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ノウハウ 小山昇の「再定義からはじめる仕事術」  第5回 スター、セールスマンの生産性、総務、組織 小山昇の「再定義からはじめる仕事術」 株式会社武蔵野 代表取締役社長

ノウハウ

第5回 スター、セールスマンの生産性、総務、組織

 
 
皆さんこんにちは。小山昇です。武蔵野の経営用語集『増補改訂版 仕事ができる人の心得』からお送りしているこのコラム、もう浸透したと思います。しかし皆さん、読んでいるだけではダメですよ。社内で使う言葉、御社でも見直してみましたか? 意識改革は言葉の再定義から。ぜひ「うちもやってみよう」となることを願いつつ、【さ行】の続きを見ていきます。
 
 
*スター(通番0766)
人にできないことをやる。人にできることをやる人はリーダーになる。
 
解説: 少し付け加えると、スターというのは1人で仕事ができる人のことです。叩き上げの社長はたいていの業務は自分でできます。技術系の会社は特にそうです。往々にして社員より能力も高い。仕事で困っている社員を「なんでそんなことができないんだ!」と歯がゆく感じる社長は多いでしょう。そんなときに「貸してみろ! こうやるんだ!」とやってみせれば、困っていた社員から感謝されるわ、「さすが社長!」とスターになれるわで、いいことだらけ・・・ではありませんよ。
 
社長はスターになってはいけません。目指してもいけません。スターには社員がなるべきです。ここのところを勘違いして、自分より優秀な社員を嫌がる傾向のある社長がいかに多いか。
 
社長はリーダーに徹していればよいのです。リーダーとは、自分が経験したことを部下にわからせてあげられる人のこと。では、リーダーの条件は何か? 簡単です。私が武蔵野のリーダーを務められるのは、誰よりもたくさん失敗をして経験値を積んだから。言い換えれば、誰よりも失敗を恐れず果敢に挑戦を続けた者が最後にリーダーになるのです。
 
ちなみに、どの社員が管理職、つまりリーダー向きか、スター向きかなんてことは、やらせてみないとわかりません。「まさかあいつが!」という展開は往々にして生じます。男と女が付き合ってみるまでわからないのと同じです(笑)。
 
 
 
*セールスマンの生産性(通番0816)
①他社より低めに見積もる。②生産性を上げすぎてはいけない。➂上げすぎると手が回りきらないので市場戦略に負ける。④必要なのは人数増加です。
 
解説: おかげさまで、我が武蔵野のダスキン事業部は創業から53年間、前年より売り上げが下がったことはただの一度もありません。これは生産性が突出して高い営業マンをそろえようとしてこなかったからだと私は思っています。
 
1人で50件成約してくるモンスター営業マンはそうそういないが、10件取れる人間はわんさといる。それが営業の世界です。であれば、前者を2人見つけるより、20件取れる営業マンを5人確保するほうが簡単です。あまり生産性を上げ過ぎると、前者が1人欠けたらたちまち困りますしね。
 
それに、モンスター営業マンは必ずしも会社のためになりません。彼がもっと給料を上げてくれと言ってきた場合、成績が突出していれば社長は上げざるを得ない。すると、彼自身は無意識であっても、「俺が強く出れば社長は従うんだぞ」と言わんばかりの雰囲気を周囲に感じさせてしまい、他の営業マンが「俺も、俺も!」と増長しかねない。お客様のご満足を追求するのが営業の仕事なのに、これでは本末転倒です。
 
だから武蔵野はあまりに優秀すぎる人材は採用試験の段階で落とします。驚きですか? でも本当です。トータルで考えるとそのほうが良いのです。
 
 
 
*総務(通番0844)
全社員が最も仕事に打ち込める態勢をつくる部門です。人を管理・監督する部門ではなく、全社員とその家族が日々明るく生活しているか、病気はしていないか、絶えず気を配り、助け合い、幸せに仕事ができる場をつくるのが仕事です。
 
解説: 世間一般の総務のイメージは「日陰の部署」「地味でパッとしない社員が来る吹き溜まりの部署」といったものかもしれません。『ショムニ』なんていうテレビドラマもありましたね。
 
しかし、武蔵野は違います。武蔵野の総務課長はみんなエリートです。具体的に言うと、社内ルールで、前年度一番優秀だったヒラ社員を総務課長に任命することになっているのです。そこでサボればヒラ社員に逆戻りですが、頑張って評価されれば人より早く出世できる仕組みです。
 
そうする理由は、若い社員が夢と希望を持てるから。頑張れば1年で課長になれる売上高55億円の会社なんて、武蔵野の他にありませんよ。小嶺という社員は入社9ヶ月で総務課長に配属されて、今はクリーンサービス事業部の本部長にまでなりました。武蔵野で総務に配属されることは出世の近道です。総務というのはそれぐらい大事な部門なのです。だって、上に戻って「総務」の定義をもう一度よく読んでみてください。大事じゃない仕事がどこにありますか。
 
 
 
*組織(通番0846)
①変化を好まない。お客様のために活動することよりも、組織の存続のほうが優先されやすい。②お客様から成果を上げるための内部態勢のことです。役割分担として必要なものであり、従業員のためのものではないから、その目的を果たすために従業員の間に混乱が起きるのは当たり前です。お客様の要求に合わせてコロコロ変えることを誇りとする。➂まず商品ありき、組織はあと。
 
解説: 昨年度、武蔵野は過去最高売上で賞与が120%増しになりました。こういうとき、社長は何をするべきか。「勝って兜の緒を締めよ」と号令をかけますか? 社員もそれで気を引き締めて、兜の緒を締め直す? そんな都合のいい話はありません。
 
では、代わりに何をするか。お勧めなのは組織替えです。武蔵野は過去最高売上を受けて、社内の全部署で人員を半分入れ替えました。評価面談で賞与額を聞いて大喜びしている社員に異動を言い渡したときの反応のおもしろかったこと。「さっき自分がこれからも頑張りますって言ったのは、今の部署で頑張るって意味なんすけど・・・」とかなんとかブツブツ言っていましたが、なに、気のせいでしょう(笑)。
 
組織はお客様のためにある。だから混乱していいのです。それぐらいの刺激を与えなければ、兜の緒は締まりません。えっ!? 社員の皆さんは怖いでしょうねぇ?――何を言っているんですか。お客様のことが疎かになって業績が下がるほうがよっぽど怖いですよ。それで会社が立ちゆかなくなったら賞与どころの話ではなくなります。社長はそこまで考えて組織を動かしているのです。



小山昇の「再定義からはじめる仕事術」
第5回 スター、セールスマンの生産性、総務、組織




 

 執筆者プロフィール  

小山昇 Noboru Koyama

株式会社武蔵野 代表取締役社長

 経 歴  

1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業。1964年に日本サービスマーチャンダイザー(株)を設立し、ダスキンの都内加盟店第一号となる。1987年、(株)武蔵野に社名を変更。以来、元暴走族の社員を抱え「おちこぼれ会社」と揶揄されていた同社を優良企業に育て上げ、2000年には(財)日本生産性本部より「日本経営品質賞」を受賞した。他にもダスキン顧問(1990~1992年)、また全国の経営者でつくる「経営研究会」も主催し、ビジネスの世界におけるメッセンジャー的な役割を担う。現在は社長業と並行して日本経営品質賞受賞の軌跡や中小企業のIT戦略、経営計画書づくり、実践経営塾などをテーマに年間240回以上のセミナーで全国を回り、テレビを含め各メディアからも注目を集めている。

 オフィシャルホームページ 

   http://koyamanoboru.jp
 
 
(2016.7.6)

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