からはベビーシッターサービスを新たに開始。経営者としての経験の豊富さに2児の子育てを通じて得た視点と発想を加え、ウーマノミクスの時代に即した事業を展開している。

 オフィシャルホームページ 

http://www.little-star.biz/

 
 
 
 

 

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事