ジャーナリスト 古俣愼吾
企業が取り組むべき「BCP(事業継続計画)」とは
シリーズ第1回 BCPとは何か、なぜBCPを導入する必要があるのか
改めてBCPとは何か、いまなぜBCPが必要なのか
BCPとは、リスクで事業が停止しないように対策を立て、停止した場合にいち早く復旧させるためのマネジメントシステムである。事業継続は単なるリスク管理ではなく、企業の社会的な責任(CSR)であり、競争で優位に立つための重要な要素である。いま、企業経営者にとってBCPへの投資は避けて通れない課題となっている。
BCPへの関心が高まる背景には次のような要素がある。
- 企業を襲う事業中断のリスク要因が増加している
地震・台風・水害など毎年起こる自然災害。さらに火災・爆発などの事故災害や、経営者や従業員による不祥事など。 - ビジネスのITへの依存が高まり、ITシステム障害による影響が増大している
- サプライチェーンでは、ビジネスの取引要件としてBCP策定を求められる
上場企業の連結子会社、サプライチェーンの一員、海外と取引のある会社は、事業中断でビジネスパートナーに重大な影響を与える可能性があり、BCPの策定がビジネス参加の条件になっている。欧米ではすべてのリスクへの警戒から、企業がBCPを構築することがビジネスパートナーとなるための条件となっている。 - BCP策定を社会的責任(CSR)ととらえる企業が増加している
リスクの備えがあることが企業の信頼を得るための不可欠の要素となっており、BCP策定を社会的責任ととらえる企業が増えている - 法制化の流れ・・・・政府によるガイドラインの策定
政府は、2005年から関係省庁が事業継続に関するガイドラインを公表し、あらゆる事業分野に対してBCM導入を働きかけている。BCPの策定は企業経営に必要不可欠になる。 - 国際標準化の流れ
BCPには国際標準規格(ISO)が存在しなかったが、2009年に英国規格協会(BSI)が発行したBCMに関する規格「BS25999-1」の認定企業が登場した。国際標準化されることにより、BCP策定がビジネス上の重要な取引条件になり、企業の格付けにも影響するようになる。日本国内でも認定企業が増えている。 - 新型インフルエンザ・パンデミックへの関心が高まる
いつ発生してもおかしくないと言われていた新型インフルエンザが、ついに昨年4月に発生。これまでBCPに関心を持ってこなかった企業も事業継続を脅かすリスクと認識し、BCPへの関心が高まることにもつながった。いまは小康状態にあるが、ウィルスの突然変異や、本来の強毒性である「トリインフルエンザ」が発生する可能性も考えられる。
これほど企業の背中を後押しする要素がそろっていても、実は、企業へのBCPの導入はなかなか進まない。2008年1月に内閣府が調査した 「企業の事業継続及び防災の取り組みに関する実態調査」(4979社) によると、大企業の68%が何らかの防災計画を策定していたのに対し、中堅企業は46%と半分以下にとどまっている。今後、策定の予定があるとしている企業は19%、「予定なし」は31%にも上っていた。
一方、BCPの策定状況については、大企業の19%が策定済みだった。策定中16%、策定の予定がある29%を合わせ、全体の64%がBCPに高い関心を示していた。ところが中堅企業は、策定済みは12%。策定中3%、策定予定13%を加えても、BCPを積極的に考えているのは全体の3割程度。策定の予定なしが9%、そして驚くなかれ、「BCPを知らない」が61%にも及んでいるのだ。
事業継続で破綻を来してしまったら企業の存続もおぼつかない。BCPはこれからの時代を生き残るための重要な戦略的なテーマと認識し、すぐにでも取り組むべきである。なのに、なぜ、BCPの導入が進まないのだろうか。次回はその背景や原因を探っていこう。
プロフィール
古俣愼吾 Shingo Komata
ジャーナリスト
経 歴
1945年、中国生まれ。新潟市出身。中央大学法学部卒業。広告代理店勤務の後フリーライターに転身。週刊誌、月刊誌等で事件、エンターテインメントものを取材・執筆。2000年頃からビジネス誌、IT関連雑誌等でビジネス関連、IT関連の記事を執筆。2006年から企業の事業継続計画(BCP)のテーマに取り組んでいる。



