行き場を失った職人のため法人化に踏み切る

インタビュアー 矢部美穂(タレント)
有働 それが違うんですよ。私は熊本県で生まれ育ち、学生時代は音楽にのめり込みラッパーとして、東京のイベントにもたびたび出演していたんです。やがて、面倒見がよくてかっこいい先輩には建築職人が多いと気付き、あこがれの気持ちから自分も職人の道へ入りました。大工からスタートしてさまざまな職業を経験し、20代前半で解体業と出合い腕を磨いてきましてね。ただ、これまでの人生で一度も正社員になったことがないんですよ。
矢部 これは驚きました。組織の中ではなくずっと独立独歩で頑張ってきたわけですか。
有働 ええ、もともと人に使われるのがあまり好きではなかったので、アルバイトから始めて早いうちに一人親方として独立し、熊本や福岡を中心に汗を流していました。そのうちに東京の職人から「関東に来れば、もっと仕事がたくさんある」と誘われて、2017年から川崎市を拠点に移したんです。
矢部 大勢の方とのご縁が、今の有働CEOを育んできたわけですね。
有働 矢部さんのおっしゃるとおりです。おかげさまで現場で出会う職人さんや元請けさんとのつながりで、仕事は増え続けていきました。現在も東京・銀座のハイブランドショップなど大規模な現場を施工しているところです。
矢部 それはすごい! 仕事が途切れないのは、まさに周囲との関係を大切になさっているからこそでしょう。そうして事業が順調に進んだことで、いよいよ創業に踏み切ったのでしょうか。
有働 私は組織が苦手なので、当初は会社を立ち上げるつもりはなかったんです。ただ、倒産したりトラブルを起こしたりする同業者がいて、私の周りの若い職人が何人も行き場を失っていたんですよ。彼らの面倒を見ているうちに少しずつスタッフが増え、ついに2022年8月、弊社を設立することになりました。社員を擁する弊社の目的は、福利厚生を整えたり可能な限りいい給料を払ったりして、職人が安心して働ける環境を用意してあげることなんです。