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ビジネス 企業の成長には何が必要か? vol.4 経営トップの覚悟が企業を成長させる 企業の成長には何が必要か? デルフィーコンサルティング株式会社 代表取締役 久保田 記祥

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時代の変化に対応して成長し続ける企業にはどんな特徴があるのだろうか。「一般社団法人すごい会議」のメンバーで、デルフィーコンサルティング株式会社の代表取締役を務める久保田記祥氏に、同社のサービスの手法も交えて、企業成長に必要な要素を語ってもらうインタビューの最終回。
 
 

ストーリーをつくって問題解決をサボる

 
――前回の最後に、否定的な解釈をしてしまうストーリーをつくってはいけないという話がありました。ストーリーとは、具体的にはどのようなことですか。
 
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解釈については、vol.1でお話ししましたよね。解釈に基づくストーリーとは、例えばこのようなことです。あるビールメーカーの売り上げが落ちている。メーカーはその原因を探ります。そして、「今年の夏は冷夏なのでビールが売れない」、「販売店の近くに競合店ができたから、当社の売り上げが減った」と販売減の要因を述べる。でもこれ、全部こじつけです。
 
冷夏でも売り上げを確保しているメーカーはあるはず。競合店があっても、それを上回る利益をあげている店も、あると思いませんか? 多くの場合、勝手にできない理由をこじつけて、「そんな状況にあるから、今は行動しなくていいですよね」というストーリーを創作しているんです。誰だって、「冷夏のせいでビールが売れないんです」と言いたい。「僕が無能だから」ではなく(笑)。
 
――なるほど。勝手に解釈をして、できない言い訳になるストーリーをつくりあげていると。
 
そう、解釈です。「売れない」という結果に対して、「冷夏だから」というのは1つの要素でしかない。もちろん、ビール消費量のトレンドはあると思います。ビールを凌駕する新たな酒類が登場したというような、背景もあるのかもしれない。さまざまな要素がある中で結果的に売れてないだけなのに、1つのストーリーに紐づけして解釈してしまうと、他の要素からなる問題の解決を、全部サボりたくなります。
 
そもそも、本当に達成したいのは、ビールを売りたいということだけですよね? 売れない原因ばかり探っていても意味がないんです。それでも儲ける会社になるにはどうすればいいのか――そこを考えればいいだけの話。それを考え、意思決定をできる状況に導くことが、繰り返し言っているように、我々の務めです。
 
 

嫌われてでも意思決定を促す

 
――御社の支援が単に会議の効率化のためのコンサルティングではないことがよくわかります。コーチとして会議に参加して、運営上の意思決定をしてもらうように導いていくんですね。
 
そうです。意見が言いやすい雰囲気にして、意思決定ができる状況をつくれば、ポジティブな言葉が会議で使われるようになって、解決に向けたアイデアも出てきます。我々は、スタッフさん同士のコミュニケーションの中身を変えるし、経営チーム自体をつくり変えるようにコミットします。その結果、決めたことを実行しない人は、経営チームから去っていくことになります。
 
普通の会社なら、「社長! さすがです!」とお世辞を言っているだけのスタッフが出世することもあるでしょう。でも、きちんと意思決定があって、それに則った業務が遂行できないスタッフさんは、会議から外れざるを得なくなるので、メンバーがコロコロ変わることもある。本来、それが普通なんです。
 
私は、「先ほどの会議でワークしていない人がいました。あの人をどうしますか」と社長に聞きます。それで、「いや、でも彼には育ってもらわないと」とおっしゃるなら、「じゃあ社長から彼とコミュニケーションを取ってみてください」とお願いします。
 
もし、「別の人間に変えないとダメだなあ」というのであれば、「では、いつまでに誰を採用して、その方をどうしたいですか」と決めていただく。こういうことを繰り返すわけですから、我々の仕事は支援先の多くの方々に嫌われる覚悟がないとできません(笑)。
 
 

苦言の中に、成長への気付きがある

 
――常にアウェー感がありそうですね。支援先の皆さんと仲良しになったら仕事にならなそうです。
 
おっしゃるとおりです。ファシリテーションとコーチング、コンサルティングをあわせた支援が弊社のサービス。これをきちんと遂行するには、クライアントさんとの関係づくりが大事になります。ですから、コネクトした状態で会話ができる間柄にならないとダメですけど、必ずしも仲良しでいる必要はない。
 
クライアントさんが抱える問題に対して、正面から真摯に向き合う覚悟がないと、この仕事はできません。我々との会話を通じて、クライアントさんに何も気付きが起きず、何の行動の変化も生めないようだったら、我々はコーチとして失格です。
 
私と話していて嫌な思い、辛い思いをしたとしても、気付きを得てほしい。私と会話をすることに価値があると感じていただく。それが自社の成長につながることだと信じてもらえなければ、何も進まないですから。
 
――御社から耳が痛くなるような指摘をされてこそ、成長のための気付きが得られると。
 
そう。「耳が痛いですね」とおっしゃったら、「そうですか。じゃあどうしますか」って質問するのが私たちの仕事(笑)。本当に痛かったら、何かに気付くでしょう。そして、解決に向けてどういうことを決めればいいのかも見えてくる。
 
 

意思決定の継続が企業を成長させる

 
――最後に、久保田社長が考える“いい会議”とはどういう会議か、そして、“成長できる企業”とはどんな企業かを教えてください。
 
きちんと意思決定が行われる会議が“いい会議”です。情報共有だけでいいなら、簡単に終わります。そうではなく、何らかの情報や意見が集まり、達成すべきことのためにきちんと決定されるのがよい会議です。
 
意思決定を続ける環境をつくること。それが繰り返されることで、企業は成長します。最終的な意思決定をするのは当然、トップの人間です。つまり、成長する会社は経営者の方がどんな問題に対しても、解決しようと覚悟を持って業務に臨んでいる。そして、たどり着きたいゴールが明確でありながらも、そこにたどり着くまでの手法については臨機応変に変更できる判断力を持つことが、リーダーに必要な資質です。
 
~了~
 
企業の成長には何が必要か?
~「すごい会議」コーチ、デルフィーコンサルティング株式会社・久保田記祥社長に聞く~
vol.4 経営トップの覚悟が企業を成長させる
 
(取材2018年4月)

 著者プロフィール  

久保田 記祥 kubota noriyoshi

デルフィーコンサルティング株式会社 代表取締役/一般社団法人すごい会議 認定コーチ

 経 歴  

千葉県出身。大学卒業後、IIJテクノロジー(現IIJ)で営業を経験。その後、製造業で社長秘書、経営企画などを担当。同社で「すごい会議」のサポートシステムを開発・導入する。同社の子会社としてシステムを外販する会社を設立。さらに、「すごい会議」の認定コーチとなり、独立してアカリス株式会社を設立(2016年デルフィーコンサルティング株式会社に社名変更)した。「すごい会議」を通じたコーチング、ファシリテーション、コンサルティングをあわせた企業成長支援のサービスを展開中。株式会社ブランジスタの社外監査役および、トークノート株式会社社外監査役も務めている。

 オフィシャルサイト 

http://www.delphi-consulting.com/

 
 

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