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◆NISAの口座開設が今月スタート

 
 来年2014年1月から、「少額投資非課税制度」、愛称 「NISA(ニーサ)」 がスタートする。すでに今年7月ごろから関連の書籍・ムックが出版され始め、その数は月を追うごとに増えている。銀行や証券会社は各社ともホームページにNISAの特集ページを設け、テレビや雑誌、ネットでもCMを盛んに配信するなど、利用者獲得に熱を入れている。
 そして今月10月、いよいよNISA用非課税口座開設手続きの受付が開始された。NISAでは 「毎年100万円まで」 の非課税投資枠を設定し、その範囲内で株式や投資信託(公社債投資信託を除く)を購入すると、値上がり益や配当金(分配金)が非課税となる。2023年までの10年間、毎年新たに100万円の非課税枠が追加される予定だ。
 
 NISAは、「Nippon」 の頭文字Nを 「ISA」 にプラスしたところからもわかる通り、イギリスで始まった 「個人貯蓄口座(Individual Savings Account、略してISA)」 の日本版である。かつてイギリスでは経済の停滞や国民の勤労意欲の低下などによる 「イギリス病」 が深刻だった。そこでサッチャー元首相が国有企業の民営化や社会保障制度の改革などを進めた結果、国有企業の株式会社化に伴い発行された大量の株式の受け皿が必要となった。また、社会保障制度で守られている意識が強かった国民に自助努力による資産形成を促すため、「個人持株制度(1987年)」「非課税特別少額貯蓄口座(1991年)」など複数の制度が設けられた。そして1999年、乱立していた制度が整理統合され誕生したのが、本家イギリスのISAだった。
 
 

◆政府がNISA導入を進める理由

 
 日本でNISAが導入される背景には、「上場株式等の配当・譲渡所得等に係る10 % 軽減税率」が今年2013年12月末に終了することがある。制度終了に伴い株式が多数売却されると、株価暴落や市場混乱が起こる。NISAにはそのような事態を防ぐセキュリティ上の目的もある。
 また、政府広報には
 
(1) 将来への備えとなる資産づくりの促進 (家計の安定的な資産形成の支援)
(2) 経済成長のために家計の金融資産を有効活用 (家計からの成長資金の供給拡大)
 
というNISAへの二つの期待が挙げられている。日本は超高齢社会となり、現在の若年層が老後を迎えたとき、十分な年金を支給できるかというと不安もある。そのため、若年層が投資への意欲を持ちやすい環境を作り、中長期的視野で年金以外の資産を形成していくことを後押しするのがこの制度の狙いだ。
 
 

◆もう一つの理由――10年越しのキャンペーン

 
 さらに言えば、そもそも政府には、小泉政権時代に始まった 「貯蓄から投資へ」 という動きを強めたい考えがある。
 2001年4月に誕生した小泉政権にとって、バブル経済崩壊による景気低迷からの脱却が急務だった。このため小泉政権は、企業の資金調達について、銀行が預金者から集めた金を貸りる 「間接金融」 から、人々に市場で株式を購入してもらう形で必要な資金を調達する 「直接金融」 への移行を図ろうとした。具体的には、2002年のペイオフ解禁によって 「お金は銀行に預けておけば安心」 という日本人の考えを改めさせ、2003年には証券投資優遇税制を開始して、預貯金利息の税率20%に対し証券投資の利益に対する税率は10%に設定して、国民の関心を投資に向かわせようとした。また、2004年には証券仲介業制度をスタートさせ、証券会社以外の金融機関でも証券売買ができるようになった。
 
 これらの中で、証券投資優遇税制は、延長や修正を繰り返しながら現在に至るまで続けられてきたが、それも2013年度末で終了する。代わって始まるのがNISAだ。政府にとってNISAは、日本国民の資産形成意識を変えさせる10年越しのキャンペーンの 「詰め手」 なのだ。
 
 
 
 

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