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ノウハウ 株式会社One & Only 代表取締役 森島真弓 Womenomicsの経営論 vol.1 性別による住み分けから性差を尊重する社会へ 株式会社One & Only

ノウハウ

 
 近年、女性経営者が珍しくなくなりましたが、女性という性別がことさらピックアップされること自体、まだまだ女性経営者が 「本当の経営者」 と認められるフィールドが少ないのでは?と感じます。私が事業を立ち上げた頃には、設立資金の残高証明すら、都市銀行の窓口で 「女性社長では・・・」 と預かりを躊躇されました。女性経営者の諸先輩方はさぞかし起業においてご苦労されたことが多かったのではとお察ししています。
 私は現在、女性にしか感じることができない母性から生まれるサービスを提供するというコンセプトで、「子ども服輸入販売」 と 「ベビーシッター派遣」 の事業を経営しておりますが、女性であるがゆえの利点と難点が多々あります。女性経営者であり、夫を持つ妻であり、子を持つ母である私だから見える社会のニーズ、事業を経営していく際の問題点、大切なコツ等・・・ 日々のエピソードに交えて、皆さんにお伝えしていきます。
 

 
経営者としての男女の違い

 以前、起業家講座の講師をしていた際に、リストラで会社を解雇になった中年男性の方から 「何から始めたらいいのか分からない。でも家族を食べさせていかなくてはならない」 という、焦燥感に満ちた質問がありました。かたや、女性の生徒さんからは、「ゆっくり自分自身が好きなことを見つけて起業します」 という受講の感想をいただき、男女の違いが端的に表れていると感じました。
 男性はまずは家族を、そして社員を養っていくことを念頭に考えるために、利益も大きいことが起業内容の決め手になります。しかしながら、女性経営者で最初からそこまで重責を担いながら起業される方は少ないと思われます。そこに男女間の相違があることは当たり前であり、その姿勢の差について社会的な評価にも違いが出るのは仕方がないと感じました。男女雇用均等法に基づき、性差による職業の枠はなくなりつつありますが、私個人としては、男女において思考や環境に違いがあることは否めないわけですから、その男女差を理解し、上手に生かし、それぞれに適した仕事を手掛けるべきだと考えています。
 
 

女性経営者として子育て支援事業へ

 近年の少子化対策により、政府の子育て支援は活発化し、企業に対しても、次世代育成支援対策等で少子化に対する協力体制が求められています。その時代の流れから、男性の子育て支援事業に取り組まれる経営者(男性) がいらっしゃいますが、女性の産みの苦しみだけは理解してもらえないようです。同様に、子育てに対しても、男性では理解ができないであろう母性の矛盾 ・・・大切に育てたい気持ちと、社会と関わりたい欲求や育児疲れする自分との葛藤・・・ があります。私の事業はお客様が女性である場合がほとんどですので、幸い二人の子どもを産み育てている私の感覚が生かせますし、セレクトしたシッターへのお客様のニーズや、どんな問題点からそのニーズが生まれたかなどが、充分理解できます。これらは自分の特性が経営に有利に働く例です。さらに、働かれている女性のお客様からは、「働きながら子育てをする社長が経営している」 という安心感があるというご意見もいただきます。そんな時、私は女性経営者である幸せを感じるのです。

 しかしながら、「女性経営者」 であることによってぶつかる壁も多々あります。
 例えば、男性社員の採用に際して、まずは年齢や職歴などに配慮をし、女性がトップの会社でも生き生きと自分を生かし、働いてもらうための配慮を第一にする必要があります。また、取引先においては 「女性の社長」 という言葉がまだクローズアップされるあたりに、難しさを感じます。
 家庭内でも、やはり母親が働くという状況と父親が働くという状況は等しく位置づけられないという風潮があるようです。事実、我が家でも 「今度の参観日、来られる?」 という子どもの質問に 「パパは仕事だから無理」 と答えると、「別にパパはいいよ」 という雰囲気で受け入れてもらえましたが、「ママも仕事だから・・・」 と言おうとすると、泣きべそをかかれてしまいました。ママという存在が働くことの難しさを痛感した出来事でした。シッターの方の中でも、ご主人様が 「妻が働く」 ということに抵抗を感じている方もいらして、反対意見もあると聞きます。「日本男児として、(妻を働きに出すなどは) 沽券に関わる」 と思われているのかもしれません。ですから、そんな時は 「 『働く』 と言わずに 『 (あなたの理解があるおかげで) 働かせてもらっている』 と口に出してみたらどうか」 と提案をします。たいていはそれでスムーズに理解していただけるようになるみたいです。

 子育て支援事業は、私どものように各ご家庭に伺うベビーシッターや、保育園・幼稚園などで働く保育士や、ボランティアの人々が、現在子育てをされているお母様のお手伝いをさせていただく事業です。加えて強調したいのは、お母様方に子育ての楽しさを伝える仕事でもあるということです。核家族化が進む中、「大切に子どもを育てていく」という当たり前のことが困難な状況にあります。親のメンタリティーも、長く続く不景気や、仕事との両立などで、健全に保てる保障がありません。そんな中、共に子育てを考え、そして取り組んでくれる存在が(他人であったとしても)いるということが貴重であると考えています。
 私も子育ての過渡期でありますから、問題は日々起こり、そしてたくさんの人の手を経て解決していくことの素晴らしさを感じています。社会の宝である子どもをみんなの手で育てていくお手伝いができることは幸せであり、弊社に在籍する500名以上のシッターや社員にも、女性の視点から仕事の喜びを感じてもらえるようなフィールドを作ることが、女性経営者になった意味だと思っています。
 
 

経営者からみた男女差

 皆様の会社にも、社員の性別における仕事の違いや賃金の違いがあるかもしれません。 大企業では 「男女平等な待遇」 は当たり前のことであり、むしろそんなことで違和感を持っていること自体が時代遅れなのかもしれませんが、中小企業もそうであるとは一概には言いきれないでしょう。経営者としては、男女関係なく、会社のことを考え、経営者と同じベクトルと気持ちを持って働いてくれる社員が大切です。適切なコスト感覚を身につけ、経営者目線で仕事をする社員に男女の差などは感じられないはずです。でも、どうしても女性は「結婚・出産・育児」という機会があると、仕事に対しての環境が変化してしまうことは否めません。雇用されて働く者としては、「だから女性は難しい」 と経営者が判断する前に、環境が違う中でいかに会社の役に立てるかを考え、心がければ、女性であるがゆえの問題は少なからず軽減されます。自分の身の振り方に責任を持つ考え方ができれば、「女性社員」であることで評価が下がることはないでしょう。
 反対に経営者は、「結婚・出産・育児」 に最大限に理解を示し、それらの女性特有の環境でも精一杯働きたいと彼女たちが思える会社をつくることが重要です。経営者が社員を想い、社員が経営者を想う・・・そんな両想いの会社であれば、男女差などによる不都合は少なくなると信じています。
 
 
 
次回は、「優秀な保育士を確保するコツ!」 について考えてみます。他の分野の経営にもヒントにしていただけることがあるのではないでしょうか。
 
 
 
 
 
 Womenomics(ウーマノミクス)の経営論 ~子育て事業からの提言~
 第一回 性別による住み分けから性差を尊重する社会へ

 執筆者プロフィール 

森島真弓 Mayumi Morishima

株式会社One & Only代表取締役

 経 歴 

大学在学中に派遣会社を起業し、順調に推移させた後、大学を卒業して広告代理店に就職。結婚、出産を経て退社し、フリーのコンサルタントとして活動した期間をはさんで渡米。アメリカで見つけた子供服に魅せられ、2003年に子供服輸入販売業として(株)MRK. INTERNTIONAL(現・One & Only)を起業。2008年からはベビーシッターサービスを新たに開始。経営者としての経験の豊富さに2児の子育てを通じて得た視点と発想を加え、ウーマノミクスの時代に即した事業を展開している。

 オフィシャルホームページ 

http://www.little-star.biz/

 
 
 
 

 

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