
インタビュアー 鶴久政治(ミュージシャン)
甲斐 それは嬉しいな。私が関西に出てきたのは20代後半でした。師匠が私を実の子のように可愛がってくれ、師匠に惚れたから今の仕事に惚れた、と言っても過言ではありません。
鶴久 職人の修業は厳しかったでしょうね。
甲斐 ええ。でも、一歩間違えば命に関わる事故が起こるのが建築現場。安全ルールの遵守は徹底せざるを得ません。それを身につける修業が厳しいのは当然です。
鶴久 プライドを感じるなぁ。会社を設立なさったのはいつですか。
甲斐 2009年に引退した師匠からお客様やスタッフを引き継ぎ、法人化したのは2015年9月です。
鶴久 ところで軽天工事とは、具体的にどんなことをするんでしょう。
甲斐 軽天は「軽量鉄骨天井下地」の略です。内装工事の一種で、軽量鉄骨を使って骨組みをつくり、壁や天井の下地となるボードを貼る。クロスを貼る前の下地をつくる仕事ですね。
鶴久 すると、御社の仕事の成果を私たちは見ることができない・・・。
甲斐 見えない場所だからこそ、手を抜かないのがポリシーです。それができるかどうかが、一流の職人の別れ目。私は師匠からそう教わりました。ただ、昔は「師匠はなぜ手間のかかる工程を踏むんだろう」と思うこともありましたね。でも今の私は、子が親に似るように、師匠と同じ手順を踏みます。のびのび下積みをやらせてもらったおかげか、いつの間にか同じスタイルが身についていました。手間がかかろうが努力を惜しまず、妥協しない姿勢が次の仕事につながるんです。
鶴久 職人としての美学を感じるお言葉です。そのお考えですと御社には、優秀な人材がたくさんいそうですね。

鶴久 この仕事の魅力とは、どこにあるのでしょう。
甲斐 何もないところから空間をイメージしてつくり上げ、作業が完了したときの嬉しさは格別ですね。時間を惜しまず妥協せず、他人に見えなくても自分が納得いく仕事をする。この、師匠から受け継いだ姿勢を次世代に伝えていきます。
「仕事を楽しむ」とは‥
仕事には手間隙かけて手を抜かない。責任を持って施行することがプライドであり、そこが仕事の楽しさです。
(甲斐正朋)