B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

ノウハウ 木村尚義の「実践! ラテラルシンキング塾」 第12回 (最終回) 発想を磨く練習の決定版「フラッシュ@ブレイン」 木村尚義の「実践! ラテラルシンキング塾」 創客営業研究所代表・企業研修コンサルタント

ノウハウ

第12回(最終回) 発想を磨く練習の決定版「フラッシュ@ブレイン」

 
こんにちは。木村尚義です。ロジカルシンキングと対になるラテラルシンキングの理論と実践を紹介するこの連載も、ついに最終回を迎えました。最後のレッスンは、ラテラルシンキングを身につける練習法の決定版「フラッシュ@ブレイン(読み方は普通にフラッシュブレインです)」で締めくくりましょう。
 
と、その前に、ラストのクイズです。もうこのパターンのクイズは皆さん簡単ですよね。
 
glay-s1top.jpg
頑として看板の間違いを直そうとしない店。店主が語った理由とは・・・
問題その12【看板の間違いを直さない店主】
米国のあるバーでは綴りが間違った看板が架かっています。時折、親切なお客さんが「間違ってますよ」と教えてくれますが、店主は「このままでいい」と譲りません。なぜ、店主は間違ったままの看板を直さないのでしょうか?
 
 



フラッシュ@ブレイン

 
フラッシュ@ブレインは、今までの連載で説明してきたラテラルシンキングの3つのコツ――前提を疑う・抽象化・セレンディピティ――を一度にマスターできて、しかもおもしろいという私が発案した、欲張りな総合練習法です。
 
先にこの練習法が誕生した背景を紹介しますと、フラッシュ@ブレインはもともと、企業研修中、アイデアを出し合う演習での大失敗から生まれました。その演習、どうしても、格好の良いアイデアを出そうとか、バカにされないようにとか、参加者の皆さんの様々な思惑が絡み合って、まったくアイデアが出なかったのです。また間の悪いことに、「そんなアイデアじゃ駄目だ!」と批判するご意見番がとどめを刺しました。それで結局しらけたまま時間切れとなり、研修は終わり。研修後には反省会もセットされていて、講師の私も参加しなければなりませんから、居心地が悪いだろうと思いつつも会場の居酒屋に行きました。でも、そこで見た光景は、研修とはガラッと違っていました。皆さんリラックスして、様々な発想が出まくっていたのです。そこで、なんとかこの熱気を演習に応用できないかと考えたすえ、「そうだ! ゲームだ! ゲームにしよう」と思い付きました。それで生まれたのが、フラッシュ@ブレインです。
 
フラッシュ@ブレインはどんなゲームかと言えば、5人で遊ぶ「対戦型発想カードバトル」です。もちろん、1人でも遊べますが、5人いると順位が決まりますので、さらに楽しくなります。カードゲームですから、何と言ってもスマホやPCなどのデジタル機から離れることで、対面コミュニケーションが得意になります。 使うものは普通のトランプだけです。思い立ったら、いつでも、誰でも、簡単に遊ぶだけなのに、ラテラルシンキングの基本を身に付けられるのです。
 
総合練習法と名乗るだけあって、遊ぶだけで次の能力を磨けます。
1.記憶力(相手の発言を記憶する)
2.思考力(水平思考、論理思考)
3.発言力(コミュニケーション)
 
 

フラッシュ@ブレインの遊び方

 
能書きはこの辺にして、遊び方を説明しましょう。ジョーカーを除いた52枚のカードをよく切り、山札とします。最初に親プレイヤーを決めます。親はその場で見えるものをテーマとして選び、宣言します。そして2分間、選んだもののイメージをプレイヤーに共有します。例えばテーマが「ペン」なら、筆記具、長い棒、必須の持ち物、というようにです。
 
2分が過ぎ、イメージの共有が終わったら、親から時計回りで山札を全員が見えるようにめくります。山札をめくったプレイヤーはカードのマークを見て、マークが課すルールに即して30秒以内に発表します。ルールは次の通りです。
 
スペード:逆転の発想をせよ
 例:書いても消せるボールペン
❤ハート:別の用途を思いつけ
 例:肩コリのツボを押すペン
クラブ:拡大縮小の発想をせよ
 例:収納時はコンパクトなのに使うときに伸びるペン
ダイヤ:別のものをくっつけよ
 例:暗いところでも書けるライト付きペン
 
ひと回り目では、発表するものはすでに世の中に存在している商品で構いません。でないと、プレイヤー全員が知らない可能性があるからです。上記4つはどれも、どこかしらのメーカーが商品化していますよね。そうやってアイデアを発表したら、めくったカードを自分の手札に加えます。
 
もし、めくったプレイヤーが30秒以内に発表できなければ、別のプレイヤーは「フラッシュ」と宣言して発表権を横取りできます。フラッシュしたそのプレイヤーも30秒以内に発表します。
 
発表が気に入らなければ、他のプレイヤーは3秒以内に自分の手札から1枚かけて「@(アット)」と宣言します。アットしたプレイヤーは30秒以内に、批判ではなく、改善したアイデアを発表します。
 
どちらがより優れているかという判定は「@」当事者以外のプレイヤー3人の“一斉指差し多数決”で決めます。そうして選ばれたプレイヤーが勝ちとなり、めくった札とかけた札の2枚を手中に収めます。
 
これを続けて全ての山札をめくり終わるか、プレイ開始から15分経ったところで終了です。終了時点で手札の数が多い人が勝ちになります。
 
企業ではもちろんのこと、小学校からでも充分に楽しめます。大人は難しいといいますが、むしろ9歳くらいの子どもが楽しんで遊びます。頭が柔らかいのですね。
 
 

連載を終えるにあたって ~皆さんへのメッセージ~

 
「これからの日本には知識より想像力が必要」――これは私が常日頃思っていることです。日本ではものは飽和状態となり、画一化された量産品ばかりで魅力がなくなってしまいました。ヒットの寿命は短くなり、日用品は海外製で安価になり、IT化によりサービスが次々と無料になっています。頭の固い会社は、ますます経営が難しくなるでしょう。いっぽうでクリエイティブな商品やサービスは、日本のみならず、世界中から注目を集めるようになっています。とがったサービスやものなら発売前から行列ができるほどです。
 
これからは、量産の発想から離れて、想像力の豊かな多品種のサービスやものを短期間で提供できることが、企業の生き残りのカギになります。ラテラルシンキングがそうした新たなものを生み出す助けとなれば嬉しい限りです。最後までお読みくださり、ありがとうございました。
 
【看板の間違いを直さない店主】答え
店主の言葉です。「ときどき、あなたのように、看板が間違っていると入店してくれる“新規のお客さん”が来るからね。」
 
間違えてるよ、と教えてくれたお客さんはその時点で店内に入っています。最初は教えるためだけのつもりでも、店に足を踏み入れて店主と一言二言話せば、何か注文する気になるでしょう。店主の作戦勝ちというわけです。
 
どのようなお店でも、看板の究極の目的は、お客さんに店に来てもらうことです。つまり、綴りが多少間違っていたとしても、その看板は充分に目的を果たしているのです。
 
※日本におけるフラッシュ@ブレインは創客営業研究所が全権利を所有しています。
 
 
木村尚義の「実践! ラテラルシンキング塾」
第12回(最終回) 発想を磨く練習の決定版「フラッシュ@ブレイン」

 執筆者プロフィール  

木村尚義(Kimura Naoyoshi)

創客営業研究所代表・企業研修コンサルタント

 経 歴  

日本一ラテラルシンキング(水平思考)関連書を執筆している著者。1962年生まれ。流通経済大学卒業後、ソフトハウスを経てOA機器販社に入社。不採算店舗の再建を任され、逆転の発想を駆使して売り上げを5倍に改善する。その後、IT教育会社に転職、研修講師としてのスキルを磨く。自身が30年以上研究している、既成概念にとらわれずにアイデアを発想する思考法を企業に提供し好評を得ている。また、銀行、商社、通信会社、保険会社、自治体などに「発想法研修」を提供している。遊ぶだけで頭がよくなる強制発想ゲーム「フラッシュ@ブレイン」の考案者。著書に、『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』(あさ出版)、『ひらめく人の思考術 物語で身につくラテラル・シンキング』(早川書房)など多数。

 オフィシャルホームページ 

   http://www.soeiken.net/
 
 
(2017.04.26)
 
 
 
 

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事