どうする!? 売掛未回収!第5回
建設や建築業の下請や孫請業者に至っては、本当にお気の毒としか言いようがない現状です。現場で一生懸命汗を流して、時には徹夜作業までして工期を守り納品したにも関わらず、元請から「施主からクレームが付き代金を大幅に減額されたので大赤字だ。ついては、この現場に関して料金は支払えない。必ず次の現場で穴埋めするからそれまで待ってくれ」などと言われ、延々と1年以上も、ほとんど請求することなく待っているところもあります。
下請や孫請の立場上、今後の仕事がなくなるかもしれないとの不安から、強い請求や督促ができず、しかも次の現場が約束どおり回ってくることはなく、泣き寝入りしているケースが多くあります。
しかも、この業界は約束手形での支払いが多い。下請や孫請業者が工事を完了して、いざ代金の支払を元請から受ける場合、その5割以上が約束手形での支払いです。受け取った約束手形は、なかなか現金に換金することが難しく、しかも支払年月日が振り出し年月日の6ケ月先であったり、それ以上先になっているケースも多くあります。
このような場合でも、「もらえないよりマシ」と諦めることが多いようですが、下請や孫請業者が仕事をするのに使った材料費や職人の人件費の支払いは、待ってはくれません。結局は手出しで支払うことになり、借金をして支払うことさえ、しばしばあるようです。
最近では少なくなったと思いますが、昔は約束手形の決済で走り回る人がずいぶん多くいました。背景には、当時、企業での手形不渡りはイコール倒産と認識され、何よりも恐れられていたことがあります。
しかし、厳密には、手形の不渡りとは6ヶ月以内に二度出すことにより取引金融機関からの借り入れができなくなるもので、その他全ての取引が停止してしまうものではありません。手形の決済は忘れた頃に来る災害のようなもので、なかなか前もって準備ができないので敬遠する経営者が多く、現在では決済方法としては減少しています。
日本では風土的・習慣的に、相手を疑うことを嫌い、簡単に信用する傾向が強かったため、あまり催促もせず相手の誠意や意思を尊重してじっと待つことが商売人として器の大きさを示すかのように言われてきました。しかし、現在の経済でそんなことを言っていたら、すぐに倒産してしまうかも知れません。
弊社としては、「取引先全てを頭から疑い、色眼鏡で見て調査しないと、後で痛い目にあいますよ」と言いたいのではありません。ただ、基本的に、企業が取引を開始する際に9割以上の取引先は管理回収の対象にならない、今後お得意様になっていく取引先だとして、残り1割未満の取引先との商取引は未回収等のトラブルになる可能性があり、まれには最初から代金を払う意思がなく、引っ掛けてやろうと詐欺行為を働く者もいるから、その見極めが大切だということです。
例えば「いきなりFAX・メールで注文書が届く」とか、知人からの紹介で取引を申し込んでくる者、やたらと現金取引を口にする者には、特に『与信』を徹底していただきたいと思います。そのうえで、現金で取引を完済してしまうことが望ましいでしょう。
また、既存取引先であっても、短期間で取引額が倍々に増加したり、これまでの内容と異なる取引を申し込んでくる取引先は要注意です。少額ですぐに決済できる取引で信用を付け、金額を膨らましておいて最後に倒す手口の詐欺が多いという現実があるからです。
最後に、弊社は事業柄、最初から相手を信じきってしまうわけにはいきませんが、一般企業が常に管理や疑いの目で取引先や新規顧客を見ていたら、全く取引できません。今回書いたように、悪さを働く者はごく一部です。過度に神経質になる必要はありませんが、“ジョーカーを引かないように”、日頃から注意だけは怠りたくないものです。
執筆者プロフィール
玉川卓生 Tamagawa Takuo
アシストワン 有限会社 代表取締役
経 歴
昭和56年、大手消費者金融入社。入社後6ヶ月で支店長となり、5支店を移動しながら新規店立上げに奔走した。昭和60年、中堅消費者金融入社。不良債権回収の責任者に就任。平成2年、事業者向金融入社。取締役専務に就任。 平成16年、有限会社アシストワンを設立。 23年間金融業に携わり取得した、回収のノウハウ及び交渉術を活かし、企業・個人をアシストすることを事業目的とする。
事業内容
・ 売掛金等管理回収サポート業務
・ 調査業務(債権の調査・所在調査)
・ 利息再計算(利息制限法)