
インタビュアー 濱中治(野球解説者)
藤井 確かに、幼稚園などの建物は法律的な制約も多く、業界内では難しいとされています。ただ、私の場合はそのような建物を専門的に取り扱う設計事務所で、それが当たり前の環境で経験を積んできまして。前職の設計事務所と合わせて、103件ほどの保育園や幼稚園の園舎の設計を手がけました。
濱中 103件とは相当な数ですね! お聞きしたところでは「こどもの居場所を創る」をテーマに設計を行っておられるとか。
藤井 はい。その空間を活かしていかに子どもの成長に結びつけられるかを重視して設計しています。というのも、子どもの人間性や感受性といったものは、環境が大きく影響すると考えているんですよ。中でも、私が最も得意としているものがガラスと階段のデザインでして。例えば、階段そのものを子どもたちの遊び場として活用できるようにしています。
濱中 具体的にはどのような設計をしているんでしょう?
藤井 私はよく階段の段と段の間に、隙間を持たせるように設計しています。すると、子どもたちはおもちゃを隙間に通して受け渡しをするなど、自分たちで工夫して遊びを見つけるんですよ。
濱中 確かに、私も小さい頃に家の階段の隙間に挟まって遊んでいたことがありましたよ。
藤井 また、あえて余分なスペースをつくることによって、子どもたちが秘密基地のように活用することもあります。自由な発想で何かをつくり上げることで、感受性も育っていくのではと思っていますね。

藤井 子どもたちは自分自身で学んでいくものだと思います。というのも、私はこの仕事を通じて知り合った、とある保育園の園長先生のお言葉に感銘をうけまして。それは、「子どもには何かを頭ごなしに教えようとしても伝わらない。自分の体験や体感したものを覚えていくものだから、その環境をどのように与えられるかが大人の役割」というものだったんです。これによって、私の設計に対する考え方も大きく変わりました。