
インタビュアー 城彰二(サッカー元日本代表)
豊田 ええ。10代の頃は、人生にレールを敷かれているようで、跡を継ぐ気はなかったんですけどね(笑)。創業者の父に「会社は継がない」と宣言して大学の英文科に入学しました。でも在学中は、「自分が継がなかったら、父の仕事はどうなるんだろうか。家業に入るべきではないか」という葛藤がありました。結果、家業を継ぐことにして卒業と同時に修業を始めたんです。
城 修業時代は職人さんとの関係で悩むこともあったでしょうね。
豊田 中卒で修業をしてきた職人も多い中、遠回りをしてきたことにコンプレックスはありましたし、回り道をした自覚もありました。でもその分、違う世界を見て、様々な経験ができたので、寄り道をしたことは今になって振り返ると良かったと思います。
城 修業に没頭する前に、幅広い経験をしたことを糧にしてこの道に入られたわけだ。では、具体的に事業内容についてお聞きします。手がける彫刻は新築が多いんですか。
豊田 新築もありますし、古い社寺の彫刻を修復することもあります。新築の場合、近年は防火法などの関係で、コンクリートや繊維強化プラスチックなどの素材で製作することも多くなりましたね。
城 なるほど、今や社寺仏閣も木造ばかりではないですからね。新築を手がける場合はもちろんのこと、修復するときは貴重な彫刻に触るのだから緊張感があるだろうなぁ。