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AIを用いたスマート家電や多様な機器をネットワークでつなぐIoT、“モノのインターネット”。2019年8月28日、パナソニック株式会社がこのIoTの一般家庭へのさらなる普及を目指し、電源コードをコンセントに差すだけでインターネットに接続できる技術を数年内に自社の家電に搭載すると発表した。
 
進化し続ける技術の普及により、ますます便利になっていく世の中。本連載は、そんなテクノロジーを研究・開発している企業や団体の事例を紹介するとともに、将来的にAIを業務に利用したいと考えている企業へのサジェスチョンのほか、社会全体が抱える人手不足問題の解決や、より良い働き方のためのヒントを探っていく。
 
AIの話題となると、やはり世間の多くの人が抱いているのは“AIによって人間の仕事が奪われるのでは?”という懸念だろう。この点について考察するべく、農業分野での普及を目指し自動野菜収穫ロボットを開発しているinaho(イナホ)株式会社と、コミュニケーションロボット向けアプリやAIサービスの開発を手がける株式会社ヘッドウォータースに取材。AIの活用事例を聞くとともに、率直な質問を投げかけてみた。
 
 

いかにしてAIが仕事に活用されるか

 
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アスパラガスの収穫を行うinao社のロボット
まず両社に、「AIが仕事を奪う」との意見についてどのように考えているかをうかがった。すると、どちらも「AIが仕事を奪うという観点ではなく、人がしなくても良いことをAIが代替することで、人が本来したい・するべきことにリソースを避けるようになる」と、まったくと言って良いほど同じ答えが得られた。決して示し合わせたわけではなく、それぞれ異なる業界・分野で取り組みを行う企業の見解が一致しているのは、特筆に値すべきだろう。
 
では、AIは実際にどのように活かされているのだろうか。取材した2社の事例として、高齢化や労働人口の減少が著しいと言われる農業、長時間労働や人手不足といった課題を抱えるコンビニ・飲食店などの接客業での展開を紹介する。
 
inaho株式会社では、AIによる画像認識機能で適切な収穫時期を見極め、自動で野菜を収穫するロボットを開発。従量課金型のビジネスモデル“RaaS(Robot as a Service)”でサービスを開始している。同社は今後、量産化や機能拡張などを順次進める予定で、2020年にはロボットの運用台数を数百台とし、オランダに拠点を開設して海外へも進出するとのこと。さらに、2022年には運用台数1万台以上、全国40拠点の開設を目指しているという。
 
株式会社ヘッドウォータースでは、AIとIoTでロボットの業務利用を促進するクラウドロボティクスサービスを展開。これによりロボットが人間の顔や言葉を認識し、そのうえで接客内容を変えるという。すでに一部のラーメン店やホームセンターなどで利用が始まっている。また、同社では、求人サイトでのマッチング業務をAIが代替するレコメンドエンジンを開発。会員の特徴と求人の特徴、過去の応募統計情報からレコメンドを行うほか、AIがヒアリングを行うことで学習データを追加し自動再学習することも可能だそうである。
 
 

人がしなくても良いことをAIが代替する理由

 
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ヘッドウォータース社のサービスを利用し、接客を行うPepper
当然ながら、AIを社会に役立てるために研究・開発を行う企業は“人から仕事を奪う”のが目的ではない。とは言え、実際にAIに奪われるかもしれないと言われている業界の中では、不安を感じる人も少なくないだろう。
 
現時点で、“AIに奪われやすい”とされている職業はいくつかある。例えば、警備業や清掃業、タクシーや貨物トラックのドライバーなどだ。警備業であれば建物内を巡回する警備ロボットや、高度な顔認証システムを用いた防犯カメラなどが考えられる。運輸業であれば自動運転による配送や、無人バス・タクシーが研究されており、これらの技術によって「仕事が奪われる」と危惧されているようである。
 
それでは、本題である「AIが仕事を奪う」は本当だろうか。先述の「人がしなくても良いことを代替する」という点について検証してみよう。
 
最初に着目したのは、厚生労働省による2019年9月分の「職業別一般職業紹介状況[実数](常用(含パート))」である。このうち「職業別の有効求人倍率」の項目をランキングで表した場合の上位5種を見てみると、まず、「建設躯体工事の職業」が11.20で最も高く、「保安の職業」8.02、「建築・土木・測量技術者」6.10、「土木の職業」5.62、「介護サービスの職業」4.46という結果になった。建設・土木業の職人や技術者などは専門性が高く、体力を要する職業のため、少子高齢化の影響を最も受けやすいと考えられる。ただし、その専門性の高さゆえ、すぐさまAIに代替される職業とは言えないだろう。
 
では、上記に挙げた、奪われやすいとされる他の職業はどうか。飲食店などの「接客・給仕の職業」は3.77、タクシーなどの「自動車運転の職業」は3.10と、いずれも高い数値となっている。また、「清掃の職業」も2.26と、全職業を合わせた有効求人倍率が1.45であることを考えると高めだと言える。
 
続いて、総務省統計局による「日本の統計2019」内の「主要職種別平均年齢(平成29年度)」のデータを見てみよう。この中では、「タクシー運転者」が59.4歳と最も高く、「警備員」51.5歳、「営業用バス運転者」49.9歳、「建設機械運転工」47.9歳、「営業用大型貨物自動車運転者」47.8歳、「自家用貨物自動車運転者」47.5歳となっている。
 
以上の結果から、一般的に“AIに奪われやすい”とされている職業ほど人手不足であり、特に若い世代の就労が少ないことがわかった。
 
 

使い方次第で良くも悪くもなる

 
仮に、上記の職業が今すぐAIに代替されるとすれば、失業者であふれてしまうだろう。ただ、それはあくまでも現時点での話だ。もしこのまま少子高齢化が進んだら、AIに仕事が奪われる以前に、そもそも当該の仕事をする人がいなくなってしまう可能性もある。
 
そこで、inaho社とヘッドウォータース社が示したように、人がしなくても良い仕事をAIがすることで、その分の人的リソースを別の業種に割ける。例えば、人手不足で、かつ専門性の高い建設業や農業などに、人材を集中させられるわけだ。つまり、AIによって人の仕事が奪われるというよりも、AIが代わりに仕事をしてくれると考える向きがあることがわかった。
 
もちろん、AIがより高度になれば、ほかの職業も影響を受ける可能性は十分にある。しかし、AIはあくまで“道具”に過ぎない。どんな道具でも、それ自体に良し悪しがあるのではなく、使い方次第で良くも悪くもなるのである。「仕事を奪われる」と悲観せず、AIをいかにうまく利用していくかを考えるのが、これからの仕事にとって重要ではないだろうか。
 
 
■inaho株式会社
https://inaho.co
 
■株式会社ヘッドウォータース
https://www.headwaters.co.jp
 
 
良いも悪いも活用次第? AIで“変える”日本の仕事 vol.1
AIが人間の業務を代替する日
(2019.11.27)

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