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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

探求心が育てた有機野菜 都市農業の生き方伝える
炭育ち 池上農園 代表 池上義貴

 
プロフィール 兵庫県出身。JA共済を経て、祖父の代から続く池上農園の3代目に就任する。父親の代でのトマトやこまつなをはじめとした軟弱野菜の大量栽培から、次第にオーガニック農業へシフトしていった。独自の土づくりと池上式新スチーム農法により、スイスチャード、紫水菜、ビーツなど、豊富な種類の葉物野菜を栽培。夫婦二人三脚で都市農業ならではの苦労と可能性に正面からぶつかりながら前進を続けている。【ホームページ
 
 
 
兵庫県神戸市西区の住宅街の中にある、炭育ち 池上農園は、付近では知らない人はいないというオーガニック農家だ。“炭育ち”という名の通り、炭などの有機物を埋設する土づくりや持続可能な農業の理想にかなう堆肥活用など、試行錯誤を重ねて編み出した方法で、有名シェフもうなる野菜を生み出し続けている。都市農業をさらに根付かせようと地域との交流にも熱心な池上義貴代表に話を聞いた。
 
 
 

住宅街の真ん中で3代目が引き継ぐ専業農家

 
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インタビュアー 亀山つとむ(野球解説者)
亀山 本日は炭育ち 池上農園さんの池上代表にお話をうかがうと聞いたものの、正直、お邪魔してみるまでは神戸市西区のこんな都会の真ん中――しかも住宅街のど真ん中に、野菜をつくっている場所なんてあるのかなと思っていたんですよ。実際に来てみたら、広大な土地にいくつもハウスが並んでいて、中をのぞくと一面の緑! びっくりしました。
 
池上 ここはもともと祖父が始めた農園で、当初はこの場所は自宅だけだったと聞いています。商売のセンスがあったらしく、遠くまで自分で足を運んで野菜を売りながら、少しずつ農地を広げていったそうです。農地を後継したわけではなく、自分で開拓したというのが祖父の自慢でしたね。
 
亀山 そうでしたか。2代目であるお父様の時代を考えると、この周辺の土地も開発が盛んだったのでは?
 
池上 おっしゃる通りで、周りは開発が進む中でも、「うちは農業で食べていくんだ」と農園を守っていました。気付けば地域に1200戸あるうち、専業農家はこの池上農園一軒だけになっていて、時代がずいぶん変わりましたね。