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第8回 移民ビジネスのススメ(前編)
~オーストラリアの移民ビジネス~


 
 オーストラリアは大国アメリカに負けず劣らずの移民大国です。以前は旧宗主国であるイギリスからの移民が多数を占めていましたが、最近では中国を中心としたアジア諸国からの移民が急増しています。オーストラリアの最大の産業は知っての通り、豊富な鉱物資源を中心とした輸出業ですが、近年は移民希望者を対象としたビジネス、移民ビジネスが急上昇。国の財政を支える貴重な財源になっています。
 日本は少子化が進む中、今後の国の財政について見通しが立たず、経済活動が先細りしていくと予想されています。確かに企業活動が衰退し、就労する人数が減れば、それだけ国が手に入れられる税金が減ります。税金が減れば予算も減り、十分な国政や公共事業などのサービスもできなくなります。「人口減少=国力の低下」 という公式は間違っていません。いずれ移民については真剣に議論される機会が必ず来ると思います。私の考えでは、移民ビジネスは日本経済を救う起爆剤に成り得る新しいビジネススタイルです。また、それを見越して移民ビジネスのビジネスモデルの構築を考える時期に来ていると思います。
 
 

なぜ移民ビジネスが儲かるのか

 
 なぜ移民ビジネスが儲かるのか? その方法を説明する前に、日本国籍のありがたみを理解する必要があります。
 何度も述べ、先月も詳しく説明しましたが、日本人ほど世界各国から信用されている人種はいません。何かトラブルがあっても、文句も言わずに大人しく待っている。規律はきちんと守る。観光ビザで入国しても、どこぞの国のようにその国に不法滞在する可能性も少ない。
 しかも日本国内は物があふれ、他国からは信じられないくらいの娯楽や便利なサービスを受けることが可能です。また以前に比べて生活水準は下がったかもしれませんが、戦争や犯罪に巻き込まれて死亡することはまず考えなくてよい。本当にお金がなくて餓死する人も非常に少なく、こんな恵まれた国は世界中どこを見渡してもお目に掛かれません。 
 私がオーストラリアのあそこが悪い、ここが変だと述べているのは、私の出身国が日本だからであり、世界一般レベルからいえば、オーストラリアはそこまでひどい国ではありません。むしろ全体的に上位にランクインされる国です。比較対象が日本だったのは、オーストラリアにとって運がなかったと言えます。 
 享受できるサービスの質が、明らかに、日本よりも格段に落ちるオーストラリアでさえ、国が移民希望者からぼったくりと思えるくらいのお金を引っ張り、利益を上げています。もし日本が同様の移民ビジネスを実施したら、どれだけの利益を国にもたらすのか、計り知れません。 
 また、現在でもアジア各国の留学生はどんどん日本に押し寄せます。その内の何割かがそのまま不法滞在という形で日本に居ついている現状です。本音を言えば、彼らだってきちんとしたビザ(永住権、国籍)が欲しいはずです。しかし日本ではビザの入手が世界各国と比べて格段に難しく、結婚などの方法以外では、入手する可能性はほとんどないのが現状です。 
 オーストラリアには、「技術独立移住ビザ」 と呼ばれる、誰のスポンサーも受けずに自力で永住権を取得できる方法があります。日本もそのシステムを参考にして、彼らに希望を与えてはどうでしょうか。プラチナ国籍である 「日本」 の永住権です。こんなチャンスはめったにありません。不法滞在、不法入国までして日本に滞在している人たちがいるのを考えると、導入すれば興味を持つ人はかなり出てくるのではないでしょうか。
 
 

オーストラリアには自力で取得可能な永住権がある

 
 オーストラリアでは、移民する手段として、現地でパートナーと巡り合い、結婚や婚約をするという方法があります。他にも、企業がどうしてもこの人材でなくてはダメだと判断し、企業スポンサーという形で雇用してもらうことで移民する手段もあります。ただ、これらの方法は巡り会わせや運の要素などが必要になり、純粋な自分の力だけではどうにもなりません。
 これらの手段に当てはまらない、若くエネルギッシュで将来性がある人間に対して開かれた方法が、「技術独立移住ビザ」 です。これは年齢、学歴、職歴、資格などの各項目に条件に応じたポイント(点数)が与えられ、そのポイントが移民局の認める基準点を超えれば永住権を申請できるシステムです。
 若くて有能な人材の確保は、一般企業と同様に国にとっても重要な課題です。人材は将来的に国に貢献してくれる人材(税金を多く収めてくれる人材) でなければなりません。よって、年齢項目で最高点が獲得できる年齢幅はとても狭く限られています。また、学歴もどの学部というわけではなく、オーストラリア国内で不足している業種に関連している学部を修了していることが大前提になります。
 
 

移民ビジネスで莫大な利益を上げている教育産業

 
 オーストラリアで永住権を申請する際は、他国の卒業証書よりもオーストラリア国内の学校を修了しているほうが優遇されることが多いため、永住権を取得する目的で大学や大学院などの高等教育機関に進学する留学生の数は少なくありません。
 オーストラリアは英語圏なので、大学の授業は当然英語で行われます。「入学したいです。」「はいどうぞ。」というわけには行きません。移民希望者の多くは母国語が英語ではないため、IELTS(アイエルツ) と呼ばれる英語テストで、学部やコース内容に応じて学校側が求める点数を取得し、英語力を証明する必要があります。
 このテストが意外と難しく、まず一度の受験では点数が取れません。3~4回の受験はざらです。1回の受験料は日本円で約3万円程度。しかも年々受験希望者は増え、今では年間数万人の受験者がいるくらいです。また、受験には対策のテキストや、学校での勉強も必要になります。大学付属の語学学校の他に、私立の語学学校が多く存在し、こちらもアジアを中心とした学生でごった返しています。
 念願が叶い大学に入学できても、そこで待ち受けているのは留学生用の高額な授業料と、学業の壁。オーストラリアの大学は3年制ですが、現地の人間でも3年で学業を修了するのは至難の業です。留学生が単位を落としてしまうことは頻繁にあります。
 ここまで頑張って卒業して、永住権を申請できる条件が揃ったとしても、最後の大きな難関。再度IELTSを受験しなくてはなりません。しかも、移民局から求められる点数は、大学に入学する時と比べ物にならないくらいの高得点が必要になります。よって、また受験料が3万円もするテストを、点数が取れるまで何回も受験する羽目になります。


 これが、移民希望の留学生が毎年確実にオーストラリアの教育産業に落としてくれるお金になります。しかも、彼らの多くはアジア諸国を中心に富裕層の子弟たちです。お金の使い方は尋常ではありません。車や生活用品などにぽ~んと高額な買い物をします。また、子供のために1億円もする住居まで買い与える親が国許にいることも、珍しくはありません。
 移民ビジネスの恩恵に預かれるのは教育産業ばかりではなく、多岐多様にわたります。政府も国を上げて移民ビジネスを構築しているのは、周辺に及ぼす経済効果が莫大なものだからです。これが、私が移民ビジネスを推奨する大きな理由です。

 
 ただ近年は、オーストラリアでは教育業界を中心として、移民希望者に対して度を超す拝金主義が横行しています。次回は移民ビジネスの功罪の “罪” の部分にフォーカスを当てていきます。 
 
 
  南半球でビジネスを考える ~オーストラリア在住・日本人経営コンサルタント奮闘記~
第8回 移民ビジネスのススメ (前編) ~オーストラリアの移民ビジネス~

 執筆者プロフィール  

永井政光 Masamitsu Nagai

NM AUSTRALIA PTY TLD代表 / 経営コンサルタント

 経 歴 

高校卒業と同時に渡米、その後オランダに滞在し、現在はオーストラリア在住。永住権を取得し、2002年にNM AUSTRALIA PTY TLDとして独立。海外進出企業への支援、経営及び人材コンサルティングを中心に活動中。定期的に日本にも訪れ、各地で中小企業向けの海外進出セミナーなどを行っている。

 オフィシャルホームページ  

http://www.nmaust.com/

 ブログ  

http://ameblo.jp/nm-australia/

 
 
 
 

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