B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

弦楽器の音質調整専門店
弾き手ファーストを追求

 

楽器を弾く観点からの従来にないアプローチ

 
glay-s1top.jpg
濱中 音質調整というのは文字通り楽器の音色を整える作業だと想像できます。技術的にすごく難しいのでしょうか?
 
宝木 それなりの積み重ねがないと難しいと思います。まず楽器の製作も勉強するなどして、音が鳴るしくみを根本から理解しておく必要があります。
 
濱中 まさに職人技ですね。ピアノの調律師という職業は耳にするものの、私は音楽の世界に疎いので、ヴァイオリンの調整をするプロフェッショナルがいることは存じ上げませんでした。
 
宝木 弦楽器職人の仕事にはいろいろな種類があり、弦楽器や弓製作のほか、それらの修理が専門の方もいます。ですが、実は調整の専門の人はどうやらいないようなんです。私もそのことをずっと知らなくて(笑)。
 
濱中 ご自身も珍しい存在だという自覚がなかったのですね! お父様のもとで勉強し、それを土台に脇目も振らずに仕事をされてきたからでしょうか。
 
宝木 そうかもしれません。父は私が29歳のときに突然亡くなってしまい、それまで父のもとで学んでいた私は、いきなり崖っぷちに立たされました。生活が一変し、自分の仕事と向き合う中で、あるとき、東京の演奏家の方に「宝木さんみたいに調整に特化している人は東京にもいないから、調整専門と名乗ってみたらいいじゃないですか」と言われたんです。そのときに、調整が世間では珍しい存在だと知りました。その方のおかげもあり、世間の演奏家の皆さんが求めることと、自分のやるべきことがやっと合致してきたように思いましたね。
 
濱中 目指すべき道が決まると、考えもスッキリされたでしょうね。では、調整を行うときにどのようなことを意識されているのかも教えてください。
 
glay-s1top.jpg
宝木 常に大事にしているのは、“楽器を弾く”という観点からアプローチの仕方を考えることです。一般には楽器製作の職人さんやメンテナンスの工房の職人さんが調整の役割も担っています。これは日本に限らず、ヨーロッパの業界も基本的に同じで、そういった技術者の方々はご自身では楽器を弾かない方がどうやら多いらしいです。製作や修理に携わるみなさんのことはもちろん尊敬していますし、技術も信頼していますが、それらの観点から見て完璧な状態の楽器でも、奏者の立場で見るとそうとも言えない場合が多々あると思っています。
 
濱中 なるほど。宝木さんはご自身もヴァイオリン奏者だからこそ、ほかとは違う調整が可能になるのですね。
 
宝木 そう考えています。楽器そのものと対話しつつ、その楽器のオーナーである奏者の方ともコミュニケーションを重ね、最終的に楽器の持つポテンシャルと奏者の好みや方向性がマッチするような調整をしていきます。言ってみれば、弾き手ファーストであると言えます。