B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

太陽光発電はどうなった?
~「終わコン」ではないいくつかの理由~

 

ダムののり面、餅工場や漁港の屋根にも

 
 こういった予想を受け、日本でも堅実に取り組む企業や自治体の太陽光発電熱は、実は冷めていない。先駆けともいえるソフトバンク社は国内8ヶ所のメガソーラーを稼働させており、さらに7ヶ所の施設を建設中だ。自治体では兵庫県の展開が興味深い。県内10ヶ所に11の発電所を建設する計画を2013年4月に発表しているが、うち3ヶ所はダムののり面を利用したユニークな施設である。ダムののり面は、他に利用価値がない「遊休斜面」であるうえ、傾斜角度が太陽光パネルを設置するのに適しているという。
 
 民間では「遊休平面」を活用する同様の取り組みが広がっている。オリックスは今年5月、佐賀県の漁協から、組合が所有する施設30ヶ所の屋根を借り受け、メガソーラー施設を作り上げる。
 
 企業においては、自社施設を活用する動きにも注目したい。「サトウの切り餅」で有名な佐藤食品工業では、2013年に同社新潟工場と佐賀工場の屋根に太陽光発電パネルを設置した。売電により得られる年間4,500万円の収入は、電気料金値上げによるコストアップを賄う資金に充てる予定だという。同じく食品メーカーのカゴメは、閉鎖した工場や配送センターの跡地に太陽光発電設備を次々に設置。今年2月には、3ヶ所目となる久留米発電所を稼働した。
 スケールメリットを活かしたり、「遊休斜面・平面」を活用したり、といった一工夫をすることで太陽光発電をより効率的に利用する動きが、全国的に広がっているのだ。 
 
 

農業をソーラーシェアリングが救う?

 
 自治体や企業だけではない。農家からも太陽光発電事業に参入する例が出始めている。農地に太陽光発電パネルを設置して、売電収入を得るというのだ。パネルで太陽光をさえぎってしまっては、肝心の作物ができなくなるように思えるが、実はそうではない。農作物には光飽和点という「必要とする日射の限界」があり、これ以上の光を浴びても光合成の効果は上がらない。光飽和点に合わせて、間隔や角度を調整して設置すれば、太陽光発電パネルは多くの農作物と農地をシェアして共存することができるのだ。
 
 この事業形態は「ソーラーシェアリング」と呼ばれており、大きな注目を集めつつある。もし普及すれば、農地における単位面積あたりの収入が、飛躍的に増大することになる。TPPにより日本の農家は安い外国産農産物の攻勢にさらされそうだが、単位面積あたりの収入を太陽光発電で補填することができれば、米国産野菜など恐れるに足らず、といえそうだ。
 
 

コンパクトシティを太陽光発電で動かす

 
 高性能化し、単価の安くなった太陽光パネルは、他にも様々な可能性を含んでいる。その一つが、国土交通省が進める「地方都市のコンパクトシティ化」への適用だ。同構想は過疎化が進む地方で、生活に必要な施設や住居を市役所近辺などのエリアにコンパクトに集め直すことで、移動が困難な高齢者にとっても住みやすく利便性の高い街を構築する、というものだ。
 
 公共施設の屋根や商業施設、集合住宅の屋根など、街にもまったく活用されていない「遊休平面」が非常に多く残されている。太陽光発電パネルを設置し、その電力を単にエリアで消費するだけでなく、たとえばコンパクト化された地域内を結ぶ足として運用される小型電動自動車(スマートモビリティ)の動力として使えば、エコノミーかつエコロジーな未来都市が、地方から実現されていくことになる。
 
 「太陽光発電ならなんでも儲かる」という時代は一瞬で終わった。ただ、それは新たな太陽光発電時代の幕開け、と考えるのが正しい。第二幕では、より進化した太陽光発電が主人公となり、地に足のついたブームを盛り上げつつある。日はまた昇る。値上げの春、私たちはそのことを再度確認したうえで、電気とどう関わりながらビジネスを展開していくか、検討すべきだろう。
 
 
(ライター 谷垣吉彦)
 
 
 
 

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事